
お酒を飲むと笑う?泣く?怒る?どうなる?|裕子の艶言葉 #76
酒が入れば心も開く。金沢屈指の名門クラブに在籍し、現在は木倉町でワインバーを経営する裕子さんの酸いも甘いも知り尽くした人生談義。酒席で老若男女の心の声に耳を傾けてきた夜の蝶ならではの言葉は、まるで美酒のごとく身体の奥まで沁みわたります。
お酒の場で働いて27年。これまでドラマチックな場面に数え切れないほど遭遇してきました。そして、酔い方でその人の心理状態が少し垣間見える様にもなりました。
酔ってもさほど変わらなく、気持ち良くなれる人は仙人級の嗜み方。酔ってパァッと陽気になる人は最高。酔って寝ちゃう人なんて可愛いもんで平和(起こしても起こしても起きなくなるのはアウト)。毎度酔ってひどく泣く人、酔って怒る人、酔って説教し出す人、酔って愚痴や人の悪口が止まらない人…さらにその記憶が無くなったりしちゃうと、どんどん人が遠ざかる上に、ご本人も記憶が無い事による翌日の自己嫌悪。結局、そんな状態の人と一緒に飲んでくれる人も、同じ様なレベルになります。
しかし、若い頃の自分を思い出すとそんな事がたくさんありました。たくさんと言うか、ほとんどです。思い出したくも無いような情けない失敗ばかり。では、どうしてその頃はそんな風だったのかと振り返ると、あたしはその頃の自分の事が嫌いでした。
過剰なサービス精神で何でもYES、嫌な事もYES、そして苦しくなって記憶を酩酊させたくて酒に逃げる。記憶が無くなるまで飲んで他人様に迷惑をかける。翌日は自己嫌悪。そしてまた無理に自分を作る、苦しくなって記憶を酩酊させたくて酒に逃げる………の負のループ。また、自分がなまじっか「酒が強い」と言う自信もありました。周りの女の子達がカルアミルクやカシスオレンジで頬を赤らめて可愛く酔っ払っていく様を、顔色ひとつ変えず、喉をかっ開いてビールを流し込み、シャンパンやワイン、焼酎を飲み、深夜にはテキーラ等の強い酒を「罰ゲーム」と言う名で煽る。酔いたくて記憶を無くしたくて。自分を失くしたくて。
元々の繊細さも相まって、毎日が事件だらけでシラフではいられない日々でした。
そんな日々も「水商売を辞める、辞めなければ壊れる。そして日本から離れる。離れなければ壊れる」との強い思いにより、ホステス卒業。そして待っていたのは突然の妊娠と言う事実による、酒や荒れた日々への強制終了。少しの間、平穏な日々が取り戻せました。
深い酒は、ただ単に人を荒れさせる訳ではありません。その人の「本性を露呈させる」だけです。その時の精神状態が、お酒を飲んで解放した事により、周りにバレるのです。
前回のコラムで「口淋しい人は酒のペースも早い」と書きましたが、まさしく。淋しいと、お酒が進みます。そして、劣等感やストレスが強いと、深く酔いたくなります。忘れたい事があると、記憶が無くなるまで飲みたくなります。酒を飲む事により、ハイパーになり無双状態に突入する人はかなり要注意(あたしデス)。翌日には「2度とお酒なんて飲まない…」と、今まで酒に助けられた恩も忘れる仕打ちをする羽目に。よくドラマや映画で、酒を飲んでは暴力的になったり妻に暴言を吐いたりするお父さんが描かれます。あのお父さん達は、ものすごい強い劣等感やストレスを抱えているんです。そして「自分に逆らえない」であろう相手をターゲットにして、自分の権威を守ろうとしているのでしょう。
「飲んで覚えていない、ごめんなさい」なんて、言語道断。断ち切る強さは、された本人が持たねばいけません。ちなみに経験上、そう言う関係になっている相手との関係の修復はほぼ不可能な事が多いです。
きっと、そう言う相手なのです。そう言う相性なのです。その夫は、妻に対して甘えている。心理的に甘えている相手には酷い態度を取れる。そして酒の力を借りて強い態度に出て発散する(思春期の息子が母親に暴言吐くのも同じく甘えているから。しかしその話はまた今度)。もしくはその妻は夫にとって、夫の劣等感をくすぐる人の場合も。その場合は相性悪い、と諦めるが吉。もちろん関係が修復する場合もあるかと思います。それには根気良く、お互いが思いやれて「存在を当たり前だと思わない」姿勢、そして強いストレスや劣等感の解放が必要かと思います。
あたしも昔は酔っ払っては跡が残るほど他人様を噛む癖があったのですが、どんなに記憶が無くてもどうやらちゃんと相手を選んでおりました。それは「何をしても絶対に自分から離れない」人。自分の方が立場が上だと勘違いしていたんでしょう。
やっとここ数年で、お酒を飲んでも穏やかに過ごせる様になりました。それは心が安定しているから。辛い関係の人が周りから居なくなったから。平和だから。お酒をハッピーなスパイスとして、楽しめる様になりました。そうして気がつけば、ただただ笑ってお酒を飲んだり、深過ぎず愚痴って慰めあったり、たまには軽く涙したり。それにしても毎日お酒が深くなると身体に堪える様になったので、ほどほどに。あたしもついに、眠たくなる時もやってきました。
あたしと飲んでいて、気持ちがクサクサする人がいましたら、ごめんなさい。きっとお相手の劣等感を刺激しているのかも。
あたしと飲んでいて、楽しい気持ちの方はじゃんじゃん寄っておいで。ハッピースパイスのお酒で楽しい乾杯しましょう!
艶小噺
娘と東京、ひとりで京都と、立て続けに楽しい旅行をしてきました。
会いたかった人に会え、行きたかったお店へ行けて、美味しいモノと最高のお酒と最強のメンバー。
お付き合いくださった方々、本当にありがとうございました。