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アーティスト吉田公美さんが使い分けるふたつの顔

多かれ少なかれ人はだれしもが二面性を持ち、そのギャップの中で暮らしている。シリースタイルと呼ばれる奇々怪界な釣り道具を製作するルアービルダーと、音楽とアートを融合させた進化系ベリーダンサーの、ふたつの顔をもつ吉田公美さん。その活動の原点は、少女時代のルーティンにあった。

 

吉田公美(よしだくみ)
1977年金沢市生まれ。20代の頃からトンボ玉やかんざし、帯留めなどのガラス小物を作り始める。近年はステンドグラスを使った小物作品のほか、トップウォータールアーなども制作。その一方で、芸術性に優れたトライバルフュージョンスタイルのベリーダンサーとしても活動している。

 

アーティストの吉田公美さん。

 

ベリーダンスの投げ銭ライブやってます

― ベリーダンスを踊ってるときと印象が違いますよね。

 

よく言われます(笑)。ベリーの衣装に着替えてメイクをしたらスイッチが入るんですけど、普段はこんな感じで。憑依系ってやつですかね…。

 

― たしかに憑依してたかも。ベリーダンスはいつから始めたんですか?

 

30歳のときです。中学生までフィギュアスケートをやっていたこともあって、もともと音に合わせて踊るのが好きだったんです。クラブとかでもよく踊っていたし。

 

― 影響を受けたアーティストは?

 

レイチェル・ブライスです。トライバルフュージョンスタイルのベリーダンスを生み出した世界的にも有名なダンサーなんですけど、パフォーマンスがとにかくすごくて。東京の友人に勧められてブライスの映像を見たときは衝撃でした。身体能力の活かし方とか音楽へのアプローチとか、とても勉強になっています。

 

足先から指先まで体全体を使って音楽を表現する。

 

― 踊っているときは何を考えているんですか?

 

ストレッチをする感覚で踊っています。そこに流れる音楽をありのまま、身体の動きで表現したいので、あまり考えすぎるとダメなんです。

 

― となると、ダンスは即興で。

 

振り付けもするんですが、即興だとどうしても自分のクセが出てしまうので、踊りの引き出しを増やすために普段から他のダンサーの映像やライブを見て勉強しています。

 

― イベントというと、どんなところで踊ることが多いですか?

 

誘われたらどこでも。金沢の新天地にある満月喫茶というバーでは、不定期で投げ銭ライブもやっています。どんな場所でも踊るというのがちょっとしたこだわりで、狭かろうが暗かろうが、その空間にあったダンスを追求しています。それができているときは、自分の踊りと音楽が共鳴しているのが、お客さんの身体の動きや表情からも伝わってきます。

 

― 弘法は筆を選ばずってやつですね。

 

いや、できれば選びたいんですけどね(笑)

 

10月に開催された金石海岸のイベントでも即興のベリーダンスを披露した。

キモカワすぎるルアーの話

― その一方で、ルアーも作っています。

 

数年前から釣りの面白さに目覚めて、アンティークとかのちょっと変わった釣り具を集めるようになりました。そのときに出会ったのが安藤吉彦さんの作品。バスフィッシングで使われるトップウォータールアーの中でも、シリースタイルと呼ばれるルアーを製作する方で、この業界ではカリスマ的な存在なんです。

 

― すごく斬新なデザインですよね。

 

はじめて見たときは衝撃でした(笑)。こんなので釣れるのかと思ったんですけど、これが普通に釣れちゃうんです。一気に虜になってしまって。バス釣りを始める前にはもう、制作してたんじゃないかな?

 

シリースタイルのハンドメイドルアー。安藤吉彦作。

 

― ルアーって簡単に作れるものなんですか?

 

小さい頃から近所の集会所でおばあちゃんたちに混ざって手芸をしたり、20代の頃からトンボ玉やステンドグラスの制作をしたり、ものづくりをする環境はいつも身近にありました。とはいっても、ルアーづくりを教えてくれる人は周りにいないので、ほとんど独学。市販されているルアーの動きを、自分がデザインしたルアーに落とし込む。その繰り返しでした。同じデザインでも重心をどこに置くかやプロペラを付けるかどうかで、水面での動きが変わってくるんです。

 

― 具体的にどうやって作るんですか?

 

まず、原型を作るために木をルアーの形に削って、完成したらシリコンで固めて型を作ります。そこに発泡ウレタンを流し込んだものが原型。下処理して、塗装して、コーティング。最後に金具をつけます。原型からだと完成まで2週間くらい。あとはガラス制作の経験を活かしてグラスアイ(ルアーにつけるガラスの目)も作っています。じつは安藤さんのルアーにも私の目がついてるんですよ。

 

吉田さんが制作したルアーの数々。

 

― どうやってデザインしているんですか?

 

たとえば悪魔っぽいルアーを作りたいと思ったら、頭に浮かんだデザインを好き勝手にスケッチして、そこから薄さだったり大きさだったり現実的な観点から余分なものを削ぎ落としていく感じです。フロッグという蛙のような動きをするルアーがあるんですけど、その動きを活かした面白いデザインを考える。大喜利的な楽しさがあります。

 

― ルアーはどこで購入できますか?

 

ショッピングサイトで購入できます。もしくはインスタグラム(@clumsy__lure)から直接メッセージをいただければ。オーダーメイドも受け付けています!

 

とんぼ玉やステンドグラスなども制作している。

 

― ちなみにベリーダンスとルアービルドに共通するものはありますか?

 

静と動の違いはあるけど、私自身はふたつともアートだと捉えています。いくら追求しても終わりがないというか、ずっと楽しいんですよね。あとはバランスかな。ずっと座ってものづくりをしていると身体が固まってくるので、そんなときはベリーダンスを踊りながら体と脳を活性化させたり、いい感じでバランスが取れている気がします。フィギュアスケートのレッスンが終わったら、おばあちゃんたちと一緒に手芸をする。そういったルーティンが、小さい頃から体に染み付いているのかもしれませんね。

 

クールビューティーだけど意外と内面は熱いタイプ。

 

― 最後にこれだけは譲れない!というものを教えてください。

 

人生は一回きりなので、やりたいと思ったことはやるのが私のポリシー。人様に迷惑さえかけなければ好きなことをやっていいし、やらないで文句をいうのはちょっと私の価値観からするとアウトかな。これからも、色んなことに挑戦していきたいですね!

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

 

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