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スケボー歴40年のアカケン先生に聞く、失敗しないスケートボードの始め方

東京オリンピックでの日本人選手の活躍が記憶に新しい「スケートボード」

 

次々と繰り出されるトリック(技)のカッコ良さはもちろん、お互いの健闘を讃え合うスケーターの姿に「これぞオリンピック精神!」と感動したのは筆者だけではないはず。実際にスケボーの魅力にハマって新しく始める人や、子供たちにスケボーを習わせる親御さんも増えているそうです。

 

そんなわけで今回は、石川県内灘町のスケートボード場『AKAKEN PARK』にお邪魔して、初心者でも失敗しないスケートボードの始め方を聞いてみました。

 

AKAKEN PARK

北陸最大規模の屋内スケートパーク。

やってきたのは内灘町の千鳥台。のと里山海道沿い、内灘海岸のすぐ近くに『AKAKEN PARK』はあります。大型ドラッグストアを改装したパークだけあって、屋内はなかなかの広さです。

 

オリンピックでは、街中を滑るようなコースで技を繰り出す「ストリート」と、曲線状のコースで技を繰り出す「パーク」の2種目が競技されましたが、そのどちらにも対応したセクションを用意。初心者から上級者まで、それぞれのレベルに応じて楽しむことができます。

 

ちなみにこの『AKAKEN PARK』は、東京オリンピックで銅メダルを獲得した、中山楓奈選手の練習場所としても知られています。

 

スノーボードのハーフパイプに似た「ミニランプ」。高さが5段階に設定されているので、自分のレベルに合わせて滑ることができる。

 

パーク競技の花形セクションでもある「ボウル」も完備。

 

代表の赤田賢治さんはスケボー歴40年の大ベテラン。金沢市スケートボード協会の理事として、日々スケボー文化の啓蒙に力を注ぐ、熱き男でもあります。

 

『AKAKEN PARK』が誕生したのは2年前。かねてから熱望していた「スケーターが自由に滑れる場所を作りたい」という思いを実現させるため、赤田さん自らがセクションを設計。スケーター仲間とともに、セルフビルドによって北陸最大規模のスケートパークを作り上げます。

 

それではさっそく「初心者でも失敗しないスケボーの始め方」を聞いてまいりましょう!

 

AKAKEN PARK代表の赤田賢治さん

上手な人に教わるのが上達の近道。

よろしくお願いします!さっそくですが、スケボーを始めるために必要なものを教えてください。

赤田さん

まずはスケートボード。身長と足のサイズによって適合するデッキサイズが変わるので、ネットで購入する場合は注意してくださいね。

なるほど〜。デザインだけで選んじゃダメなんですね。

赤田さん

細かい技が得意な人は小さいデッキとか、スピードや高さを出したい人は大きいデッキとか、上手になってくるとスタイルによって選ぶデッキも変わってくるけど、それはまた先の話ということで。

そのほかに必要なものはありますか?

赤田さん

初心者の方はプロテクターとヘルメットがあると安心ですね。とくにお子さんは転んで痛い思いをすると「もういやだ」ってなってしまうので、長く続けるためにも必須アイテムだと思います。

でも、スケートボードだけでも1万円くらいするんですよね。貧乏性の僕としては、ちょっと悩んじゃいます。

赤田さん

そんなときはレンタルグッズを借りたり、スクールに参加してみるのもアリですよ。一通りのサイズは揃っていますから、まずは手ぶらでパークに遊びに来てみてください。

この3点セットさえあれば、いつでもどこでも始められる。

 

スクールは毎週日曜の朝9時から開催。貸し切りのパークで様々な障害物が体験できる(提供:AKAKEN PARK)

初心者がスケボーを始めるときに、心がけておいた方がいいことってありますか?

赤田さん

基礎から始めることですね。どうしてもオーリーのようなカッコいい技から入りがちだけど、基礎練習をみっちりやってから挑戦した方が上達が早いし、なにより課題をクリアしていく過程が楽しいんですよ。

基礎的な練習と言いますと?

赤田さん

足の置き方や姿勢など、まずはフォームを身につけること。たとえば頭の位置はボードの真ん中に、視線は進む方向にといった感じで、フォームがしっかりしていないと自分の思うように前や後ろに進めないんです。

実際に乗ってみると、思った以上に難しかったです。

赤田さん

自由にスケートボードを操れるようになるには経験あるのみ。とにかく板に乗って、感覚をつかむことが大事です。あとは上手な人に教わること。YouTubeのプレイ動画を見たりスクールに参加したり、上手な人に教わった方が安全だし、上達のスピードも早いんですよ。

たしかにそれは感じました。最初板に乗ったときは前に進める気がしなかったけど、コツを聞いたらなんだかいけそうな気がして。でも、初心者がいきなりパークに行って迷惑にならないか、不安だったりもするんですよね…。

赤田さん

そんな心配はいりませんよ!だれだって元々は初心者なんですから。ルールとマナーさえ守っていればだれもなにも言いません。むしろスケーターは温かい人が多いからアドバイスをくれたりもしますよ。

こんなちょっとした段差でも初心者にとっては難しい。

 

こちらがオーリー。板と一緒にジャンプするトリックの原点。

転機となったカナダでの出会い。

赤田さんは何歳くらいからスケボーを始めたんですか?

赤田さん

はじめて板に触ったのは小学一年生のとき。母親が大和の洋服売り場で働いていて、ディスプレイ用のスケートボードを持って帰ってきたんです。

小一ですか!早いですね。

赤田さん

本格的に始めたのは中学生になってから。とはいっても、周りにスケボーをやってる友達はひとりもいなくて。海外の実践ビデオを通販で取り寄せたり、袋町のレコジャンでスラッシャーマガジンの輸入版を買ったり、なんとか情報を仕入れながら練習してました。

ちょうどそのあたり80年代から90年代にかけてスケボーブームが起こるんですよね。

赤田さん

そうですね。社会人になった頃にはスケボーもだいぶ認知されていて、僕自身もサラリーマンとして働きながらスケボーを続けていました。でも、ずっと前から海外で暮らしながらスケボーがしたいという野望があって。30歳になる前の年に会社を辞めて、スケボーの修行をしにカナダに渡ったんですよ。

赤田さん

そこで出会ったのが僕の心の師匠とも言えるドナルド・ハートリー。残念ながら数年前に亡くなってしまったんですが、カナダではかなり有名なスケーターでした。

そうなんですね。

赤田さん

パークで滑っていたら、いきなり「こんにちは」って日本語で声をかけられて。そのときはそんな有名な人だとは知らなくて「ヤバいやつに絡まれたな」くらいに思ってたんですけど、どうやら奥さんが日本人らしく。ウチは広いからホームステイでもする?って誘ってくれたんです。

なんかもう映画みたいな出会いですね!

赤田さん

それから半年ほど居候させてもらって、ドナルドは色んなところに連れていってくれました。スケボーの技術だけでなく、生き方に対する視野も広がったし、なによりカナダのスケボー文化を盛り上げるために活動する姿に感銘を受けて。彼との出会いがなければ『AKAKEN PARK』は作ってなかったんじゃないかと、たまに思ったりもするんですよ。

青春時代の赤田さん。自作のミニランプに本気度がうかがえる。

壁なんてのは、越えるためにあるんだ。

そんな赤田さんにずばり!スケボーの魅力ってなんでしょう?

赤田さん

自分の限界を超えられる所ですね。何回も練習して、勇気を出して壁を超えると、その先にはまた一段高い壁がある。それをひとつひとつ乗り越えていく楽しさって言うのかな。どうしてそんな危ないことするの?って言われたりもするけど、ひとつ壁を超えたらその先に行きたくなるんですよ。

「そこに山があるから」ってやつですね。

赤田さん

あとは自由なところ。オリンピックを見ても分かったと思うけど「障害物のあるコースを用意したので、あとはお好きにどうぞ」というのがスケボーのスタイル。ルールはあってないようなもので、なにをしようがどう滑ろうが、お客さんを沸かせた人が勝ちなんですよ。

たしかにすごくシンプルだし、スポーツとしてだけでなくカルチャーやエンタメとしての魅力も感じますね。

赤田さん

そうそう。それと子供の頃から親しんでいればバランス感覚や体幹が鍛えられるし、色んな国籍や世代の人が集まる場所なのでコミュニケーション能力も身に付きます。スケボー自体がただ競い合うだけでなく、人との関わりやリスペクトを大切にするスポーツ。人間力を育てたいという理由でお子さんをスクールに通わせる方もいるくらいなんです。

最近は女性のスケーターも増えたそう。

 

こちらは数十年ぶりにスケボーを体験する筆者。見事なへっぴり腰である。

 

「スケーター同士が仲良くなって、新しいコミュニティが生まれている」とも話す赤田さん。『AKAKEN PARK』がつないだ出会いによって、これからどんどん石川県にスケボー文化が浸透していく気がします。

 

 

AKAKEN PARK
アカケンパーク
石川県河北郡内灘町千鳥台5丁目
TEL.076-254-1988
営業時間/13:00~21:00(土日祝は10:00〜)
定休日/月曜日
駐車場/あり
※こちらの情報は取材時点のものです。

 

 

(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)

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