
Kan Sanoの音楽的ライフ【観ずる日々】第78回:Mental Sketchツアーを振り返る
金沢市出身のキーボーディスト/プロデューサー・Kan Sanoが綴るエッセイ。新世代のトラックメーカーとして支持されるアーティストの音楽的ライフを覗いてみよう!
1ヶ月間の「Mental Sketch Tour」が終わった。初めての冬のツアー。はじめましての場所からお久しぶりですの場所まで、全国8ヶ所をまわった。
前回のコラムでも書いた大雪の札幌、金沢から1月末にツアーはスタート。その後、2月に入りまずは京都、静岡へ。京都はずっと行ってみたかった歴史あるライブハウス「磔磔(たくたく)」。関西でライブを1本やる場合大阪になることが多いが、今回はどうしても京都でやってみたかった。
数年前のライブ活動休止中、京都には旅行がてら2度ほど遊びに行った。幼馴染が住んでいることもあり、なんとなく親しみやすさがある街。シンガーソングライター長谷川健一さんの地元であることも自分にとっては意味が大きい。ハセケンさんの素晴らしい感性を育んだ街。憧れもあるし興味もある。
磔磔は古い酒蔵を使ったライブハウス。2階の楽屋には過去のライブのポスターや看板が所狭しと飾られていて、「え、清志郎が来てたの…!細野晴臣も!」とテンションが上がらずにはいられない。建物全体からどんな音楽でも受け入れてくれるような懐の深さを感じた。
僕のライブはバンドセットとソロで音楽の内容や音量がまったく違うけど、ここでならどちらのパフォーマンスでも上手くハマる感じがした。そういう場所って実はなかなか無い。大抵の会場はバンド向き、ソロ向き、どちらかに分類される。磔磔には音楽のリミットや壁を取っ払うような強さ、大きさを感じた。
静岡公演の会場はジャズのライブハウスだった。なんとなく影響を受けて、いつもよりジャズ寄りの演奏になった気がする。ジャズスタンダードの「Body And Soul」や「Beautiful Love」をその場の思いつきで弾いたりした。
会場のすぐ裏は徳川慶喜が大政奉還後に住んでいた邸宅があった。立派な庭園だったなあ。あんな庭があったら理想的だけど、流石にちょっと広すぎるか。静岡はマネージャーフデ君の地元なので、終演後は彼の行きつけの焼き肉屋、バー、クラブに行った。バーで飲んだBASIL HAYDENというバーボンがとても美味しかったけど、2、3口で強烈に酔いが来てクラクラした。
1週間後、今度は広島の福山へ。主催のケンゴさんとはライブ活動休止中に2度くらい会って、またライブやろうって話をしてたから、数年越しの伏線回収のようなライブだった。尾道の友人にも久々に再会できて嬉しかった。
会場に用意してもらったのは元々廃棄される予定だったアップライトピアノ。近年買い手が見つからずに処分されるピアノが増えているらしい。今回弾いたピアノは今後も会場に置かれることになったらしい。みんな、もっとピアノを弾いたらいいと思う。指を動かすとボケ防止にもなるらしいし。
その1週間後、横浜のビルボードへ。1stはソロ(Mental Sketch Tour)、2ndはバンドセットの2部制。まったく違う編成、セトリだし、同じ曲でもアレンジは変えてるから、事前の準備と当日の集中力のキープ、気持ちの切り替えがなかなか大変だった。トータルで28曲演奏したらしい。
実を言うと、福山から戻ったあと喉風邪っぽい症状がずっと続いていて、横浜までの1週間結構ナーバスになっていた。無事乗り越えられてホッとした。喉のケアは相変わらず悩みの種で本当に難しい。普段人に会わないし、大声を出すこともないから、イベントでたくさんの人に会うと疲労が凄くてその後体調を崩しがちだ。特に冬はそのリスクが高まる。こんな調子でよくライブ活動できてるなと思う。
さらに1週間後、いよいよツアーの最終目的地、九州の福岡、熊本へ。毎年行ってる2ヶ所だからホーム感が強い。というか、もうホームだと思っている。たぶん東京よりワンマンやってると思う。
福岡の円形ホールは2度目だったので、以前よりリラックスしてできた。福岡に1年くらい住みたいと前から本気で考えている。「住みます芸人」的なやつのミュージシャン版の仕事、何かないだろうか。久々に食べた「やまちゃんラーメン」が感動的に美味しくて、今後の人生とんこつラーメンはもうこれだけでいいなと思った。
熊本は終演後、深夜まで気まぐれで営業している古本/レコード屋「汽水社」へ。もう6年くらい通っているが、人見知り全開な店長と初めて少し会話をした。嬉しかった。
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