ひんやり涼しい!息苦しくない!『丸井織物』の夏用マスクはどうやって生まれた?
ここ北陸はポリエステルやナイロンなどの合成繊維の産地。なかでも石川県中能登町は、古くから織物の産地として栄えてきました。
そんな中能登町にあるのが合成繊維の国内トップシェアを誇る『丸井織物』。創業83年の老舗であり、テキスタイルにおける革新的な技術を開発する会社として世界的に注目されています。
得意とするのは、スポーツウェアやアウトドアウェアなどに使われる〈撥水性〉や〈吸水性〉に優れた高機能素材。最近ではアーバンリサーチとのコラボでも話題になりました。
また、永く愛される洋服づくりを可能にするため、生地の消耗劣化を限りなく抑えた超寿命機能素材を提案するブランド「NOTO QUALITY」を展開しています。
会社内に併設するスタジオには6万点以上の生地サンプルが展示されている。
その『丸井織物』が、今春よりコロナ感染予防対策の一環として、高機能素材を生かしたマスクを独自に開発し始めました。今回は新しい生活様式における熱中症対策のキーアイテムにもなりそうな〈冷感夏マスク〉について、中能登までお話をうかがってきました。
高機能素材を生かしたマスク
対応していただいたのは、素材開発担当の磯見亜紀奈さんと広報担当の岡島彩さん。社内はとても清潔感があって女性が働きやすそうな印象。実際に女性の社員さんも多いそうです。
どのようにして「冷感夏マスク」が開発されたのか、教えていただけますか?
岡島さん
「マスクを作りながらもコロナ終息までに時間がかかると感じ、今度は私たちが開発する高機能素材を活用した「夏でも快適に使えるマスク」を製造する案が、社内から湧き上がりました」
磯見さん
「6万点ある生地の中からどの生地がマスクにふさわしいか試作を重ねて、ようやく完成したのがこちらの〈ひんやり夏用マスク〉です」
(実際にマスクを触ってみて)すごい!肌がひんやりします。これはどんな素材が使われているんですか?
岡島さん
「接触冷感機能を備えたポリエステルを使用しています」
接触冷感ってなんですか?
磯見さん
「肌がモノに触れたときに冷たく感じるか暖かく感じるかは、肌から物体への熱の移動量によって変わります。この素材はその熱の移動量が大きいので瞬間的に肌がひんやり感じるんです」
岡島さん
「マスクを着けたときや会話で口を動かしたときにひんやりするだけでなく、呼吸するたびに息がマスクの中で冷えて、息苦しさも感じにくいんですよ」
生地もすごくサラサラしていますよね。着け心地が良さそうです。
磯見さん
「薄くて軽い、通気性に優れた素材を使っているので、息がしやすく、快適に過ごすことができます。しっかりフィットするように、ひもにアジャスターも付けました。耳も痛くなりにくいんですよ」
ちなみにこのマスクは洗って使えますか?
岡島さん
「もちろん!速乾性にも優れているので、部屋干し2時間で乾燥します。なので毎晩洗ってもらっても大丈夫です」
夏場は汗をかくのでありがたいですね。
磯見さん
「女性はメイクもつくので、毎日洗いたいんです。夜に洗濯しても翌朝には清潔なマスクを使うことができるので、他の布マスクに比べて取り扱いやすいと思います。」
冷却ジェルも付属しているんですよね?
岡島さん
「はい。凍っても固くならない特殊な冷却ジェルをふたつ、左右のポケットに入れて使用します。30分ほど冷たさが持続するので、熱中症対策にもお使いいただけます」
本当だ!冷たくて柔らかい。これなら顔に当たっても痛くないですね。
磯見さん
「氷点下でシャーベット状になる特殊なジェルを使っています。もう少し冷たさを持続させたい方は、市販の冷却シートをカットしてポケットに入れる方法もあります」
フィルターはどんなものを使っていますか?
岡島さん
「超微細粒子まで遮断できる、産業用の高品質防菌フィルターを使用しています。フィルター1枚で30日程度の防埃、ウイルスのブロック効果があるとされていますが、衛生面を考慮して6日での交換を推奨しています」
フィルターも洗って使えますか?
磯見さん
「不織布なので洗濯などはできませんが、水でさっとふき取ったり、アルコール消毒液でふき取ることは可能です」
フィルターだけでなく、生地の製造から縫製、冷却ジェルまで、すべて国産にこだわった『丸井織物』の〈冷感夏マスクwith特製冷却ジェル〉。値段は1,980円(フィルター5枚、冷却ジェル2個付き)。現在は、楽天市場のみでの販売となっています。
これからますます需要が増えることが予想される夏用マスク。せっかくなので地元のメーカーがつくる、高機能マスクでひと夏を過ごしてみませんか?
丸井織物
マルイオリモノ
石川県鹿島郡中能登町久乃木井部15
TEL.0767-76-1337
※こちらの情報は取材時点のものです。
(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)
よろしくお願いします。さっそくですが、なぜマスクを作ろうと思ったんですか?
岡島さん
「世の中でマスク不足が続く中、自社で製造した生地を使ってなにかできないかと考えたのがきっかけです。コロナ感染拡大防止のためにも一刻も早く動くべきだと思い、綿のガーゼマスクを社内のスタッフで縫製し、販売しました」
それまではテキスタイルの開発や製造がメインで、最終製品まで作ることはなかったんですよね?
磯見さん
「そうなんです。ただ、今までのように私たちが作った生地を他の会社さんが染めたり、縫製したりすると時間がかかってしまうので、慣れないながらもひとつずつ手作業で縫製しました」