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作り出すと止まらんがや〜。内灘スナックのママがつくる爆裂品数ランチ

とある日、友人から1通のラインが届いた。

 

「内灘にヤバイくらい品数が多いランチの店があるらしいんだけど知ってる?」

 

なぜか昔から安くてうまい店には鼻が利くあいつのこと。ここもさぞかし評判店なんだろう。しかし、食べログを調べてみてもろくに情報が載っていない。

 

これは気になるぞ。ということで、翌日の昼にさっそく内灘へ向かった。

 

 

たかがスナックのランチと侮るなかれ

訪れたのは内灘町の住宅街にある『アンバランス』という名のお店。

 

看板にはカラオケ喫茶&スナックと書かれているが、店の前には「ランチやってます」と書かれたのぼり旗が立っている。車も数台停まっているし、このお店で間違いはなさそうだ。

 

ドアを開けて中に入ると、ワンピースに身を包んだママがせかせかと片付けをしている。どうしたものかとウロウロしていると、筆者に気づいたママが優しく話しかけてくれた。

吉田ママ

昨日電話してくれた兄ちゃんやね。すぐに用意するからそこに座って待っとってね。

そう、万が一にもランチを食べ逃すわけにはいかないと、事前に予約しておいたのだ。

 

吉田他美子ママ。なんと今年で83歳!ちょっと若過ぎやしませんか?

 

ランチセットを待ちながら店の中を観察していると、ソファの下でくつろぐ猫を発見。

 

ずいぶんと慣れているのできっとママの飼い猫なのだろう。よく見るとほっぺたにうっすらと化粧もしている。

 

カウンター席の真後ろはボックス席。スナック好きにとっては落ち着く空間だ。

 

ママと一緒に暮らすナナちゃん。特技はダンス。カラオケに合わせて踊ってくれるんだとか。

 

次々と運び込まれる料理の数々

そうこうしているうちに、料理が運ばれてきた。

 

まずは前菜のサラダと小鉢のセット。それから刺身、そしてごはんと味噌汁。

 

まだまだ止まらない。

 

冷奴に南蛮漬け、そして極め付けのメインディッシュが登場。

 

合わせて12品。これにコーヒーが付いて1,200円というのだから驚きだ。

 

ランチセット1,200円。数に限りがあるので予約がおすすめ。

 

肝心の味の方も間違いなし。ごはんがすすむしっかり目の味付けで「こういうのでいいんだよ」という言葉がしっくりくる。

 

野菜中心のメニューなので栄養バランスが良く、ボリュームの割にもたれないのもポイント。となりに座っていた常連客には「ママが腰を悪くして入院した間、ランチが食べられず体調を崩してしまった」なんて話も聞いた。

 

近くにこんな店があるなんて、頼もしい限りだ。

 

飾り切りされたサラダのきゅうりに、ママの料理人としてのこだわりを感じる。

 

かならず刺身がつくというのもうれしい。手作りのしめ鯖は優しい味わい。

 

なにからなにまで自家製にこだわり

なぜ、こんなにも品数が多いのか。それはひとつのテレビ出演がきっかけだったそう。

吉田ママ

そんときがいつもよりちょっと品数が多くてね。お客さんから「あんときのランチはテレビ用なんやろ」って言われるのが嫌で、どんどん増えていってん。

仕込みは朝の6時から。ときには前日から仕込むこともある。

吉田ママ

いっつもお客さんが喜んでくれるし、うれしくなってあれもこれも作ってしまえんて。

しょう油以外はすべて自家製。そのひと手間ふた手間が、ママ自身の楽しみでありやりがいでもあるそうだ。

 

野菜中心のメニューなのでヘルシー。ひとつひとつ味付けが被らないよう工夫もされている。

 

本日のメインは白身魚のフライと、具だくさんの野菜コロッケ。自家製タルタルがたっぷり。

 

これで果たして元は取れているのか。心配になって思わず聞いてしまった。

吉田ママ

取れるわきゃねーがい。でも、捨てる神あれば拾う神ありいうて、お客さんがこの店を助けてくれるのが救いやね。みんなお米とか野菜を「これ使って」って持ってきてくれるんや。そういうのがなければやっていけんね。

ちなみにこれだけのボリュームなので、ママも食べ切れないお客さんがいるのは承知の上。そんなときはカウンターの後ろにある戸棚から容器を出して、持ち帰り用に詰めてくれる。どこまで優しいんだろう。

 

料理のレパートリーは2,000種類以上。ちなみに得意料理はタイカレー。過去にはタイの大使館で働いていたこともあるそうだ。

 

もともとコーヒーが美味しいと評判にもなったお店。ハワイアンコーヒーの甘い香りがほんのり漂う、オリジナルの味わいがクセになる。

 

お腹いっぱいになったところで、自慢のコーヒーを飲みながらママの昔話を聞く。

 

・内灘にお店をオープンしたのは35年前。それまでも尾張町や金石などでお店を経営していた。

・料理の道に入るまでは、貿易会社に勤めていた。その頃は7ヶ国語を話せた。
・じつはモデルもやっていた(スタイルが良いのも納得)
・過去に前科七犯の無銭飲食常習者を捕まえて表彰されたことがある。

 

などなど、83歳とは思えないくらい頭脳明晰でトークの切れも抜群。とても楽しい時間を過ごすことができた。

 

今後ガッツリいきたいときには、間違いなく候補に入ってくるお店。

友人にはお礼を言っておこう。やっぱりあいつは鼻が利く。

 

 

アンバランス
石川県河北郡内灘町字鶴ヶ丘4-1-12
TEL.076-286-2328
営業時間/11:00~14:00、18:00〜23:00
定休日/月曜日
駐車場/5台

※こちらの情報は取材時点のものです。

 

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

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