金沢ゆかりの建築家、谷口親子が生み出した建築の魅力にふれる
世界的建築家SANAAの代表作「金沢21世紀美術館」や、世界で最も美しい公共図書館にも選出された「海みらい図書館」など、金沢の街中には有名建築家が設計した魅力的な建築物があふれている。
今年7月に開館した『谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館』もそのひとつ。「東京国立博物館東洋館」などの設計で知られる金沢市出身の建築家・谷口吉郎氏の住居跡に、「ニューヨーク近代美術館」などを手がけた長男で建築家の吉生氏が設計、建築した。
金沢にゆかりの深い親子2代の建築家。
谷口吉郎は「東京国立博物館東洋館」や「東宮御所(現:赤坂御所)」など、数々の設計を手がけた日本を代表する建築家。1904年に九谷焼の窯元に生まれ、高校卒業まで金沢の町で過ごしている。
「清らかな意匠」と形容される端正な建築や、明治建築を保存する「博物館明治村」の創設といった文化貢献が認められ、1973年には文化勲章も受章している。
谷口吉生はその長男。世界で最も美しい美術館をつくる建築家とも称され、これまで「ニューヨーク近代美術館の新館」や「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」など、数多くの建築を手がけてきた。金沢の「鈴木大拙館」もそのひとつ。
「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」のラウンジ。
特別展「清らかな意匠 金沢が生んだ建築家・谷口吉郎の世界」を開催中。
「建築とまちづくり」をコンセプトに建てられた『谷口吉郎・吉生記念金沢建築館』。建築や都市をテーマにした特別展によって、訪れた人が建築文化やまちづくりについて考えるきっかけにすることを目指しているそう。現在は開館記念特別展として「清らかな意匠 金沢が育んだ建築家・谷口吉郎の世界」を開催中。ここでは吉郎氏の初期から晩年までの作品の資料のほか、自身が執筆した著作物なども展示している。
特別展では、谷口吉郎の建築を自身による言葉と写真、模型で紹介する。
一番の見所は吉郎氏が設計した迎賓館赤坂離宮の和風別館「游心亭」の広間と茶室などが原寸大で再現された、水庭を望む常設展示室。海外からの賓客をもてなす47畳の広間や、能舞台を思わせる立礼形式の茶室など、当時の資料とあわせて実測も行い細部まで作り込まれている。
迎賓館赤坂離宮にある「游心亭」を再現。
谷口建築を実際に目で見て、体感してみよう。
谷口吉郎と吉生の両氏が設計した建築物は、金沢市内にも多く存在する。水面が鏡のように周りを映し出す、水鏡の庭が静寂な佇まいが印象的な「鈴木大拙館」もそのひとつ。吉生氏が設計したこの空間は、金沢が生んだ仏教哲学者・鈴木大拙の世界観が巧みに具現化されている。
谷口吉生設計の鈴木大拙館(写真提供:鈴木大拙館)
『谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館』の近くを流れる犀川の向こう岸にある「室生犀星文学碑」もそう。民俗行事の「流し雛」をモチーフにした人形の文学碑は、1964年に吉郎氏が設計した。
谷口吉郎設計の室生犀星文学碑。
このほかにも「石川県立伝統産業工芸館」や「金沢市立玉川図書館」など、これを機会にぜひ、谷口建築に触れてみてはいかがでしょう。
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館
石川県金沢市寺町5-1-18
TEL.076-247-3031
料金/一般310円、65歳以上210円、高校生以下は無料
開館時間/9:30~17:00(入館は16:30まで)
定休日/月曜日(祝日の場合は翌休)
駐車場/近隣にコインパーキングあり
※こちらの情報は取材時のものです。
(取材・文/吉岡大輔、撮影/吉田章仁)