エンスーな人たちが集まる『ガレージカナメ』のエンスーな日々
目次
みなさんは車で海側環状線を走っていて、この看板が気になったことはないだろうか?
エンスー道場と書いてあるけど、なにかの道場なの?そもそもエンスーってなんなの?
ということで、気になってしょうがないので、お店の門を叩いてみた。
強そうな人が出てきたらどうしよう…
(ドンドン!)頼もーー!
作業着の兄貴が出てきたぞ。
出てきたのは〈遊びの達人〉所ジョージの雰囲気を漂わせた要 勝利さん。
エンスーとは、車やバイク好きのなかでも熱心な愛好家のことと教えてくれた。彼らの旧車や輸入車はエンスー車とも呼ばれるらしい。
ここ『ガレージカナメ』には、県内外から愛好者の車が持ち込まれ、店先にはミニ、シトロエン、ランチャなど輸入車、旧車、希少車が並ぶ。
ほかでは断られてしまった車も請け負う愛好家たちの頼れる兄貴、要 勝利さんに話を伺った。
石川県珠洲市出身。スーパーカー好きの少年時代から高校を卒業後整備士に。輸入車ディーラーで腕を磨き、2008年にガレージカナメを設立。輸入車、旧車、希少車をメインに扱う。自身も7台の旧車・希少車を所有するエンスーな人。
スーパーカーに憧れた少年時代。
ここにはどういった車が集まってくるんですか?
輸入車のほか旧車だと60年代から90年代の車が多いですね。パーツがなくて他店で断られてしまったとか、長いあいだ車庫に眠ったままエンジンもかからない状態とか。廃車にするには忍びないと相談にこられます。
ひと癖もふた癖もありそうですね。
ボロボロの車は、1年くらいかけて直すこともありますよ。誰も直せなくて困っているんだけどお願いと来られると「よし、見てみようか」となりますね。
珍しいものだと部品ひとつ簡単には見つからないので、海外から取り寄せになることが多いです。どうしても入手できない場合は、ほかの部品を加工して作ることもあります。
手間も、時間もかかりますね。修理が終わった車を見て、持ち主は相当驚くんじゃないですか?
その顔を見たいがためにやっているようなものです。
要さんの修理工場。車種、年式さまざまな車が。
この日持ち込まれたフェラーリをメンテナンス。
1970年代の車が僕にとって良い車。
車好きに目覚めたのは?
10代、中学生の頃。当時はスーパーカーが爆発的に人気で、雑誌で見たり親に頼んで金沢の展示イベントにいったりしましたね。そのまま高校を卒業して、珠洲で整備士をしていたんですが、直すものといえば軽トラとかばっかり。修理は修理なんだけれど、どうせなら面白いものを触りたいと金沢で輸入車ディーラーに勤めたんです。
面白いというのはどんな車ですか?
僕にとっては1970年代。コンピューターで制御された今の車と違って作りがすごくシンプル。部品さえ手に入ればどうにでもなるところが面白い。動かなかった車のエンジンがかかった瞬間に醍醐味を感じます。
修理工場の端で一服。要さんの側にはいつも車がある。
特に思い入れがあるものは?
そうですね〜。得意なのはSAAB(サーブ)というスウェーデンの車。店には預かってもう10年になるSAABがあります。持ち主は子育てにまだ手がかかるからと一時預かりになって10年。いずれお子さんが大きくなって余裕ができたら修理して乗れるようにする予定です。
もう一台、今僕が足にしているのも1980年代のSAAB。持ち込んだ男性の父親が乗っていたんだけど、車庫に置いたまま動かなくなっていた。父親との思い出がある車を廃車にするのは忍びないっていうので、要さん乗りませんかと譲り受けたんです。修理してその男性と一緒に走らせたときは、とても喜んでもらえました。こういったお客さんがいるから、この店があるんだよね。
愛車のSAABと。
金沢市畝田の海側環状に面した店舗。
ガレージカナメ
石川県金沢市畝田中3-563
TEL.076-236-2603
営業時間/9:30~18:30
定休日/年末年始休暇、夏期休暇、GW
※この情報は取材時のものです。
(取材・文/森内幸子、撮影/吉田章仁)