品数ランチ⑲|金沢市玉鉾「食工房 三会」おまかせランチA
品数8品以上を縛りにした、よくばりランチを紹介する〈いしかわ品数ランチ〉。
今回は金沢市玉鉾にある『食工房 三会』のおまかせランチAを紹介します。
丁寧に家庭料理をこしらえる愛らしい看板女将がお出迎え
大通りから少し入ったところにある玉鉾の住宅街で、自宅を改装した隠れ家的な食事処。
料理教室や味噌作り教室を定期的に開催しながら、喫茶とランチの営業を行っています。
こちらが店を切り盛りする女将の浅野三恵子さん。料理を提供しながら快活にお客さんとのやりとりをする、とてもチャーミングな女将さんです。
以前は調理器具などをつくるメーカーでレシピ開発の仕事をしていた浅野さんですが、結婚を機に料理の仕事からは退いていたそう。その後、友人の主催する茶会の仕出しを依頼されてから人づてに広がっていき、自然と店舗を構えるようになったといいます。
お話しを聞いていると、浅野さんが何においても勉強熱心なことが分かります。御年69歳ですが、HPの作成やネット予約の管理など全て自身でされるというので驚きです。
食についても同様で、食を研究している県外の知り合いを頼って学びに行くこともあるといいます。その知識を自身の料理に活かしたり、教室で多くの人に伝えたりしているうちに、徐々に常連客が増えてきたのだとか。
ひとつの大きなテーブルを囲むようにして座る店内。時に手が空いた浅野さんも一緒に座ってお客さんとのおしゃべりを楽しみます。
常に明るく朗らかに笑う浅野さんの人柄が、温かな店の雰囲気をつくり出しているようですね。
三重県から結婚を機に移り住んだ浅野さんですが、旦那様をはじめとして加賀友禅や輪島塗、九谷焼など工芸作家の親戚が多いといいます。現在「食工房」と名付けた店ですが、店舗として使っている場所は元々友禅作家の旦那様のアトリエで、何人もの弟子と共に作品の制作を行っていたそうです。
店内には旦那様が描いた作品が飾られていたり、ご親戚のつくった作品が食事の器で使われていたりすることもあるといいます。
自宅で真似できない、絶妙な味のバランスに感服
「食工房 三会」のランチは予約制。
2種類ある中から今回はより品数の多い「おまかせランチA」を頂きました。
ランチではメインを3種類の中から選べます。今回選んだ焼き魚以外は「卯の花コロッケ」と「唐揚げ」が定番メニューです。
早速品数を数えてみましょう!
本日の品数は、9品でした。
それでは、この日のメニューを詳しくご説明。
- 煮物(大根、煮豚、ブロッコリー、生麩)
- 塩かぼちゃ
- 出汁巻き玉子
- ひじきの煮もの
- 鮭の西京味噌漬け
- 茶碗蒸し
- 玄米ご飯
- 漬物(大根の甘酢漬け、きゅうりの浅漬け、ゴボウの酢醬油漬け)
- 湯葉と手毬麩のお吸い物
という内容でした。
品数は9品ですが、品目も多いため食べ飽きることはありません。
ほんのり甘い出汁巻き玉子や塩味のあるかぼちゃ、あっさりした茶碗蒸しに濃厚な白味噌の西京漬け。同じ和食でも風味のバラエティーに富んでいて、それが絶妙にバランスよく収まっています。
奇抜さではなく、基本に忠実に、そして丁寧に作られた膳は私たち日本人の原点を思い起こさせます。
味噌作り教室も行う浅野さん。店の料理に使う味噌も全て手作りです。今回のメイン「鮭の西京味噌漬け」で使われる味噌は自身で作った白味噌を使用。麹をたっぷり使用した通常よりも甘めの白味噌を作ることで、砂糖やみりんを入れず味噌のみで西京漬けが完成するのだとか。
海老とゆり根と銀杏が入った茶碗蒸し。ホクッとした食感がたまりません。茶碗蒸しを始め、料理に使う出汁を毎日1時間以上かけて取るそうで、昆布と削りたての鰹節から出た旨みがダイレクトに感じられます。出汁の取り方のコツは料理教室で教えてもらえるそうですよ。
一つのお椀に入った煮物ですが、素材ごとに全て別々の味付けで調理しているといいます。歯ごたえのあるブロッコリーやさっぱりとした煮豚など、それぞれの素材の良さを引き出しながらまとまりのある一品は家庭ではなかなか真似できません。
靴を脱いで上がり、まるで友人の家でもてなされているような気分になる同店。浅野さんのお話しを聞きながら、美味しい料理と温かいお茶を頂いて、心が温まるひと時が味わえます。
以上、時間をかけて丁寧にこしらえられた分、じっくりと味わいたい『食工房 三会』のランチのご紹介でした。
食工房 三会
石川県金沢市玉鉾2-223
TEL. 090-2839-8390
営業時間/11:30~16:00 ※ランチは予約制。水曜、土曜は7:30〜10:30のモーニングのみ。ランチ希望の方は相談可。
定休日/日曜、祝日
席数/8席
駐車場/2台 ※満車の場合は、近所のご厚意の駐車場に案内可。
HP/食工房 三会
※こちらの情報は取材時点のものです。
(取材・文/西川李央、撮影/林 賢一郎)