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最後の一滴まで飲み干したくなる優しい味。『風花』の無加調ラーメン

まだ、僕が子供だった頃。ラーメンといえば醤油が基本で、あとは塩と味噌くらい。それがいつのまにかとんこつが台頭して、最近では魚介系や家系、二郎系などなど、これからもジャンルの多様化が進んでいきそうな気がします。

 

その中でも健康志向の女性や、繊細な味わいを好みとする人たちから絶大な支持を集めているのが無加調のラーメン。よく「化学調味料を使わないから、パンチが物足りないんでしょ?」みたいな意見も聞くけど、そんなわけでもなく。天然素材の旨味を凝縮したスープが、身体の芯まで優しく染み渡っていく。この感覚は自分への善行を積んだようで、一度味わうとクセになります。

 

金沢駅から徒歩5分の場所にある『風花』。

美味しさの秘訣は妥協しない素材えらび。

下町風情の香る商店街。金沢の別院通り商店街にある『風花』を訪ねました。ここは十数年前から無加調にこだわったラーメンを提供し続ける隠れた名店。ピカピカに磨かれた厨房が印象的で、夫婦が切り盛りする店内にはいつも明るい雰囲気が漂っています。

 

清潔感あふれる店内にもこだわりを感じる。

 

「うちのラーメンは和風だしの醤油味と塩味のどちらか。たまに気まぐれでカレーラーメンを出す日もあるけど、基本的にスープはこのふたつでやってます」

 

そう話すのは店主の越竹秀彦さん。某大手ラーメンチェーンの社員として外販事業に携わっていくうちに、自分自身でもラーメンを作りたいと独立。調理の経験はなかったものの「素材さえ吟味すれば、化学調味料を使わずに美味しいものが作れるのではないか」と無加調スープのラーメンづくりに挑戦し、退職してから5年後にようやく開業までこぎつけたそうです。

 

店主の越竹秀彦さん。

 

シンプルなメニュー構成。

 

「無化調のラーメンを作る上で欠かせないのが素材えらび。産地にもこだわって、実際に自分で足を運んで厳選しています。同じ材料にしても温度や時間などによっても味が変わるので、僕自身もしっかりと素材と向き合わうことを心がけています」

 

そういった経緯から素材に関して日々研究を怠らないのが越竹さんの流儀。実際に良い素材と出会うたびに、少しずつスープの味はアップデートされています。

 

一杯のスープに使われる素材は30種類以上。こちらはその一部。

優しいスープとしっとり麺のコラボ。

味の決め手となるスープについて、もっと詳しく教えてくれました。

 

「手羽先をベースに利尻昆布や6種類の節、香味野菜など、20種類の天然素材を炊いた清湯。これに金沢大野の醤油と香川小豆島の醤油に、干しえびやほたてなど10数種類の素材をブレンドした”かえし”を加えたものがスープになります」

 

味を整える塩だけでも数種類。イタリア、フランス、モンゴルなどの海外産や、能登の塩、瀬戸内産などを状況によって使い分けているそうです。

 

素材の持ち味を生かすため、鍋に入れるタイミングなどにも気を遣う。

 

麺は中太のストレート。ツルッとした喉越しが楽しめるタイプで、食感にもしなやかさがあります。「麺は粉の集合体。熟成が進むと小麦粉との塊から麺としての一体感が生まれて、しっとりとした食感となるんです」と、麺は3日ほど熟成させるそうです。

 

優しいスープの中で主張しすぎないよう麺にもこだわった。

 

チャーシューは焼いて、煮て、漬けるの3段仕込み。出汁と一緒に煮込みながら、時間をかけて柔らかく仕上げます。かなり大ぶりなので食べ応えも十分。舌の上でとろける食感もたまりません。

 

3段階で仕込むことでバランスの良い仕上がりに。

 

ここからは僕のイチオシ〈らーめんワンタン玉子〉を紹介。このワンタンが本当に美味しくて。もっちりとした皮の食感と、強めに味付けされた餡のバランスが絶妙。煮卵も黄身まで味が染みてこれまた絶品です。ちなみにワンタンには餃子の皮を使っていて、もっちりとした食感もそこから生まれているそうです。

 

らーめんワンタン玉子1,170円。

 

ワンタンのプリッとした食感がたまらない。

 

ちなみに店名は娘さんの名前が由来。どうやら風花には「晴れた日に舞う雪」という意味もあるそうで。取材当日は気温がグッと下がった立春の日。季節にぴったりの一杯でした!

 

 

らーめん風花
石川県金沢市此花町2-4
TEL. 076-264-2229
営業時間/11:00~14:00、17:00~21:00
定休日/月曜日、日曜の夜
席数/カウンター8席、テーブル8席
駐車場/近隣にコインパーキングあり
※こちらの情報は取材時点のものです。

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

 

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