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高いの?安いの?|裕子の艶言葉 #77

酒が入れば心も開く。金沢屈指の名門クラブに在籍し、現在は木倉町でワインバーを経営する裕子さんの酸いも甘いも知り尽くした人生談義。酒席で老若男女の心の声に耳を傾けてきた夜の蝶ならではの言葉は、まるで美酒のごとく身体の奥まで沁みわたります。

 

当方、ちょっと特殊な形態のバーを営んでおります。そのせいか、お客様や巷の噂で「高い」と言われることもあれば「安い」と言われることもあります。

 

それは当店に限らず、これまで在籍してきたラウンジやクラブ、スナックでも、同じようなことをよく耳にしてきました。実際、あたし自身が客としてお店に行ったときでも、「高いなぁ」と感じることもあれば、「こんなに安くていいの?」と驚くこともたくさんあります。

 

では、それらの違いって、なんでしょう?

 

もちろん、その人のお財布事情は大きな要素です。でも、それ以上に「付加価値」によって「高い」「安い」と感じるケースが多いような気がしています。

 

お酒を飲むだけなら、酒屋さんで買って家で飲めばとてもリーズナブル。けれど、水商売の世界に長くいると、紳士的に楽しんでくださるお客様に混じって、「このウイスキーの原価を知っている、ぼったくりだ」「たいしたホステスもいないのに高いよね」といったお話を、わざわざ口にされる方にも出会ってきました。
そんな時いつも思うのが、「だったら、おうちでその原価のお酒を飲めばいいのに」です。

 

それでも人は、あえてそうしたお酒の場に足を運ぶ。それは「誰かとお酒を味わいたい」という気持ちがあるからだと思います。

 

その店に会いたい人がいるのはもちろん、人と話をしたい、話を聞いてほしい、ひとりで飲んでも楽しく酔えない、ちょっとおめかしして出かけたい…要するに「人と触れ合いたい」という思い。そして、そんな場で「高い・安い」と感じる基準は、おそらく“満足度”がとても大きな割合を占めているんだと思います。

 

「楽しかった!」と感じれば、価格以上の価値を感じられるし、期待していたものが得られなければ、お金を捨てたような気持ちになるものです。

 

ちなみに、「お金を使う」という行為は、脳にとっても気持ちの良いこと。ご褒美をもらった時のような快楽ホルモンが出るため、買い物依存や極端な“貢ぎ癖”になることもあるようですが、それが「ダメなこと」とは一概に言えません。

 

そもそも、なぜ人は“ご褒美”を求めるのか。お金を使うことでなぜ心地よさを感じるのか。どこにストレスがあるのか。そうした部分を掘り下げることも大事なんだと思います。

 

一方で、お財布のひもを締めすぎる人は、「お金は減らしてはいけない」「お金がなくなったら自分の価値がなくなる」と思い込んでしまうことも。人の価値は、そんな“数字”なんかでは測れないのに…。

 

よく、お金の法則として「与えると返ってくる」と言われますが、私はその言葉よりも「循環させる」という表現の方がしっくりきます。

 

自分が持つ商品やスキルを差し出す。それを必要としてくれるお客様がいて、その対価として報酬をいただき、また次へとつなげていく。サービスであれ、モノであれ、誰かの生活や心が少しでも良くなるために動く──それが、商売の基本のキ。

 

この“循環”が、日常の中にもあればいいなと、私はいつも思っています。

 

よく周りからは「裕子はやりすぎ」と嗜められます。それは大切な人たちが喜んでくれるプランを考えるのが好きで、つい自分の持っている以上のものを出そうとしてしまうから。

 

でも、それでもいいと私は思っています。なぜなら、私が周りから受け取っているものが、もう十分すぎるほど大きいから。

 

だからこれからも、存分に。水が流れるように、気持ちよく循環させていきたいのです。

 

艶小噺

恒例のベルリン。今回は一晩だけオランダのアムステルダム、メインはフランスのマルセイユ、そしてお決まりパリ。

 

「どんな所巡ってきたの?」とよく聞かれますが、本当に特に何もしていないんです。

観光名所の様な所へわざわざあまり行かないんです。

 

ゆっくり本読んで、映画観て、スーパーマーケットやドラッグストアには、何かと口実を作っては1日に何度も足を運んで。食材を買ってお料理したり、土地のモノをいただける美味しいごはん屋さんを調べて、食べたいモノを食べる。

 

どこへ行っても基本的には暮らす様に過ごします。

自分がとっても大切にしている、人生のゆとりの時間です。

 

たいしたお土産はありませんが、お土産話聞きに来てくださいね。

 

 

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