石工の挑戦。濱田佳宏さんが切り開く石の新しい価値
目次
石材と聞いて思い浮かべるのは、暮石や塀垣に石碑、燈篭…。
どれも重くて大きくて、身近なものとは言い難いものばかり。
そんな石材を加工・販売する『石乃濱田』4代目である濱田佳宏さんは、暮石や塀垣といったいわゆる非日常な石材商品のほかにも、日常で手軽に使える石材商品を生み出したいと模索する若き石工(いしく)だ。
1984年富山県滑川市生まれ。高校卒業後、石材施工技能士を取得。富山県滑川市の石材加工『石乃濱田』4代目。研究熱心で、最近ではいろんな食材を網の上に乗せて炙って食べてみることがライフワークに。
濱田佳宏さん。石材製造の傍らで新商品開発にも力を注ぐ。
お酒の時間を楽しくする、炙って美味しい炙り鉢
「石の炙り鉢」はどんな商品ですか?
食卓で気軽に食材を炙って楽しめるみかげの火鉢です。炙ることで風味や香りが引き立ち、中にギュッと旨味を閉じ込めます。石の特性である 遠赤外線の効果で長時間温めることができるので、いつでも食べ頃。小型なので燃料もキャンドル1個で2時間は楽しんでもらえます。
石の炙り鉢Sサイズ。みかげ石赤、黄、黒の3色、価格は11,770円から。オンラインショップで販売中。
もう少し大きめがほしいという声からMサイズも誕生した。
新商品を作るきっかけは?
手に職を持っていてもその技術を活かす機会が少なくなってきていることもあって、普段作っている墓石などの商品とは違う分野に挑戦することは自分にとって必要不可欠なんじゃないかと考えました。そこで、空間デザイナーの桶川高明さんと大阪のデザイナーにも力を貸してもらって何か新しいものができないかと模索を始めました。最初は、石を使って器を作りたいと試作していたのですが何しろ重くて、水に濡れると乾きにくくて。3人で作戦会議をしていたとき、滑川のホタルイカをはじめ豊富な食材を炙って楽しめるものがあったら面白いねとアイデアがまとまりました。
同開発者の桶川高明さんと。
桶川さんから見た濱田さんの印象は
桶川さん:濱田さんは本当に研究熱心で、こうと決めたら突き進む力が強い方だと思いましたね。お互いわからない専門的な面があったので、設備面からどういうものが作れて、どういったものならコストがかかってしまうのか、技術面を含めて最初に徹底的に擦りあわせをしました。試作品から改良を重ねていく間のスピードはとても心強かったです。
この商品は手作りで作られているそうですね
そうですね。石を切り出すところまでは機械でできますが、なかをくりぬいたり、網をのせる溝をつけたりは手作業になります。僕一人で作っていますので最初はお待たせしてましたが、最近は数をこなせるようになってきたところです。
慎重さと大胆さが大事。フリーハンドで石を削っていく濱田さん。
これだけの道具を駆使してひとつひとつ仕上げていく。
どういった方が購入されていますか?
始めは、お酒好きのお父さんへちょっと贅沢な晩酌に使ってもらえたらと考えていたので、贈り物に使っていただく方が多いようです。最近、日本の5つ星ホテルに採用になり、宿泊者への特別なテーブル演出に使ってもらえるというのが嬉しい出来事でした。
今後の展開は?
少しずつですが「石の炙り鉢」を知ってもらえて、お客様の声もいただいています。まずはそこからこの商品をブラッシュアップしていくこと。炭を使ってバーベキューもできるようにできたらと思っています。あとは、お皿を作りたいいう最初のアイデアにリベンジ。なにかかたちにできたらと試行錯誤しているところです。
石材の新たな可能性に挑戦する濱田さん。
眼差しはまっすぐ前を見据えている。
有限会社 石乃濱田
イシノハマダ
富山県滑川市柳原60-1
TEL.076-475-7001
営業時間/8:00〜18:00
※この情報は取材時のものです。
(取材・文/森内幸子、撮影/林 賢一郎)