
酒と涙と自律神経|裕子の艶言葉 #85
酒が入れば心も開く。金沢屈指の名門クラブに在籍し、現在は木倉町でワインバーを経営する裕子さんの酸いも甘いも知り尽くした人生談義。酒席で老若男女の心の声に耳を傾けてきた夜の蝶ならではの言葉は、まるで美酒のごとく身体の奥まで沁みわたります。
涙が出ない。感動しない。心が動かない。悲しみが分からない…。そんな経験をされている方が、いま、とても多いように感じます。涙が出るというのは、心身のバランスを保つための生理現象。心を解放する「カタルシス効果」と呼ばれ、心身を浄化する働きがあります。
もちろん、目の乾きや異物を流すための涙もありますが、今回は、悲しみや感動によって流れる涙についてお話ししたいと思います。
悲しいのに涙が出ない。嬉しいのに涙が出ない。これまで泣けていた場面で、涙が出なくなってしまう。要因はさまざまですが、現代に多いのは自律神経の働きがうまく機能していない状態ではないかと感じています。
働きすぎによる過緊張。そこからくる睡眠不足や、抜けない疲労感。簡単に言えば、神経がずっと「ハイ」の状態にあると、涙は出にくくなります。さらに、ドーパミンやセロトニンといったいわゆる“幸せ物質”が分泌されにくくなり、その反動として「ドカーン‼」と快楽物質を求め、過食や過度なアルコール摂取、性的な快楽への依存に向かうことも少なくありません。
そうなると、当然ながら弊害は増え、心身の不調も起こりやすくなります。
一方で、理由もなく涙があふれてくる人もいます。こちらは、完全なるメンタルダウン。心身が「ロー」に落ち込んでいる状態です。緩みすぎて、地面に身体が張り付いたように動けない。ネガティブな思考に引き込まれ、どんどん深く沈んでいく。物理的に下を向くと、思考もまた沈んでいくもの。「上を向いて歩こう」とは、よく言ったものですね。
ハイでもローでも、いずれにしても原因を取り除くことが最重要です。「つらくても我慢」が美徳とされてきましたが、人生100年時代の現代を、それだけで生き抜くのは難しい。私は、そう感じています。
もちろん、何かを習得するため、明確な目的のために耐える時間が必要なこともあります。けれど、その先に光はあるのか。それとも闇しかないのか。そこは、きちんと見極めておきたいところです。
自分はいま、どこに立っているのか。どこへ向かって歩いているのか。どうすればリラックスできるのか。人と一緒がいいのか。ひとりがいいのか。家が落ち着くのか。それとも家では解放されないのか。
ちなみに皆さま。お風呂、好きですか?湯船、きちんと浸かっていますか?私は大のお風呂好きです。
名前を「裕子」から「湯う子」に変えたいくらい、湯船に浸かる時間を大切にしています。お風呂には、単に身体を温める以上の効能があります。ある有名なお風呂屋さんの方によると、湯に浸かる心地よさは、十分な湯量による水圧のマッサージ効果も大きいのだそう。
さらに、肌に心地よいものが触れるという行為そのものが、先ほど触れた“幸せホルモン”の分泌を促し、心を満たしてくれます。これらは、短時間のシャワーでは得られません。
そのあと――お酒が好きな方は、軽く一杯。飲まない方は、アイスクリームや好きなものを少しだけ。もちろん、毎日の過剰摂取は禁物。けれど、心身をゆるめるために、お酒や甘いものの力を適度に借りることも、ときには必要だと思っています。
誰にでもできる、簡単なリラックス方法。ぜひ、頭の片隅に置いておいてくださいね。
(何事もほどほどに。長湯は逆に疲れることもあります。どうか、身体の声を聞いてあげてください。)
艶小噺
お店では料理を担当していないため、「料理ができない人」と思われがちですが、実は毎日きちんとご飯を作っております。
キッチンガジェットやお鍋も大好き。そしてついに、憧れのル・クルーゼを手に入れました。炊飯器はバーミキュラなので、重い鋳物鍋には慣れていますが、コトコトとゆっくり炊き上げてくれるル・クルーゼは、もう、愛おしくてたまりません。
一生を共にできる、相棒です。気分が上がる、かわいいお鍋。見た目が好き、という感覚。やっぱり大切ですね。

