歌われた「金沢」。意外と知らない金沢が歌われた曲たち。金沢ご当地ソング大集合!
金箔、友禅、和菓子に茶屋街。育まれてきた伝統と新たな文化創造をあわせ持つ城下町金沢。金沢カレーに、金沢おでん、地元民にはド定番の北陸製菓の『ビーバー』がNBA八村塁選手効果で盛り上がりをみせたのも記憶に新しいところ。
そんな魅力的なコンテンツにあふれた「金沢」という街は、多くの歌にもなってきました。
そこで、今回は金沢ご当地ソングをあらためて総ざらい。
演歌の金沢
『加賀の女/加賀かっちり』北島三郎
演歌界の超大御所サブちゃんの「女シリーズ」の一曲。「女」と書いて「ひと」と読みます。
“君と出逢った 香林坊の〜”で高らかに始まるサブちゃん節は、盆踊り会場でも『百万石音頭』に続けて、毎年響きわたってます!
身も世もすてて あなたのために 生きると云った 君住む町よ
『加賀の女』より
加賀のひとは辛抱強く“あなた”を待ってる、みたいです。
続きまして紹介するのは、このお方。
『金沢望郷歌』松原建之
地元感の強い松原さんですが、静岡県ご出身です。「建之」と書いて「たけし」と読みます。
奇跡のクリスタルボイスで知られる松原建之さんのデビュー曲にして代表曲『金沢望郷歌』。
これまた金沢にゆかりの深い五木寛之氏の作詞です。犀星、秋声、兼六園に辰巳用水と歌詞のなかには金沢要素がふんだんです!
わがふるさとは金沢 夢を抱く街
『金沢望郷歌』より
というフレーズがしみる一曲です。
皆さん、金沢で夢を抱いていますか?
松原さんのセカンドシングル『あの町に帰りたい』のB面は、『内灘海岸』。渋いところを攻めてます。
やはり圧倒的に「演歌」で歌われることの多い金沢。「雨」「夜」「さすらう」「女ひとり」といったキーワードとともに、慕情をこめてコブシをきかせて歌われています。
また、『日本海ブルース』(坂本冬美)、『北陸ブルース』(佐藤仁見) など、タイトルに「ブルース」の文字が入る曲も多く見られます。ブルージーな情景が金沢感なんでしょうか。そうみたいです!
歌謡曲の金沢
演歌を離れた歌謡曲寄りの金沢ソングとしては、
『泣きぬれてひとり旅』(小柳ルミ子)、『風の船(海より深く…)』(ふきのとう)、『金沢 Cry Me a River』(藤田恵美)といった楽曲が。
『盛り場 海峡』藤田恵美
『金沢〜』はこちらのアルバムに収録されています。結果「女ひとり」のイメージです。
『ひだまりの詩』で知られるル・クプルの藤田恵美さんによる楽曲です。
それにしても「盛り場 海峡」ってすごいアルバム名だ…。
暗がり坂から あかり坂 あなたは上って 私は下りた
だからいいのよ うらんでいいのよ
『金沢Cry Me River』より
『Cry Me a River』は「私のために川のようにお泣きなさい」という意味のようですので、やっぱり女の情念系ソング。金沢ってやっぱり、そうなんですねぇ。
歌のなかからあぶり出される、金沢のイメージ
とにかく女が、あの人を想いながらひとり泣き濡れて、雨のなか歩いている街。それが金沢です!
やはり「雨」に関するワードが頻出。
「わすれ雨」「ひとり傘」「金沢しぐれ」など。雪よりも雨に女の情感が乗っかりやすいようです。
金沢の雨の中で あなたを忘れたい
『金沢の雨』より
『金沢の雨』の中で忘れられない男への未練を情念たっぷりに歌い上げる一曲がこちら。
『金沢の雨』城之内早苗 1987
金沢を代表するふたつの河川「犀川」と「浅野川」も高確率で歌詞になっています。
そして、やはり多く歌われるのは、女川の愛称を持つ「浅野川」。
浅野川のゆるやかな水の流れに女を重ねているようです。浅野川にかかる「天神橋」や「梅ノ橋」も多く登場しますので、地元民も失恋したら橋のたもとで泣くべきです!
あなたはきっと 犀川で
そうね私は 浅野川
永久(とわ)に交わることもない
さだめ悲しい 流れです
『金沢ひとり旅』より
『私の翼/金沢ひとり旅』 有沢美智子
おんな心を哀切こめて歌い上げるタイプの楽曲が多い(それは時には北島三郎もです)金沢ソングですが、おとこ側の心情を乗せた歌もあるんですよ!
『加賀慕情/湯煙りの宿』杉田淳 2010
コチラの歌詞の内容は、
一人さすらう 金沢に あきらめ切れぬ 心の痛み
男ごころの 哀しさよ 会ってみたとて 人の妻
『加賀慕情』より
やっぱり、失恋したみたいです!女も男もおんなじです。
ジャニーズ、ハロプロ、そして山口百恵。の金沢
その他、アイドルソングや他ジャンルにも歌詞に「金沢」が盛り込まれた曲はあるのですが、
『僕らの軌跡〜ジャニーズWEST列島縦断』(ジャニーズWEST)、『ロックンロール県庁所在地’95〜おぼえちゃいなシリーズ〜』(ミニモニ。オリジナルは森高千里)、『MOTOR MAN かがやき』(SUPER BELL”Z)
など、他の都市名と並存しているパターンなので金沢ご当地ソングとは言いがたいところです。しかし、残された超大物がひとり…、山口百恵です!
『百恵白書』山口百恵
『I CAME FROM〜』はこちらのアルバムに収録されています。シングルカットはされていませんが、百恵ファンには人気の高い一曲。
作詞:阿木耀子・作曲:宇崎竜童による鉄板の百恵ちゃん歌唱です。
歌詞にもしっかり
横須賀から 汐入り 追浜 金沢八景 金沢文庫
『I CAME FROM 横須賀』より
と「金沢」が…、
と思いきや、あっちの「金沢」ですね。文庫の方です。横須賀、って言ってますからね。というわけで百恵ちゃんは、金沢ソング歌ってません!
金沢は石川県だけじゃないのです。神奈川にもあるのです。日本は広いです。
金沢ご当地ソングの未来へ
というわけで、「金沢」が歌われた曲たちを見てきました。
演歌の世界の持つしとやかさに程よく「金沢」という街がマッチするということは確かなこと。
しかし、この先より洗練されたカタチの現代的な金沢ご当地ソングが産み出されることに期待します!金沢発のご当地アイドルたちの活躍も目覚ましいので、きっと新しいタイプの金沢が登場する決定版的な歌が産まれる日も遠くないでしょう!
それまでは、しっかり『加賀の女』を練習しておきましょう。
最後に、
母娘で金沢旅行するというパターンの楽曲をご紹介します。
『ニッポン太郎/母との旅路 金沢』加賀夕子
『ニッポン太郎』の方が目立ちますけど、ジャケットの左下見てください!
『母との旅路 金沢』のカップリング曲が!
コチラの歌詞の内容は、
母とふたりの 旅ならば 連れて行きたい 金沢の街
『母との旅路』より
いいですね!「女ひとり」じゃないです。
と思ったら、
恋に疲れていたけれど 強く生きます 生きます強く
『母との旅路』より
…やっぱり失恋したようです。
それが、金沢。
(文章/山本真己)