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物、人、環境を捨てられない人へ|裕子の艶言葉 #63

酒が入れば心も開く。金沢屈指の名門クラブに在籍し、現在は木倉町でワインバーを経営する裕子さんの酸いも甘いも知り尽くした人生談義。酒席で老若男女の心の声に耳を傾けてきた夜の蝶ならではの言葉は、まるで美酒のごとく身体の奥まで沁みわたります。

 

大がかりな引っ越しのため一世一代の片付け中。今の住まいが一軒家と言う事もあり、物に溢れ過ぎる生活を送っておりました。

 

こんなにも食器いる?この調理家電は何年使ってない?いつの時代の洋服?登山なんてもうしなくない?本当にこの本を老後も読むのか?使いにくい毛布の山…マグカップて結局使いやすい2つくらいしか手に取らないし、謎のコードはたぶんもう一生どこかに差すことは無い。片付けをするたびに、身の回りのほとんどが必要無い物だったと気が付きます。

 

もともとコレクター気質な所もあり、物を溜め込む事で安心していました。コレクションが並ぶと気持ち良くて、過去の栄光だけしか語らない物を見ては、輝かしい過去や切ない過去に浸る事が美しく、たくさん物を持っている事が豊かさの象徴の様に思っておりました。

 

でも、それらは自分にとっては完全なる思い込みでした。

 

過去を引っ張りだす物が側にあるだけで、嫌な自分の頃を思い出す。思い出さなくとも、脳裏をよぎる。過去にすら執着していた事に気がつきました。俗に言う断捨離を始めてから

 

「これは愛着なのか?執着なのか?」

 

という、いわば宝物なのかゴミなのかを見分ける方法を考える様になりました。それは、物も、人も、環境も、なんなら自分に関しても、全てにおいて当てはまるのです。

 

愛着のある物ならば、誰か他の人が宝物にしてくれれば嬉しい。

執着だけの物ならば、他の人の手に渡るなんて耐え難い。

愛着のある物には暖かさや情熱を感じる。
執着だけの物には冷たさや不安感、強い刺激を感じる。

愛着のある物は大切に出来るから、風通しを良くしたり、お手入れしたりして末永くお付き合いできる。

執着だけの物は、押し入れに閉じ込めっぱなしだったりガチガチに束縛しちゃったりするから、ホコリまみれでカビが生える。

愛着のある物は、手放しても思い出すだけで暖かい気持ちになり心の拠り所になり続ける。

 

「失くなると困る!」とムリに繋ぎ止めるのは完全なる思い込みの執着。

「喜んでもらえて良かった」で完結出来るのは、相手に対する愛着。
「してあげたのに!」は、自分のした行為や、相手からの見返りに対する執着。

相手が心地良く居てくれて、自分も満たされるのは愛着。

 

自分の欲求が満たされる為に、相手の金銭、時間、体力(すなわちそれらは全てその人の命)を欲しがるのは執着の関係。愛着のあるものは、肌に馴染む。着心地の良い服、ホッとする毛布、触れると安心する人の肌。肌に馴染まないのに手元に置いておくのは執着。

 

サイズアウトの服、使わずにカビ臭い物、不安感を感じるのに刺激だけで繋がるセクシャルな関係。変化する事を楽しめるのが愛着。色褪せてきたお茶碗を愛おしく思ったり、人の成長を受け入れられるし、愛する人の老化は愛おしくなる。変化を恐れるのが執着。

 

物や自分が劣化していく事が耐え難く、絶対に抗えない老化が恐ろしいが故に若さへ執着し、パートナーが老いていく事が耐え難い。食べる事(口にする物と言う意味では人も)に愛着のある人は、料理や食材や文化、そのものに触れるし美味しい物をみんなで分け合える。執着で食べる人は、自分が気持ち良くなる為だけに貪り、余らないほど食べて身体に溜め込む。

 

全ては、物、人、環境、思考、自分自身の全てにおいても通じる事かと思います。

 

「この世に自分の物なんて無い。全て借り物。肉体や精神すらも」

 

水が循環する様に、風が吹き抜ける様に、生活を送っていきたいです。

 

 

艶小噺

Sankakuがオープンしてそろそろ3ヶ月。新しい出会いもあり、たくさんの人々に支えてもらって成り立っております。

 

時おり、静かな時間にカウンターに座っておばんざいを食べてワインを飲んでみます。

 

ちょうど良い量の美味しいおばんざいに、お酒。自画自賛になりますが、そのたびに「良いお店だな〜」と思います。

 

会いに来てくださいませね。

 

 

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