ありそうでなかったカフェバー『Owls Hoot』で本を片手にウイスキーを傾ける
「元気の源 ゴーゴーカレー」や「焼きとりの名門 秋吉」「幻の手羽先 世界の山ちゃん」のように、店名に添えられた名前を「ショルダーネーム」というらしく、サブタイトルのような役割がある「ショルダーネーム」には、店の個性が反映されているようで面白い。
金沢市の袋町に、短いながらも印象的な「ショルダーネーム」を持つ店を見つけた。
『本とウイスキー Owls Hoot』 。ありそうでなさそうな妙な組み合わせに惹かれて入店を決意。店名のアウルズフートとはフクロウのこと。
昨年4月まで「美味しい本屋さん OH LIFE」というブックカフェだったビルの一角。1年ほど閉まったままになっていた場所に今年9月、カフェ & バーがオープンした。
金沢駅からは歩いて10分ほど。店舗は、武蔵交差点「かなざわはこまち」の隣にある。
ウィスキービギナーが思い切って入店
もっぱらウイスキーといったらハイボール一択の筆者。赤提灯でハイボールグラス片手に吉高由里子よろしく「ウィー!」とやってたことはあれど、バーでロックグラスを傾けたことはない、ウィスキービギナー。それでも好奇心の赴くまま門を叩くことにした。
ウィスキーの瓶がブックスタンドのように本の隙間を埋めている本棚。料理や酒、食に関する本が並んでいた。
出迎えてくれたのは店主の中塚さん。ひとりで切り盛りしているという店舗は小ぶりで、10人ほど人が入ると満席に。店内は通りに面していて明るい。
中塚さんは、ウィスキープロフェッショナル試験の資格を持ち、歴史や製法、飲み方、ウイスキーにまつわる知識に精通した、県内でも数少ないひとり。さらに、バーテンダーとしての経験も豊富というウィスキーフリーク。
ワインでいうところのソムリエという中塚さん。ウィスキーを飲み慣れない人にも気軽に挑戦してもらいたいと店をオープンした。
店舗は小ぶりながらその品揃えは、世界の5大産地スコットランド、アイルランド、カナダ、アメリカ、日本のシングルモルトを中心に50種類以上。
飲み方はストレート、オンザロック、水割り、ハイボール、ホットウィスキーほか、スポイトで水を少しずつ加えていくウォータードロップや、ウィスキーと水を1対1で混ぜ合わせるトゥワイスアップなど、繊細な香りと味わいを楽しむための飲み方も。
また飲みやすく、フルーツとハーブを使った「漬け込みウィスキー」にカクテルなど、ライトな飲み方ができるのも新鮮。
自家製の「漬け込みウィスキー」。左から「ブラックニッカとりんご、クローブ」「ジョニーウォーカーと生姜、レモン、シナモン」「グレンフィディックとオレンジ、シナモン」一杯780円〜。
飲み方はオンザロック、ソーダ割り、ウィンターシーズンはホットウィスキーで。
本とウィスキーの意外な相性
「本とウィスキーこの2つを合わせたのは、私が本に囲まれた空間とウィスキーが好きだからなのですが、なかなか相性は良いと思います」と中塚さん。
その理由を聞くと、合点が行く気がした。
ウィスキーはアクワイアード・テイストという後天的な味覚の典型で、何度も繰り返し飲むうちにだんだんと美味しさが感じられるというもの。
コーヒーやビールもこのアクワイアード・テイストで、本とコーヒーの相性が良いように、本とウイスキーも合うという。
また、時間をかけてゆっくり飲むことで味の印象が変わって行くそうで、シングル(30ml)一杯を15〜30分かけて少しずつ味わうと香味成分が広がり、甘さや辛さ、渋さといった味わいの変化が感じられるという。
グラスを傾けている時間に本を手に取るというのは、なかなか理にかなっている。
スコッチ、アメリカン、ジャパニーズウィスキーなど世界のウィスキーをリーズナブルな価格で提供する。
バーで飲むのはハードルが高いと感じる人もきっと少なくないはず。カフェの雰囲気でハーフサイズ(15ml)であれば、挑戦もしやすい。
ただしアルコール度数が高いので、飲み方や飲みすぎにはくれぐれもご注意を。
ちなみに、全くの下戸という方もこの店を楽しむ方法はある。
ランチメニューのキーマカレーは、隠し味にウィスキーが仕込まれていてコク深い。加熱調理しているので酔うこともなく、さりげなくご飯の大盛りが無料でできるので、飲み専より食べ専という人もきっと満足できることだろう。
アウルズフート
本とウヰスキー Owls Hoot
石川県金沢市袋町4-25 ムサシサンビル1F
TEL/076-254-6238
営業時間/12:00〜23:00、金曜、土曜日12:00〜00:00
定休日/日曜日
席数/カウンター6席、テーブル4席 ※禁煙席有
駐車場/5台
※この情報は取材時のものです。
(取材・文/森内幸子、撮影/林 賢一郎)