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レッツ温活!漢方医学から考える冷え症対策とは?@中村固腸堂

まだまだ寒さが続くこの季節、体の冷えに悩まされている人も多いのではないでしょうか。

 

ちなみに筆者はこの季節になると足の冷えがひどく、こうして原稿を書くときも靴下の重ね履きにレッグウォーマー、足元にはストーブ&ホットマットと、フル装備でパソコンに向かっています。年々辛くなっているので、どうにかして改善したいのですが…。

 

というわけで今回のテーマは「冷えの改善」。

 

明治初期から続く、漢方相談の専門店『中村固腸堂』にうかがって、漢方医学から考える冷え症対策や日常的に続けられる温活習慣などを聞いてきました。

 

津幡町中心部にある『中村固腸堂』。なんでも鑑定団のCMでもお馴染み!

 

冷えは万病の元!病気の一歩手前です。

6代目の中村寿理さんとご主人の周作さん。漢方医学に関する幅広い知識によって地域の健康をサポートしている。

まずは「冷え」について。冷え症を放っておくと、体にどのような悪影響がありますか?

寿理さん

漢方医学において、冷えは「未病」と呼ばれる病気の一歩手前の状態とみます。そのため冷えに対する治療方法もしっかりと確立されていて、患者さんの体質や症状の程度に合わせた漢方薬がいろいろと用意されているんです。

どういった原因が冷えを引き起こすんですか?

周作さん

冷えの原因はおもに「細胞の血液不足」。血液には各器官に酸素と栄養を届け、二酸化炭素と老廃物を回収する役割がありますが、それと同じくらい大切な役目として「体温を維持する」という働きがあるんです。

血液が不足してるかどうか、どうしたら判断できますか?

寿理さん

血液検査で貧血と診断されなくても、冷えや立ちくらみ、肌や髪の乾燥、生理不順、舌の色が薄いなどの兆候があると、漢方医学では「質の良い血液が不足している」とみられます。とくに生理のある女性は、慢性的に血液が不足している状態なので注意が必要ですね。

以前は映像関係の仕事に就いていたという周作さん。漢方に出会ってからは、自分自身が抱えていた不眠や頭痛などの症状改善を体感し、漢方医学の奥深さに感動したのだそう。

冷えの種類によって対策も変わる?

周作さん

ところで吉岡さん(筆者)、冷えには大きく分けて4つのタイプがあるのはご存知でしたか?

えっ、そうなんですか?

周作さん

はい、血液や気が不足して冷えが起こる気血両虚証(きけつりょうきょしょう)、血行不良によって体が冷える瘀血証(おけつしょう)、体を温める機能が低下して冷える陽虚証(ようきょしょう)、ストレスや緊張によって気の流れが悪くなる気滞証(きたいしょう)の4つに分類されます。

冷えといってもいろんな種類があるんですね。

寿理さん

種類によって治療方法や処方される漢方も変わるので、まずはどのタイプの冷えに分類されるかをみるのが大事なんです。

中村さんのお話をもとにタイプの特徴をまとめたのがこちら!自分の冷えがどれに当てはまるかどうかは、自己判断ではなく専門員に相談するのがおすすめです。

 

冷え症の中医学(漢方)的分類

 

気血両虚証
体に栄養を届ける血液や気の不足によって冷えるタイプ。とくに女性に多く、顔色が悪い、めまいや動悸、月経量が少ない、爪が割れやすい、乾燥肌などの症状が特徴。漢方薬は、補気薬と呼ばれる内臓の機能を高める薬や、補血薬と呼ばれる血液を補うものを中心に処方される。筋トレをはじめとした、血を作る力が弱い体質を改善するアプローチも有効的。

 

瘀血証
血液が足りずに血管の流れが悪くなる、血液はあるが詰まって流れないなど、血行不良によって冷えるタイプ。頭痛、生理痛、腰痛などのチクチクと刺すような痛みが起こりやすく、下半身が冷えるという人も多い。対策としては血液をキレイにし、毛細血管の流れを良くする治療が行われる。漢方薬は、血液の流れを良くする処方が多くあるので、体質に応じて使い分けていく。

 

陽虚証
体を温める作用のある陽気(※)が不足して体が冷えるタイプ。骨から冷えて腰痛が起こるなど、芯から冷えるので精神的にも肉体的にも疲れやすい。重度の冷え症。顔面が白っぽい、便がゆるい、尿の色は透明で量が多いなどの症状が特徴。漢方薬は、おもに補陽薬と呼ばれる温める力をサポートするものを用いる。

 

※ 身体を温めることで精力的な活動を起こさせるエネルギーのこと。

 

気滞証
ストレスや緊張など気の流れが悪いために冷えるタイプ。自律神経の乱れによる血管収縮など、長期的に緊張状態が続くと血流悪化のための冷えが定着する。イライラや落ち込みがある、胸や脇が張ってつまる感じがし、ときに痛む。ガスやゲップが出やすいなどの症状が特徴。このタイプは気の流れを良くすることで血の流れも良くなるので、理気作用のある漢方薬がおもに使われる。

 

冷えの種類によって処方される漢方薬はさまざま。ざっと並べてもらっただけでもこれだけの種類がある。

舌は健康のベロメーター!

ちなみに僕は足元がよく冷えるのですが、どの冷えに分類されますか?

寿理さん

ちょっと舌を見せてもらえますか?

えっ、舌ですか?

寿理さん

はい、漢方医学には「四診」と呼ばれる4つの診療方法があって、そのひとつ「望診」では患者さんの動作や歩き方、顔色や表情など、視覚によって情報収集します。なかでも舌の色調や形などをみる舌診はとても重要なんです。

なぜ、舌なんですか?

周作さん

たくさんの血管が集まる舌は、気血の巡りや過不足がみてとれる健康のバロメーター。舌はその人の体質や内臓の状態を映し出す鏡でもあるんです。

僕の舌はどうですか?

寿理さん

ちょっと暗いですね〜。瘀血(血の滞り)がみられます。

血行不良タイプですか。デスクワークが多かったり運動不足だったり、思い当たる節はたくさんあります…。

寿理さん

たしかにそれもひとつですが、ほかにも要因があるかもしれません。あとで詳しく問診させてくださいね!

舌の色調や形、苔の状態など、さまざまなタイプに分類される。

水分補給は温かい飲み物を。

冷えの改善に有効な生活習慣はありますか?

寿理さん

体温以下のものを体内に取り入れないこと。これを徹底するだけでも、冷え症はだいぶ改善されます。

はい!僕も最近は常温の水を飲むようにしています。

周作さん

じつは常温もNG。ほとんどが20℃前後なので体温以下になってしまうんです。

あっ、たしかに…。

周作さん

すべての飲食を体温以上というのは難しいので、毎日の水分補給だけでも温かいものを取り入れてみてください。

夏でもですか?

寿理さん

はい、むしろ夏の方が気をつけた方がいいかもしれません。お風呂のお湯を常温にしたら寒くて耐えられないのと同じで、内臓も本来はそう感じているんです。

ちなみにお風呂には浸かった方がいいんですか?

周作さん

はい!冷えは睡眠障害や夜間覚醒の原因にもなるので、お風呂に浸かって体を温めることも大切です。

たしかにお風呂に浸かった日はよく眠れる気がします。

周作さん

睡眠不足に悩んでいた方が、シャワーからお風呂に切り替えてよく眠れるようになったという話はよく聞きます。熱いお風呂は体表しか温まらないので、芯まで温まる40℃くらいの温度で入るのがおすすめですよ。

食材の性質を知るのも大事!

食生活で気をつけることはありますか?

周作さん

漢方薬を構成する生薬は、それぞれ熱性、温性、平性、涼性、寒性に分類されます。普段の食事に使われる食材も同様で、寒涼性のものばかり食べ過ぎないことが大事です。

寒涼性の食材はどんなものがありますか?

寿理さん

豆腐、大根、ナス、トマト、カニ、こんにゃく。それと、果物全般は寒涼性に分類されるのですが、その中でもバナナなどの南国で穫れる果物はとくに体を冷やします。一方で、ミカンは果物の中では珍しく体を温めてくれる食材。今の季節にはぴったりなんです。

冬にこたつでミカンを食べるのは理にかなっているんですね!

周作さん

そうなんです。理にかなっているといえば、夏に麦茶を飲む習慣もそうですね。

どういうことですか?

周作さん

大麦や小麦は涼性なので、麦茶は体を冷やすんです。

暑いときはいいけど、冬だと良くなさそうですね…。

寿理さん

はい、なので季節を問わず麦茶を飲んでいる方は、ぜひ見直してみてください。主食のほとんどが小麦が原料となるパンや麺という方も冷えには注意が必要です。

料理教室を開いていたこともある寿理さん。中村固腸堂のホームページでは様々なレシピも公開している。

冷え症の改善におすすめの食材を教えてください!

寿理さん

体を温める性質のあるカボチャ、エビ、タマネギ、イワシ。もち米も体を温めるので、お正月の余ったおもちを活用するのもおすすめです。

スパイスなんかも体を温めるイメージがあります。

寿理さん

おっしゃるとおりスパイスや漢方食材を上手に使うのも効果的です。ジンジャーパウダーやシナモンを紅茶に入れるだけで、冷え対策に有効な薬膳茶になるんですよ。

いいですね〜。今度やってみます!

寿理さん

ただし、熱性に分類されるスパイス類は働きが強い分、摂りすぎると悪い作用が出ることもあります。とくにニキビや化膿、皮膚炎などの炎症がある方は、温める食材やスパイス類は控えめにしてくださいね。

そのほかに注意することはありますか?

寿理さん

とにかく継続することが大切。冷えの種類に適した食材と組み合わせながら、毎日の献立を考えてみてください!

 

冷え症のタイプ別食材はこちら!

 

血虚証(血を補う食材)
卵、ホウレンソウ、ニンジン、きくらげ、黒ゴマ、トマト、落花生、牡蠣、イカ、豚肉、レバーなど

 

瘀血証(血の流れを良くする食材)

ソバ、ネギ、酢、ウコン(ターメリック)、サフラン、チンゲンサイ、クワイなど

 

陽虚証(温める力を補う食材)
ニラ、生姜、羊肉、エビ、スパイス類(シナモン、クローブなど)

 

気滞証(気の巡りを良くする食材)
シソの葉、セロリ、らっきょう、ニラ、ニンニク、タマネギ、梅干し、柑橘類など

 

まとめ

漢方医学と聞くと難しいイメージですが、実際に話を聞いてみると身近に感じるものばかり。とくに「食事の延長線上にあるのが漢方。そのなかでより効能が高いものを集めたのが漢方薬」という説明には深く納得。筆者が抱えている冷えに対しても、いろんなアプローチの仕方があるんだと勉強になりました。

 

まずは日々の生活改善から。風呂上がりのキンキンに冷えたビールは封印して、温かい焼酎のお湯割りに変えてみようと思います。

 

 

ブヘサ中村固腸堂
ナカムラコチョウドウ
石川県河北郡津幡町加賀爪ヌ58-2
TEL. 076-288-3721
営業時間/9:30~18:30
定休日/月曜、祝日、第2・4日曜日
駐車場/あり
※こちらの情報は取材時点のものです。

 

 

(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)

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