Kan Sanoの音楽的ライフ【観ずる日々】第32回:アルバムタイトルについて
新世代のトラックメーカーとして注目を集める金沢市出身アーティストKan Sanoの音楽的ライフをちょっと覗き見。
4/27にアルバムをリリースした。タイトルは「Tokyo State Of Mind」。このタイトルについて聞かれると、答えるのが難しくて困る。「外に吐き出せず、胸の中に溜まっている言葉にできない感情や思いのことです。」という感じで一応それらしい返答は用意しているが、結局のところ言葉の響きや字面、雰囲気がなんとなく好きだからという理由が一番大きい。
なんとなくこのメロディは好き、なんとなくそのメロディは好きじゃない。理由は分からないけどこの音色が好き、言葉が好き。その音色はあまり好きになれない、その言葉は使いたくない。そういう説明しづらいもの、でもどうしたいか自分の中でははっきりしているもの、そんな感覚的な部分が音楽は一番大事だと思っている。僕にとって音楽は自分の中にある感覚的な領域に大きく関わるものだ。
タイトルにTokyoを入れたのは、自分がいま東京で生活し、東京で音楽活動していることをアルバムに記録しておきたかったから(だと思う)。東京に来てもう16年になる。いつの間にか人生で一番長く住んでいる場所になった。東京はとにかく人が多い。物が多い。時間の流れるスピードが速い。だから僕が東京で生きた痕跡や匂いも、僕がいなくなればすぐに埋もれて流され消えていく。それでいい。でもアルバムには東京で生きた僕の痕跡がしっかりと残る。本人の意志や意図と関係なく、アルバムとはそういうものだということ。
僕が東京で暮らす中で感じたり考えていること、思うこと、思想のようなもの、それらは意識せずともアルバムにすべて入っている。「Tokyo State Of Mind」とはアルバムの中に漂う僕そのものなのだ。と今書いていて思った。
◯Kan Sanoの音楽的ライフコラム【観ずる日々】
執筆者プロフィール
Kan Sano
石川県金沢市生まれ。キーボーディスト/トラックメイカー/プロデューサー 。バークリー音楽大学ピアノ専攻ジャズ作曲科卒業。FUJI ROCK FESTIVAL、RISING SUN ROCK FESTIVAL、ジャイルス・ピーターソン主催 World Wide Festival(フランス)など世界中の大型フェスに出演。 2019年アルバム『Ghost Notes』をリリース。テレビ朝日「関ジャム 完全燃SHOW」への出演でも注目を集めている。