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【名物誕生秘話】③|芸妓さんの一声で生まれた『自由軒』昔のカツ丼

古都金沢の歴史と文化が息づく〈ひがし茶屋街〉の道途に、100年以上にわたって市民に愛され続けている老舗洋食屋があります。

 

『自由軒』が誕生したのは1909年。日本全国に洋食屋が広まり始めた頃に、東山のこの場所で営業が始まりました。オムライスやタンシチューなど、先代が築き上げた洋食の味を受け継ぐのは3代目の川上廣喜さん。コロナ禍の影響で界隈のお店の多くが休業を余儀なくされる中、川上さんはテイクアウトのメニュー開発に力を注ぎ、緊急事態宣言が全国で解除された5月25日には、店舗での営業も再開しています。

 

茶屋街の中でひときわ異彩を放つモダンな建物。

 

創業111年の歴史をひしひしと感じる店内。

 

現在は3代目の川上さんがお店を仕切る。

芸妓さん御用達の裏メニュー

『自由軒』には、茶屋で働く芸妓さんのリクエストから生まれた〈昔のカツ丼〉というメニューがあります。シャキシャキのきゅうりとゆがいたキャベツ、その下から姿を見せるアツアツのヒレカツ。

 

むかカツの愛称で親しまれるこの一風変わったカツ丼は、素材も味付けも当時のまま変わらず、今もしっかりメニューに残されています。

 

昔のカツ丼 1,380円(税抜)。

 

当時は茶屋まで出前をすることも多く、芸者さん御用達の裏メニューとして人気を博していた〈昔のカツ丼〉。野菜たっぷりでそのままかき込みたくなりますが、じつは味付けという味付けはされていません。

 

川上さん

ウスターソースをかけてお召し上がりください。裏返した丼の蓋にソースを入れて、具材をつけて食べる方もいらっしゃいます。

 

こうした食べ方も「自分好みの味付けにしたい」という芸者さんのリクエストから始まったそうです。

 

 

〈昔のカツ丼〉には、もうひとつの秘密があります。それは豚肉ではなく牛肉を使っていること。このメニューが誕生したのは、カツといえばトンカツよりもビフカツが主流だった頃(トンカツが流行したのは1930年代と言われている)で、そのときの名残で現在も牛ヒレ肉を使っているそうです。

 

川上さん

肉の旨味がより濃厚なビフカツだからこそ、さっぱりとした野菜がよく合うんだと思います。とくに年配の方に親しんでもらっています。

 

 

実際に食べてみて思ったのは「ボリュームの割りにあっさり食べられるな」ということ。見た目にも気を遣わないといけない芸妓さんのアイデアで生まれたメニューだけあって、ヘルシーなのもうれしいところです。キャベツの甘味と牛肉の旨味の相性も良く、とても美味しく感じました。

 

 

ちなみにキャベツに多く含まれている食物繊維は油の吸収を抑える効果があるので、胃腸を保護や消化の助けにもなるそうです。

 

金沢の茶屋文化と老舗洋食屋が生んだ〈昔のカツ丼〉。夏バテ気味の体にも優しい、これからの季節にぴったりのメニューです。

 

 

自由軒
石川県金沢市東山1-6-6
TEL.076-252-1996
営業時間/11:30~14:30、17:00〜20:30
定休日/火曜、第3月曜日
席数/カウンター10席、座敷12席
駐車場/2台
※こちらの情報は取材時点のものです。

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

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