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【工場見学レポート】辛くて甘い不思議な和菓子。『柴舟小出』の工場へ潜入

金沢銘菓「柴舟」を知っていますか?

パリッとした食感の煎餅菓子で、生姜蜜がたっぷり塗られたあのお菓子。蜜の甘さのなかに生姜独特の辛味がピリピリと舌を刺激し、あとを引く。

 

この全国的にも類を見ない超個性派和菓子のひとつ「柴舟」の製造行程を見てみたい!ということで今回『柴舟小出』いなほ工場へとおじゃました。

大正六年創業の「柴舟小出」

 

2011年から稼働している「柴舟小出 いなほ工場」。紅柄格子が鮮やかな直営店が隣接する。

 

戦後、「柴舟」というお菓子を金沢土産に育てたいと取り組んだのが、大正六年に創業した『柴舟小出』。

 

『小出』の柴舟は、その昔柴を積んで川を下った舟の形に模して作られ、そのビジュアルは簡素なほどシンプル。表面にうっすらと雪をまとったような繊細さを見せる。

 

手土産や贈り物に使われることが多い「柴舟」。口どけがよく上品な味わい。

一枚一枚が職人による手作業

 

工場では、この繊細な菓子に込められた職人技術を見ることができた。
まずは、小麦を原料とした生地を流し込み、機械に乗せて焼いていく。

 

生地を型に流し込んで焼く。2mmほどの薄い生地なので、焼き上がりまではおよそ3分。

 

3分すると小判形の煎餅が完成。温かいうちに上からプレスして、柴舟の反った形へと整えていく。

 

独特の形をした煎餅が完成。

 

できあがった煎餅は、次に蜜を塗る作業へ。
高知県産の生姜の絞り汁に上白糖を加えて煮詰めると、生姜砂糖蜜が完成。

機械ではできない手塗り仕上げ

 

蜜を塗っていくのは完全手作業。
自動化もできる時代でも『柴舟小出』が目指すのは、生地の厚みと生姜砂糖蜜の厚みとが同じで、口当たりが良い状態。これが一番美味しいと感じられるそう。

 

蜜を厚く塗りすぎても、薄くなりすぎても味のバランスが崩れるため、この工程は一枚一枚職人が手塗りして仕上げる。

 

湯煎にかけて熱した生姜砂糖蜜を職人が刷毛にのせ、熱さに負けず手早く塗っていく。

 

驚いたのは、その速さ。
動画で紹介できないのが大変残念なのだが、一枚当たりの時間は1〜2秒。ひと塗りで片面をムラなくカバーし、高速で塗っていく。
簡単そうに見えて技術度が高く、一人前と呼ぶまでには数年かかるというから、いかに高い技術が求められているかがわかる。

 

鬆が入ったり、かけた生地があると、この段階で弾いていくという。塗りながら品質チェックもするという離れ業。集中力がすごい。

 

つやよく仕上げられていく「柴舟」。職人ひとりで一日4千枚も塗り上げるというからびっくり。

 

完成した柴舟は、塗りムラが残っていないか人の目で検品し、包装。綺麗な状態のもののみが店頭へと並ぶ。

最後まで、作り手の丁寧な作業によって一枚一枚が生み出されている。

 

昔からある菓子で、渋いという印象があるものの、最近では若い世代のファンも増えてきているという「柴舟」。シンプルな菓子に秘められた技や思いを知ると、その印象もまた一段と変わって見える。

 

 

柴舟小出 いなほ工場店
石川県金沢市いなほ2-8
TEL.076-240-0010
営業時間/9:30~18:00
定休日/1月1日、2日
駐車場/10台

 

いなほ工場
工場見学/10名~30名(事前予約)
対応日時/9:30~11:30、13:30~16:00(工場休日不可)
料金/無料
お問い合わせTEL/076-240-0010

 

※この情報は取材時のものです。

 

(取材・文/森内幸子、撮影/林 賢一郎)

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