Kan Sanoの音楽的ライフ【観ずる日々】第14回：近況

この連載を始めて一年以上経っていることに驚く。よく続いてるなと思う。文章を書くことに昔から苦手意識がある。コラムを書き続けることで多少は克服できるかもしれない、次の段階に進めるかもしれない、連載開始当初はそんな期待があったが、今のところ何も心境は変わっていない。月末が近づくにつれジワジワと追い詰められ、毎月ギリギリの崖っぷちで担当スタッフに原稿を提出している。

Twitterでツイートするのにも物凄く時間がかかる。告知でも近況でも、ひとつ呟くのに数時間から数日かかる。数日推敲した末に呟かないこともある。もっと気楽にSNSが使えたらいいのになと思う。

このコラムはなるべく作り込まない言葉で、素の状態の自分をさらけ出すように心がけている。文章力も語彙力もない自分にできる唯一の書き方だからだ。でも、それって実はとても難しいことなのだと、連載を始めて以来思い知らされている。

「飾らない言葉で書こう。」そう書いている時点ですでに少し飾っている気がする。そうやって自分の言葉を追い詰めていくと、結局何も書けなくなってしまう。頭の中にある考えや思いが、言葉や声となって外に出た途端に薄まってしまうのがもどかしい。

とにかく何か書かないことには始まらない。ピアノをどうやって練習してきたか聞かれることがあるが、いつも上手く答えられない。練習嫌いだったし、自分なりのメソッドがあったわけでもない。十代の頃からとにかく毎日欠かさず弾いてきた。それがよかったのだと思う。ピアノや作曲やトラックメイキングのように、早く言葉も味方につけたい。

昨年の秋から制作していたアルバム「Susanna」が完成し、いよいよ11/25にリリースする。言葉が苦手にも関わらず、今までで一番歌詞の分量が多い作品になった。今はプロモーションの真っ最中で、今日も雑誌の取材を受けてきた。聞き手のライターに「今までで一番シンガーソングライターらしいアルバムですね」と言われた。その通りだと思う。作品を作り終えた直後は客観的に聴くことが難しく、自分が何を作ったのかよく分からない。取材や人との会話を通じて、少しずつ今作について、理解し始めているところだ。

最近読んだ本です。