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世界中のクリエイターが注目するリソグラフ印刷で“ZINE”を作ってみた

2022年末に惜しまれつつ閉店したブックカフェ「石引パブリック(通称:石パブ)」が、印刷スタジオとしてリニューアル。オンデマンド印刷とリソグラフ印刷という2つの印刷技術を駆使し、クリエイターやアーティストの創作活動を陰から支えています。

 

そんな中、土曜限定で「リソグラフでワンシートZINEをつくる会」と題した、ワークショップが開催されているとの情報をキャッチ。この機会に初めてのZINE作りに挑戦してきました!

リソグラフ印刷とは?

 

リソグラフ印刷とは「デジタル孔版印刷」 とも呼ばれる印刷技法のこと。アナログ感満載の版画のような仕上がりは、懐古厨ならずとも心をくすぐられる風合い。印刷のカスレやムラ、版ズレなんかも引っくるめて、孔版印刷にしか出せない個性に溢れています。

 

このリソグラフですが、じつは我々の割と身近なところに存在しています。というのも、プリントゴッコでお馴染みの「理想科学工業」が開発したリソグラフは、1980年に誕生するやいなや学校を舞台に大活躍。せっせと刷ること数十年。私たちが手にしてきたプリントや学級新聞のほとんどがリソグラフで印刷されていたんです。そりゃ懐かしく感じるはずだ!

 

 

現在、190以上の国や地域の教育機関、官公庁、企業などで活用されているリソグラフですが、海外のアートシーンでも注目されているとのこと。そこらへんについて、石引パブリックの店主である砂原久美子さんにお話を聞いてみました。

 

リソグラフが海外でも流行っているって本当ですか?

砂原さん

はい、本当です。ただ、日本発祥のリソグラフですが、海外での知名度の方が圧倒的に高くて。逆輸入のような形で日本でも流行り始めているといった方が正しいかもしれません。

そうなんですね。

砂原さん

欧米のアートシーンを中心に注目を集めるようになってから、今ではもうアートのジャンルとして確立されているような気がします。最近では日本でもリソグラフ専門のスタジオが増えてきました。

砂原さんはリソグラフのどんな部分に魅力を感じたんですか?

砂原さん

色ですね。とくに多色刷りの場合、一色ずつインクを重ねて印刷するので、重ね塗りのような独特の色表現ができるんです。

たしかにちょっと版ズレしてたりカスれたりしても、リソグラフならそれが味になっている気がします。

砂原さん

そうなんですよ。高精細なしっかりとした印刷はオンデマンドで、味わいのある仕上がりを求めるならリソグラフで。そんな感じで使い分けていただけたらと思っています。

そもそも砂原さんは、なぜ印刷スタジオをやろうと思ったんですか?

砂原さん

スタジオ自体はお店を開業した当時からやっていて、ブックカフェというインプットする場と対比する形で、アウトプットする場を作りたいというのが最初のきっかけでした。

なるほど。

砂原さん

何か表現したい人を支えたり背中を押すようなことがしたくて。自分で作ったものが印刷で複製されて、どこかに配られたり、誰かに見られる喜びって、紙媒体ならではだと思うんです。その中でもリソグラフは、低コストで気軽さがあるうえに、アート作品にもなる、ということが大きなポイントでした。

そういう理由があったんですね。ちなみに印刷スタジオはどんな人たちが利用されているんですか?

砂原さん

お店を経営されている方がショップカードやフライヤーを印刷したり、アーティストの方々が作品を印刷したり。初めて印刷をされる人もたくさんいます。リソグラフの風合いが好きという人は意外と多くて、個人でも名刺やZINEを作りに来られる方もいるんですよ。

石引商店街で開業したのが2016年。以来、若者のアートを創出する場として活用されている。

土曜限定でワンシートZINEをつくるワークショップも開催されているんですよね。

砂原さん

そうなんです。手軽に作れて、自分の好き放題を詰め込めるZINEは、まさに今の時代にぴったりの発信ツール。SNSのように炎上することもないし、なにより手と頭を動かして作るという楽しさもあります。

アナログ回帰ってやつですね。

砂原さん

手に取る人にとってもデジタルでは味わえない、五感を揺さぶるなにかがZINEにはあると思っています。

これからZINEを作ってみようと考えている人たちにアドバイスはありますか?

砂原さん

その時の気分で書いて、また次作るぐらいの感覚が大事。好きなこと、日々の雑文、推しへの愛、レシピ、イラスト、漫画などなど。自分が好きなものをゆる〜く、気軽に始めてみてください!

リソグラフでワンシートZINEを作ってみた

ZINEとは?
個人の趣味で作る少部数な小冊子のこと。ルーツは1930年代のアメリカで生まれたSF同人誌だと言われ、1980年代にはストリートカルチャーを中心にブームとなった。近年は日本でも人気が高まっており、個人や趣味のグループなどでZINEの制作を楽しむ人が増えている。

 

というわけで、つづいてはZINE作りに挑戦!せっかくなのでBONNOで連載している「煩悩を断ぜずして咖喱を得るなり」の総集編として、これまでの全26皿をギュッと凝縮した、金沢カレーばりの濃い味な仕上がりを目指します。そういえばカレーとジンの相性はバツグンだって、だれかが言ってたっけ(そっちのジンじゃない)。

 

 

土曜日13:00〜17:00のオープンタイムで開催されている「リソグラフでワンシートZINEを作る会」ですが、ズブの素人である筆者はなにをすれば良いのかまったく分からず。「なにから始めたら良いかわからない方には、1回目はサンプルを見ていただきながら作り方の説明をします」とホームページに記載されていたので、まずはなにを用意すれば良いのか、どんなことに注意すれば良いかを、砂原さんにイチから学びました。

 

そこで教わったのが…

 

・原稿は手書きでもデータでもOK。

・A3サイズの紙を8つ折りにするので、手書きの場合は向きに注意

・上下左右5mmずつの印刷不可域があるので、文字や絵柄がはみ出ないように

・基本的に白の紙に黒のペンで原稿を作成すること

 

ざっくりとこんな感じ。組版代は別途かかりますが、テキストだけ送っても石パブの方で組んで原稿を作成してくれるそうです。

 

 

筆者は字が汚いのと写真を使いたかったのでデータでの入稿を選択。これがまたサクッと作るつもりが、凝り性な性格が災いして、なんやかんや時間がかかってしまいました。せっかくならいいものを作りたいですからね。

 

 

作ったデータを版付けしてもらったら、ちゃんと印刷ができているか確認。ここで砂原さんの「せっかくだからデザインを加えて、2色にした方が面白いかも」というアドバイスもあって、手書きの文字を加えることに。これがどうデザインのアクセントになって仕上がるのか楽しみです。

 

 

つづいて実際に使う用紙とインクを選択。用紙は60種類以上、インクは11色から選べます。ここはカレーのZINEということで、迷わず茶色と黄色の2色をチョイス!

 

マスターとなる版を作り、インクを用紙に押し出して印刷する。孔版印刷ならではのインクの乗り方が独特の風合いを生み出している。

 

 

いよいよ印刷開始。2色刷りなので1回刷った後に版を変えて、もう1回刷ります。ちなみに印刷料ですが、2色の場合は100枚 3,300円(わらばん紙の場合)。たしかにこのくらいの値段なら気軽に作れちゃいますね。

 

 

印刷が終わったらひたすら冊子を折る地味な作業が始まります。最初は時間がかかったけど、コツを掴めば30秒ほどで一冊が完成。とはいえ100枚も一気に折るのは大変なので、ここからは家に持ち帰って折る人が多いとのこと。

 

 

そして完成したのがこちら。

 

リソグラフならではの味があって、想像していた以上にナイスな仕上がり!なにより自分の好きなものがひとつの作品になるのがうれしいですね。今まで色んな雑誌に携わってきたけど、自分だけの文章で構成された出版物は初めてかも。

SWにはリソグラフまつりの開催も決定!

 

そんなリソグラフ印刷ですが、石引パブリックでは9月17日(日)に、3スタジオ合同のイベントが開催されるそうです。

 

参加するのは石引パブリックに加えて、アムステルダムの「RISOPOP」、富山の「リソ蔵・RISOGURA」。リソグラフで印刷された物販のマーケットのほか、リソグラフを使って活動するクリエイターのトークショーも開催されます。

 

詳細はこちら

https://ishipub-printing.com/news/1403.php

 

誕生から40年の時を経て、世界中で愛され続けているリソグラフ。みなさんもこのD.I.Yなアートカルチャーを体験しに、ぜひ一度スタジオを訪れてみてください!

 


 

石引パブリック

住所:石川県金沢市石引2-8-2 [地図]
TEL:076-256-5692
営業日:ホームページにて要確認
駐車場:1台
HP:https://ishipub-printing.com/

 

撮影:林 賢一郎

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