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あらゆる人たちがスポーツを楽しむために|DJ TOSHIKIのオトノイロ #22

「聴こえる」と「聴こえない」の垣根をエンターテインメントで結びたい!スポーツDJとして活躍するDJ TOSHIKIが、聴覚障害者への理解を深め、インクルーシブな社会実現を目指します。

 

現在、日本国内で様々なスポーツがプロ化し、人気が高まってきています。コロナ渦の影響で自由にスポーツ観戦を楽しめない期間もありましたが、最近のスポーツの会場ではコロナ前以上の盛り上がりを感じるようになりました。

 

ここまでスポーツが盛り上がっているのは、会場のエンターテイメント性が重視されるようになったことが大きな要因の一つだと思います。今、プロスポーツの大会やチームでは、観客に試合以外でも楽しんでもらうために照明や音楽の派手な演出や様々なコンテンツを取り入れる会場が多くなってきています。また、試合をより楽しんでもらうためにMCやアナウンサーなどが観客を煽るだけでなく、試合の実況やルール説明などを行うこともあり、スポーツ観戦を楽しむために必要な情報を伝えてくれています。

 

 

先日、秩父宮ラグビー場にて行われたリコーブラックラムズ東京対トヨタヴェルブリッツの試合会場では、聴覚障がい者の皆さんにラグビー観戦をより楽しんでいただくための取り組みとして、聴覚障がい者向けコミュニケーションサービス「Pekoe(ペコ)」をつかい、スタジアムMCの音声をリアルタイムで文字化し、専用サイトを通じてタブレットやスマートフォンに表示するサービスが実施されました。

 

これまでは聞こえない・聞こえにくい方がスポーツ観戦をする際、スタジアムMCやアナウンスなどの「音声情報」を得ることは難しく、試合の状況が分からないこともあって、現地で観戦するよりもテレビや配信で字幕をつけて観戦する方が多かったそうです。しかし、このサービスがあることで、現地でリアルタイムで「音声情報」を視覚で得ることができるので、聞こえる・聞こえないに関わらずスポーツ観戦を楽しむことが可能になりました。

 

【参考記事】リコーブラックラムズ東京が聴覚障がい者向けサービスを試合会場で導入。デフスポーツ体験も実施。

 

自分も会場で実際にこのサービスを利用してみたのですが、試合の状況や反則があった時、ルールの説明、選手の交代など、スタジアムMCの内容を数秒の遅れはあるものの、瞬時にスマートフォンの画面にテキストで表示されました。音声認識機能を使用しているのでたまに誤変換が発生しますが、すぐに修正されるよう工夫されていて、試合展開のスピードに遅れることなく、視覚で情報を得られるので問題なくスポーツ観戦を楽しむことができるものだと感じます。

 

一緒に観戦していた聞こえない方も「このサービスがあると無いとでは全然違う。絶対に必要」とおっしゃっています。また、このサービスは聴覚障がい者向けとして実施されていますが、それぞれのスマートフォンでテキストで表示されるので、聞こえる人にとってもルールの解説などがわかりやすいという利点も感じました。

 

 

ここまではスポーツ観戦について書いてきましたが、聞こえない・聞こえにくい方が、スポーツを実際に楽しむための取り組みも行われています。トレーニングキャンプや幅広い層を対象にした大会の実施など、様々な形でクライミングシーンを盛り上げる「THE|NUMBER」では、パラクライマーやデフクライマーも一緒に参加できる大会を開催していますが、THE|NUMBERシリーズではコンペによってルールが違うため、ルールの把握や大会スタッフとのコミュニケーションが必要になってきます。

 

聞こえない参加者とのコミュニケーションを円滑に進めるために、このコンペでは手話通訳者が会場に手配されています。手話通訳者がいることでデフクライマーもコンペのルールや試合の状況、会場内の実況や解説も把握でき、聞こえる参加者との情報交換などもしやすくなっています。また、競技会場に手話通訳者がいることで、コーチや他の選手のアドバイスなども受けられるので、聞こえない競技者の競技力向上にも繋がっています。

 

 

今回紹介したラグビー観戦やボルダリングコンペティションに共通することとして注目したいのは、サポートが必要な方が事前にサービスを依頼する訳ではなく、依頼がなくても情報保証としてサービスが用意されていることです。手話通訳者を手配するには事前の予約や依頼料など個人では負担が大きいため断念する場合もありますが、会場に情報保証がされていることで、聞こえない・聞こえにくい方も気軽にスポーツ観戦やスポーツを楽しむことができるようになります。

 

まだ、このようなサービスは一部の競技や会場でしか行われていませんが、2025年のデフリンピック東京開催を機に、聞こえない・聞こえにくい方がよりスポーツを楽しめるよう多くの会場で導入されていくことを期待しています。

 

 

サムネイル写真提供:リコーブラックラムズ東京

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