能登の味覚満載!日本海の旬を凝縮した『おっちゃん』の海鮮寄せ鍋
能登地方に古くから伝わる「いしる」は、獲れた魚介を無駄にしないという暮らしの知恵から生まれた調味料。魚醤ならではの特有の香りはあるけど、海の食材を引き立て料理に自然な塩味と旨味を与えてくれる。料理の鉄人でおなじみ、道場六三郎氏も「香りが美味しいんだよね」なんて言ってたっけ。そんな「いしる」を隠し味に使った、奥能登フレーバー満載の寄せ鍋を金沢の街で見つけた。
まるで旅館のような立派な佇まい。
リズミカルな太鼓の音と掛け声。心が踊り、腹も鳴る
あらゆるジャンルの飲食店がひしめき合う金沢市木倉町。その一角にある『能登キリコ茶屋おっちゃん』が今回のお目当て。BGMは能登キリコ祭りのお囃子。「ヤッサー!ヤッサー!」という掛け声が、なんとも言えない独特な雰囲気を醸し出す。これから一体どんな鍋祭りが始まるんだろう。
店主の谷内建雄さんは輪島市出身。日本海で獲れた新鮮な魚介の扱いはお手の物。メニューの数は100種類以上とレパートリーも豊富だ。とくに日本海で育った天然ぶりの卵を能登の粗塩に漬け込んだ自家製カラスミが絶品。これがまた辛口の日本酒とよく合う。
暖簾をくぐるとキリコがお出迎え。
大人数にも対応可能な宴会場も完備。
いしる風味の出汁が魚介の旨味を引き立てる
金沢近江町市場で目利きした旬の魚介が6〜7種類ほど入った「海鮮寄せ鍋」。取材当日は、かわはぎ、えび、ホタテなどの魚介がイン。ここにつみれ、鶏肉、白菜、春菊、えのき、豆腐などの具材がたっぷりと加わる。「ベースとなるのはあごだしなどの魚介スープ。それを塩といしるで整えるのが僕のスタイル。あんまり入れすぎると塩っ辛くなっちゃうから」と谷内さん。あくまでいしるは風味づけ程度に使うので、生臭さは一切感じない。1人前から注文できるのも嬉しかったりする。
海鮮寄せ鍋1人前1,320円(写真は3人前)
煮立ってきたら火を止めよう。
「ぐつぐつ泡が立ったら火を弱めてください。食材が新鮮なのであんまり煮込む必要はないんです。鍋をするときは鍋奉行がいるものですから、その人にお任せするのが良いかもしれませんね」。もっぱらアク代官の筆者は、鍋奉行肯定派。だってその方が何倍も美味しくできるから。キリコを担ぐのと同じように、鍋にはチームワークが必要なのだ。
おすすめの〆は雑炊。魚介から染み出たスープをたっぷり吸った米が、口の中で踊りながらサラリと食道を通りすぎる。喉元過ぎれば熱さを忘れるというけど、この美味しさは決して忘れない。
いしるの風味がふわりと香る。
季節感満載の具材がたっぷり。
雑炊セット600円。
『能登キリコ茶屋 おっちゃん』では、このほかにもカニ鍋やブリしゃぶ、ふぐ鍋、たら鍋、あんこう鍋など、季節に応じて様々な鍋を提供。忘新年会で利用する場合は、刺身や揚げ物など計7品で構成された鍋コース(3,850円)もおすすめだ。
能登キリコ茶屋 おっちゃん
石川県金沢市片町2-7-15
TEL.076-222-0883
営業時間/11:30~13:30(L.O.)、17:30〜22:30(L.O.)
定休日/日曜、祝日
席数/160席
駐車場/近隣にコインパーキングあり
※こちらの情報は取材時のものです。
(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)