悪疫退散!全国一斉花火を終えて、花火師が思うこと
現在も世界各国で猛威を振るっている新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、全国各地のイベントが軒並み中止、延期を余儀なくされています。
花火大会もそのひとつ。石川県でも〈北國花火〉や〈川北まつり〉といった大きなイベントがすでに中止を発表しています。
6月1日に打ち上げられた全国一斉花火のワンシーン。
もともと花火大会は悪疫退散を祈願するために始まったといわれています。
今がまさにその時。6月1日の午後8時から5分間、新型コロナが一日も早く収束することを祈願し、全国各地で一斉に花火を打ち上げる〈Chreer up!花火プロジェクト〉が、花火業者の有志によって開催されました。
今回は、石川県から参加した『北陸火工』の窪田悠樹子さんに、一斉花火を終えた今なにを思うのか、現在の状況を交えながら聞きました。
かほく市の山間部に位置する『北陸火工』。年間8万発の花火を製造している。
取材に対応してくれた花火師の窪田悠樹子さん。製造から企画、演出、打ち上げまでを一手にこなす。
花火を見上げて笑顔になろう!
We have participated in “Cheer up hanabi Project” on June 1st, 2020.
Our fireworks were displayed in Takamatsu, Kahoku City, Ishikawa Prefecture, Japan.#cheeruphanabi #fireworks #pyro #hanabi #feuerwerk #fuegosartificiales #fuochidartificio #feuxdartifice #covid19 #stayhome pic.twitter.com/YAGD6ZMNzW— 北陸火工株式会社 (@hokurikukako) June 4, 2020
なにか苦労したことはありましたか?
窪田さん
打ち上げ場所の確保が一番大変でした。6月1日に打ち上げることが決まったのが、全国で緊急事態宣言が解除された5月25日。たった1週間で近隣の施設に承諾を得て、届出を提出しないといけません。
どこでも上げられるってわけじゃないですもんね…。
窪田さん
そうなんです。とくに今の時期は田植えが終わったばかりなので、か弱い苗を傷つける可能性のある田んぼの近くで上げることはできなくて。候補地の近くには福祉施設が建てられていたんですが「短い時間であれば」という条件付きで承諾を得て、なんとか打ち上げることができました。
5分間という制限の中、どれくらいの花火を打ち上げたんですか?
窪田さん
2号玉が50発、3号玉が15発、4号玉が10発。私たちの届出で上げられるギリギリの玉数でした。
インタビューはキープディスタンス。それより窪田さんの花火柄のマスクが素敵。
作るだけじゃない花火師の仕事
花火師のお仕事についても聞いてみたいです。具体的にどんなことをされているんですか?
窪田さん
手打ちが主流だった昔と比べて、コンピューター制御で花火を打ち上げる今の時代は仕事内容が多岐にわたっています。製造はもちろんプログラミングからデザイン、打ち上げのプロデュースまで、多くの役割を持ったスタッフが会社を支えています。
最近は女性の花火師も増えたと聞きますが、そこらへんはどうですか?
窪田さん
もともとは花火師といえば男社会でしたが、機械化されて安全性が高まったことで女性も従事しやすい仕事になりました。実際に北陸火工の従業員の半数以上を女性が占めているんですよ。
出番を待つ花火玉。打ち上げとは違い、花火の製造は機械化が難しくすべて手作りとなる。
ちょっと聞きづらいことではあるんですが、花火大会の中止が相次ぐ中で会社の状況はどのような感じですか?
窪田さん
年内の打ち上げは全てキャンセル。正直厳しい状況ですが、今回のプロジェクトに参加して、私たち自身も力をもらいました。この打ち上げがなければ、今年一年ずっと暗い気持ちでいたかもしれません。
今年の夏に花火を見ることができない分、僕としても発散できた気がします!
窪田さん
一斉花火を見た方からのエールも励みになっています。「胸がスカッとした」とか「またやって欲しい」とか。やっぱり日本人は花火が好きなんだなって、実感することもできました。また来年、たくさんの人たちに花火を届けたい。そんな思いがより強まった気がします。
いつの時代も日本人の心を勇気づけるアイテムとして愛されてきた打ち上げ花火。大変な時期だからこそ前を向いて、上を向いて。来年はそこにキレイな花火が打ち上がっていることを僕たちは切に願っています。
北陸火工
ホクリクカコウ
石川県かほく市若緑121-1
TEL.076-281-2033
※こちらの情報は取材時点のものです。
(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)
打ち上げお疲れさまでした!全国一斉花火を終えたばかり(取材当日の2日前に打ち上げ)ですが、反響はいかがですか?
窪田さん
「ありがとう」や「勇気が出た」というお声をたくさん頂いています。同じ市内にある二ツ屋病院で働く看護師さんからも「子供たちに会えないくらい忙しいけど、花火を見て元気が出ました」とメッセージを頂いて。本当にやって良かったと、涙が出ました。
なぜ〈Cheer up!花火プロジェクト〉に参加しようと思ったんですか?
窪田さん
「悪疫退散を祈願し、花火を見上げて全国の人に笑顔になってもらう」というプロジェクトのテーマに強く共感したからです。これは絶対に参加したいと即決しました。
3密を避けるため、打ち上げ場所は非公開。その代わり花火業者が打ち上げの様子を撮影して、共通のハッシュタグをつけてSNSに投稿していると聞きました。
窪田さん
世界に向けて発信するというのもプロジェクトのテーマのひとつ。私たちも会社のTwitterで打ち上げの様子を公開しています。