天然酵母パンの先駆者『アリスファームキッチン』がこだわり続けるリーンなパンづくり
リュスティックやライ麦パンなど、海外の伝統的な食事パンを金沢に広めた草分け的存在。地元のパン好きに「アリス」と聞けば、不思議の国でも鏡の国でも、谷村新司でも堀内孝雄でもなく『アリスファームキッチン』と答えてくれるはず。ホテルやレストラン御用達の店として業界からの信頼もめっぽう厚い。
南大通りを外れてすぐ。
前職はピアノの調律師。フランスの伝統パンを独自に学ぶ
店主の内藤さんはピアノの調律師からパン職人に転職した異色の経歴の持ち主。老舗「ドンク」などで修行した後、31歳で独立した。
「ふとしたきっかけでフランスの伝統的なパンへの興味が芽生えてしまって。当時はインターネットがそこまで普及していない時代。専門書を読み漁って作り方を覚えました」と内藤さん。その後もフランスやイギリスに留学するなど、人一倍の努力を重ねてきた。
店主の内藤さん。
パンの味わいに深みが増す、天然酵母と無添加のおきて
自家製酵母を使ったリーンなパンが内藤さんの真骨頂。なかでもリュスティックはお店の代名詞ともいえるパン。外はカリッと中はもちもち。天然酵母のほどよい酸味と、小麦粉の風味、さらにはナッツの香ばしさが相まって、フランスの片田舎に来たような気にさせてくれる(行ったことないけど)。
パン生地を作るときは添加物や保存料を使わず、本来のレシピを極限までそぎ落とすのが内藤流。徹底したリーンへのこだわり。シンプルイズベストを追求したパンはしっかりとした歯ごたえが特徴で、ふわふわなパンに慣れた人はひょっとすると眉をひそめるかもしれない。でも、ご心配なく。噛めば噛むほど香ばしい小麦の風味に、いつのまにか虜になっているはずだから。
リュスティック227円〜。
バゲットも美味しい。
バラエティに富んだ食パンにも注目。1960年代のレシピを元にした、毎日食べても飽きない素朴な味わい。生地はしっとり柔らかく、どこか爽やかさも感じる。イギリス食パンやハード食パン、マスカルポーネなど、5〜6種類の食パンを日替わりで提供。料理によって使い分ければ、より食事の時間が楽しくなりそうだ。
食パンは5〜6種類。
柔らかいほど良いのは布団だけ。伝統を重んじるのが内藤さんの流儀
フランスの伝統的なパンづくりを学んだ内藤さんだけあって、クロワッサンやブリオッシュなどのヴィノエワズリーの味にも定評。その一方で、英国式のスコーンにも力を入れている。
「本場イギリスのスコーンは口の中の水分が全部持っていかれる、どちらかというとビスケットに近い食感。ふわっとしたニューヨーク式のスコーンもいいけど、僕はこの粉の風味を感じる英国式のスコーンが好きなんです」と内藤さん。マーマレードとクロテッドクリームをはさんだリッチな味わい。土日限定なのでお早目に。
英国式スコーン238円。
アリスファームキッチン
石川県金沢市有松5-10-24
TEL.076-243-2625
営業時間/7:30~17:00
定休日/火曜日
駐車場/3台
※こちらの情報は取材時のものです。
(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)