最近のイケてる奴はみんな盆栽育ててるってほんと?金沢の文化を発信する盆栽プロジェクト
知人から「最近のイケてるメンズはみんな盆栽やってるよ」と聞いたのが少し前のこと。いや、盆栽って!波平さんやん!と思っていたのですが、そんな中SNSであるアカウントを発見しました。激渋のモダンな瓦と美しい盆栽を合わせた発信に“これか!”と。このプロジェクトにはイケてる3人が携わっているようで、話を聞きに行ってきました。
伝統美の盆栽と金沢の文化が融合。
『KANAZAWA KAWARA BONSAI』は、北陸特有の黒瓦と日本の伝統文化である盆栽を組み合わせることで、現代の暮らしにあったスタイルを提案しているプロジェクト。
屋根の端に厄除けを目的として設置される鬼瓦は、特有の技術を必要とします。その鬼瓦の技術を使って盆栽鉢や水盤といった盆器を製作し、それにあった盆栽の組み合わせを金沢ならではの盆栽として発信しています。
プロジェクトメンバーは、BONNOのHAND企画でも取り上げさせていただいた、「鬼笑」の鬼師・森山茂笑さん、以前せせらぎ通りにお店があったセレクトショップ「WHOLE」(現在はオンラインのみ)のオーナー・吉澤潤さん、2023年3月から「金澤盆栽園 葵乃屋」を営む盆栽師・木本俊也さんの3人です。
左から「鬼笑」森山茂笑さん、「WHOLE」吉澤潤さん、「金澤盆栽園 葵乃屋」木本俊也さん
プロジェクトでは、木本さんが育てた盆栽に、森山さんが作った盆器を合わせ、吉澤さんが展示などの企画や販売を担っています。
金沢は黒い釉薬をかけた屋根瓦が多く、それはこの地域特有の風景でもあります。盆器はその黒をベースに、金沢の金箔をイメージしたゴールドなども展開。盆栽はミニ盆栽や小品盆栽が中心で、暮らしへの取り入れやすさを重視しているとか。
木本さんはもちろん、森山さんや吉澤さんもプライベートで盆栽を育てているそう。そんな3人に盆栽の魅力を聞いてみました。
暮らしに取り入れたい、いろんな盆栽の楽しみ方。
それは観葉植物と少し違う部分ですね。アートと捉えると、最近の若い世代にも広がっているという話も頷けます。
木本さん
まだ多くはないですが、都会を中心に若年層の盆栽人口が増えてきていますね。あとは海外のアーティストでも盆栽好きが結構いるみたいで、その影響もあると思います。うちの盆栽園にもSNSで問い合わせがあって、海外の方が買いに来られたこともありますよ。
へぇ~!それなら「KANAZAWA KAWARA BONSAI」も“金沢の盆栽”として海外の方にも喜ばれそうですね。プロジェクト自体はどうやって始まったんですか?
森山さん
鬼瓦ってオーダーメイドの彫刻のようなものなんですが、僕はその技術を応用して今までもいろんな方とコラボをしてきました。その中で植物と瓦は相性がいいなと思っていたんです。そこに木本さんと出会ったので、ぜひ一緒に、となりました。
吉澤さん
そこから僕に企画販売の話を持ってきてくれて、「何それ、めっちゃ面白そうやん!」って(笑)。
森山さん
僕らはお互いに職人なので、販売や発信について考えることが難しくて。吉澤さんとは以前から知り合いで、センスも含めて信頼もしていたので、ぜひお願いしたいなと思ったんです。
今まではどのような活動をされていたんですか?
吉澤さん
主にポップアップの販売会や展示会を開いていましたが、小さな盆栽をつくるワークショップなども行いました。そのワークショップでハマった人が次の展示会を見に来てくれたこともありましたよ。
森山さんはいろんな方とコラボをしているとのことですが、この「KANAZAWA KAWARA BONSAI」に関してはどのようなオーダーで作品づくりをしているんですか?
森山さん
コンセプトとしてカラーは黒と金が基本ですけど、結構自由にやらせてもらってますね。こんなのがあったらいいかもね、みたいな打ち合わせはもちろんしていますが、曲線的なもの、直線的なもの、深いもの、浅いものなどバリエーションは多くつくっています。 盆栽にもいろんなサイズや形がありますし、オンラインショップでは持っている盆栽と合わせてもらうために盆器だけの販売もしているので。あとはどっしりとしたカッコ良さを保ちつつ、盆栽へのやさしさを考えて、ある程度薄めに作っています。
盆栽って、どういう人が向いてるんでしょうか?ズボラな私でも始められますかね。
木本さん
向き不向きでいうと、こまめな水やりが必要なので元々マメな人は向いているとは思います。でも盆栽を始めて、朝少し早起きをして世話をしたら心にゆとりが持てた、なんてこともあるのでそこはあまり気にせず始めるのがいいんじゃないかな。
吉澤さん
盆栽って生きているので、愛情を注ぐものなんです。例えるならペットみたいな。ペットを飼うと、散歩に行ったり餌をあげたりする時間をつくるじゃないですか。そんな感じで、盆栽が生活習慣を見直すきっかけになることもあると思うんです。
お世話をするのは朝がいいんですか?
木本さん
理想は朝ですね。朝日が当たるところが一番いい。水は乾いたらあげるというのがいいんですが、西日が苦手なので夕方はダメですね、葉っぱが焼けてしまうので。 空間の中で鑑賞する楽しみ方の人は、室内で育てながら世話をする時に外に出すと思うんですが、育てることに楽しみを見出す人は、屋外で育てる方がいいですよ。
やっぱり基本ルールみたいなことはあるんですね。特に難しいなと思うことはありますか?
木本さん
思い通りにならないことはたくさんありますよ。“ここから枝が生えてこないかな”なんて思うことはしょっちゅうです。でもやろうと思えばそれも技術でできるんですよ、接ぎ木という方法があって。
理想の形があるんですね、木は自然界のものなのに不思議な捉え方だなぁ。初心者はまずどうやって選んだらいいですかね?
吉澤さん
最初は小さすぎない方がおすすめです。ミニ盆栽は手にとりやすくて可愛いけど、鉢の容量も小さいので、結構こまめに水をあげなきゃいけないんです。そして相談できる盆栽園をつくることも大切。心配になったらすぐ相談するのが枯らさないコツです(笑)。
森山さん
自分が好きだなと直感で感じる木を選ぶのも大事だなと思います。やっぱり気に入ったものはちゃんと手入れをしたくなるので。あとは、複数個を所有するのもいいかも。気軽に1つだけ買ったのだと、おろそかにしてしまいがちなんですよ。
木本さん
個人的には手頃な値段のものを頑張って見つけてほしいです。高価な良い木を見るのも大事ですけど、安くて自分が気に入るのを見つけて“これをこうやって変えていったらこんな風になるかな?”って想像することを楽しんでほしいですね。
盆栽って老後ののほほんとした趣味、のようなイメージでしたが、話を聞けば聞くほどなんだかストイック。世話をし、手間暇かけることで愛着がどんどん膨らんでいきそうです。黒松や真柏など定番の常緑針葉樹も渋くてカッコ良いですが、実がなる樹種や紅葉する葉ものも盆栽には多くあるのだとか。そう聞くと、四季を感じられるものとして暮らしに取り入れてみるのも良いかもしれません。皆さんも、木を愛でる生活を始めてみてはいかがでしょうか。
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KANAZAWA KAWARA BONSAI
問い合わせ:https://www.instagram.com/kanazawa_bonsai/
金澤盆栽園 葵乃屋Instagram
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撮影:林 賢一郎
そもそも、盆栽ってどういう楽しみ方があるんですか?正直、どうしてもおじいちゃんの趣味という印象が強くて。
木本さん
楽しみ方のバリエーションはとても多いんです。飾ることが楽しい人、育てることが楽しい人、植物の形を変えることが楽しい人…。
自然のものなのに、形を変えることができるんですか?
木本さん
分かりやすい例で言うと、真っすぐ伸びる枝に針金を付けてグニャッと曲がるように育てたり、カッコ良く見えるように本来植わっている木を植え直したりもできます。言ってみれば人間のエゴでもあるんです。ただ、それが生きた芸術と言われるようにもなる。