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あうん堂の本多さん!家にいながら脳内旅行できる本ありますか?

新型コロナウイルスの爆発的な拡大によって、不要不急の外出自粛が呼びかけられている今。自宅でゆっくりする時間が増えたのはいいけど「なにもすることがない…」と、悶々とした日々を送ってる人いませんか?

 

はい、僕です。

 

朝からソファでごろごろ。嫁と猫の冷たい視線を浴びつつ、スマホで麻雀とポーカー、たまにYoutube。自分でもわかっちゃいるんです。これではいけないってこと。

 

というわけで、読書をしようと思います。お金もかからないし。マイケル・ジャクソンも「旅行に行く余裕がなくても、本を読めば心の中で旅することができる」って言ってたっけ。本の世界だけでも、コロナのことは忘れさせてくれないかなぁ。

 

東山の閑静な住宅街にひっそり。

暮らしを豊かにする本をセレクト。

というわけで、やってきたのはBONNO編集部の駆け込み寺『あうん堂』。東山の伝統的な町家を改装したブックカフェで、本好きなら知らない人はいない人気店です。住職もとい店主の本多さんはこれまで〈中川ワニジャズブック〉や〈かなざわ案内地図帖〉など、いくつかの書籍も出版しています。セレクトするのは暮らしを豊かにする本。たくさんの書籍に囲まれて、美味しいコーヒーが飲めるのがうれしいですね。

 

ゆったりとした時間が流れる店内。

 

ノスタルジックな書庫。

 

店主の本多さん。

 

――本多さん急にすみません!家にいる時間が増えたので、こんな時期にもスカッとできる面白い本を探しにきました。脳内で旅ができるような本がいいかなぁ。

 

旅する本ですね。2冊ほどピックアップしてみるので、ちょっと待っててくださいね。

 

――ありがとうございます!ちなみに本多さんはまとまった時間があるとき、どんな本を読むんですか?

 

最近は〈HULU〉で歴史ドラマを見たあとに、そのドラマと関係した内容の本を読むことが多いですね。たとえば舞台がアイヌの話だったらアイヌ文化にまつわる小説だったり。僕自身はオスマン帝国を舞台にしたドラマ内でのロードス島のやり取りが面白かったので、十字軍物語を読みました。好きなものから入るという流れは、普段本を読まない人にとっても〈読書グセ〉を付けるきっかけになると思うんですよ。興味のあるテーマだと自然と読み進められますからね。

 

十字軍物語/塩野七生

 

――たしかにそうですよね。僕も放浪が好きだから、それ系の本は読んじゃうなぁ。風樹茂とか。

 

お待たせしました。旅する本、こちらでいかがでしょうか?

 

空白の5マイル/角幡唯介

 

本多さん

こちらはひとりの冒険家が、地図にも載っていないチベット奥地の秘境に挑むノンフィクション。伝説の地を求めて、命の危険を顧みずに冒険する作者の心情がリアルに綴られています。作者の角幡唯介さんはもともと朝日新聞の記者で、富山支社にも勤めていた北陸にもゆかりのある人。家にいながら自分の知らない場所を旅したり、探検できるのも読書の魅力ですよね。

 

てくてく青空登山/安西水丸

 

本多さん

こちらは一転してほんわか系。イラストレーターの安西水丸さんによる、山歩きのイラストエッセイ集です。低山登山の楽しみや山道で偶然出会った人たちの思い出など、日本各地の山や城跡の魅力がおだやかに綴られています。編集者の若菜晃子さんは小冊子〈mürren〉の発行人。僕自身、彼女のファンで3年前には金沢に招いてトークイベントを開いたこともありました。寝っ転びながらのんびり読みたい本ですね。

 

――ふたつともテイストは真逆だけど、家にこもっているときのストレス解消になりそう!そういえば本多さんは、本を読むときに必ずすることってあるんですか?僕はトイレで読むことが多いんですけど。

 

うーん。音楽を流すくらいですね。小さいボリュームでうっすらと。かけるCDは大体決まってるから、時間の目安にもなるんですよ。「今はこの曲だから何時くらいだな」みたいな感じでね。

 

中島みゆきが定番だそう。

 

――本多さん自身は新型コロナの感染拡大という大変な時期に、どんな本を読むといいと感じますか?

 

こういった危機的状況となって、自分が置かれてる現状を見直そうという人も多いと思うんです。なので仕事のことや、これからの自分の働き方を前向きに考えられるような本をおすすめしたいですね。

 

――お願いしてもいいですか?

 

はい(笑)。ちょっと待ってくださいね。

 

古くてあたらしい仕事/島田潤一郎

 

本多さん

作者の島田潤一郎さんは〈夏葉社〉という、ひとり出版社を未経験から立ち上げた努力の人。本作りから書店営業まで、たったひとりで全部やってしまう情熱家です。転職活動50社連続不採用というどん底から一念発起して、本当に自分が好きな出版の道を目指すといった過程は、これからの働き方を考えている人にとって大きなヒントになると思います。

 

ホテル総選挙/桂 望実

 

本多さん

こちらは業績の伸びない老舗ホテルを立て直すために、新社長が従業員総選挙を行うというエンタメ小説。配置転換によって能力を発揮させたり、若いホテルマンのやる気をいかに出させるかを焦点にした内容で、仕事に対する考え方や発想を変えるきっかけになると思います。読後感も気持ち良いのでおすすめですよ。

 

――なるほど。それじゃ今週は最初の2冊で現実逃避をして、あとの2冊で現実を見つめ直したいと思います!ちなみに本多さんのお仕事状況はどんな感じですか?

 

こんな時期でもあるので23日まで店舗はお休みすることにしたんです。その代わりといってはなんですが、新しいお店の準備もしてまして。少しずつ作業に取りかかっているところです。場所はお店のとなりのガレージで。本とコーヒー、レコードも少しだけ置こうかなと思ってます。

 

――一時休業は残念ですが、新店舗は楽しみですね。本多さん、ありがとうございました!

 

 

あうん堂
石川県金沢市東山3-11-8
TEL.076-251-7335
営業時間/10:30~19:00
定休日/火曜、水曜、木曜日
席数/テーブル8席
駐車場/2台

※こちらの情報は取材時点のものです。

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

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