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品数ランチ⑱|金沢市山の上町「お食事barつばめ」おひつごはん定食

品数8品以上を縛りにした、よくばりランチを紹介する〈いしかわ品数ランチ〉。

 

今回は金沢市山の上町にある『お食事barつばめ』のおひつごはん定食を紹介します。

 

趣ある和風建築をリノベーション。

築90年の古民家を改装したレトロ空間で楽しむ母の味

今回ご紹介する「お食事barつばめ」のある山の上町には、「あめや坂」という名の坂があります。

この地には、山奥に隠れた母親の幽霊が乳の足りない赤子のために飴屋へ通ったとされる「飴買い幽霊」という伝説が残っていて、この坂の由来にもなっているそう。

 

「お食事barつばめ」は、そんな親子の愛情物語が伝わるこの町に相応しいお店なのです。

 

改装時にもほとんど手を加えていないという美しい庭は、夜にライトアップされるとか。

 

片町で「パブキタムラヤ」や「バーひばり」を営むオーナーの北村谷成毅さんが、何年も前から練っていたお食事バー構想。

自宅に併設した店舗で、丁寧に設えられた庭が見え、市街地の店とは異なる雰囲気を楽しめる…築90年のこの古民家は、そんな構想にぴったりの物件だったといいます。

 

夜も定食は楽しめますが、バーカウンターでしっぽりお酒を嗜むのも◎

 

昔ながらの建築を活かした高天井の店内には、お酒やおひつ、置物や器など様々なものが並んでいるのですが、その全てが不思議なくらいこの空間にマッチしていてとても落ち着きます。

店内奥にはソファ席も備えられ、子ども連れのお客様にも人気だとか。

 

仕込み中の、ズラリと並んだりんご飴。

 

また、カフェ営業もしているため、スイーツも充実。目にも美味しい華やかなケーキも数多く取り揃えていますが、中でも「ごりんのりんご飴」という屋号で販売しているりんごあめが大人気です。

 

10種類以上のフレーバーがあり、お祭りの屋台で食べるりんごあめとは一味違います。

この日の品種は青森のサンふじ。品種も時期によって変化していくそうです。

元々間借り営業という形で別の方が営業していましたが、現在は「お食事barつばめ」が生産も販売も一貫しておこなっているとのこと。

 

ちなみに、北村谷さんが営む店舗では間借り営業をしたり、曜日限定で特定スタッフの特別メニューを提供したりと、飲食業界の卵を育てる試みが数多くなされています。「お食事barつばめ」にも独立の夢を持った若いスタッフさんも働いていて、何より働いている方の雰囲気がとても良い!

 

今後もこの環境の中で様々なことを学び、北村谷さんのもとから羽ばたいていく子どもたちが多く輩出されていきそうだな、と期待に胸が膨らみます。

 

昭和レトロな落ち着く雰囲気。

 

建物や空間、若手育成への取り組みのほかに、北村谷さんが構想していたこと。それは、母・和美さんの手料理でお客様をもてなすこと。

和美さんはこれまで、料理の仕事経験こそなかったものの、北村谷さんの目からみてもセンスがあり、和美さんの料理を多くの人に味わってほしいと思っていたそう。

「話を聞いたときは、まさか本気だと思わなかったんですよ(笑)」と和美さん。

しかし、北村谷さんはいたって本気!あれよあれよとお店は完成し、気がづけば厨房に立っていたんだとか。

「今では、美味しいと言っていただけるのが嬉しくて、大変な仕込みも頑張れます」と笑います。

 

おひつごはん定食 1,600円

 

大人気のランチを和美さんにリクエストしたのは、北村谷さんの妻・恵美子さん。

「女性は細かくいろんなものを食べたいじゃないですか。そういう想いに応えたくて、こんなランチにしてみたらどうですか?と提案しました」と話します。

 

日々和美さんの料理を食べていた恵美子さんは、特に美味しかった料理を一覧にして、組み合わせやオペレーションなどを一緒に考えていったとか。

 

そんないきさつで完成した「おひつごはん定食」。早速品数を数えてみましょう!

 

 

本日の品数は、14品。

 

それでは、この日のメニューを詳しくご説明しましょう。

  1. わさび菜入りのポテトサラダ
  2. 海老豆
  3. アサリの佃煮
  4. さつまいものコロッケ
  5. 大根と牛すじの煮込み
  6. サバの味噌煮
  7. ナムル
  8. 玉子焼き
  9. 自家製の漬物
  10. タコときゅうりの酢の物
  11. れんこんときのこの炒め煮
  12. 舞茸とえのきとわかめの味噌汁
  13. おひつごはん
  14. りんごあめ(ココナッツ味)

という内容でした。

 

親しみやすいメニュー名が並びますが、丁寧に作られた家庭料理の範疇をはるかに超える味わいです。

 

一つ一つは派手ではないのですが、形や色味も考えられています。コロッケなんて、本当に手作りなのかと疑ってしまうほどの美しいフォルム。

 

お店には若いスタッフさんもたくさんいらっしゃるのですが、皆さん毎日和美さんの料理を食べて帰られるそう。毎日食べても飽きない、それこそがおふくろの味であり、多くの人が求めている味なのかもしれません。

 

 

恵美子さんが「うちのポテサラは人気があるんです」と話してくれたわさび菜入りのポテトサラダ。ほくほくゴロゴロ系というよりは少しマッシュポテトのようなトロトロ系のポテサラです。

 

わさび菜のピリリとした辛みがアクセントになる大人の味わいでした。添えられている佃煮はアサリと海老豆。大豆をサッと揚げて桜エビと炒め煮にする海老豆は、滋賀の伝統料理が元となっているのだそうです。

 

 

やわらかく煮込まれた牛すじと大根。牛すじから出た旨みを大根が吸ってしみしみになっているのが絶品です。赤巻かまぼこが入っているのが金沢らしいですね。和美さんは、自身が小さい頃に食べた母の味を思い出して作っているとのことですが、こうして家庭の中から文化は受け継がれていくのでしょうね。

 

 

このランチを食べていると、おひつごはんにしている理由がよくわかります。愛情たっぷりのご飯が進む味に、童心に帰ってついつい“おかわり!”が言いたくなる、そんな定食なのです。使っているお米は美川産のミルキークイーン。知人の農家さんから直接仕入れているそうで、甘みがありどんなおかずにもよく合うのだそうです。

 

 

最後はさっぱりと甘いりんごあめで〆。フレーバーはその日によって異なります。

 

余談ですが冒頭の「飴買い幽霊」の伝説、詳しく聞くとゾワッとする話なのです。もし母幽霊の買ったあめがこんな可愛いりんごあめだったら、もっとほっこりする伝説になるんですけどね(笑)

 

「お食事barつばめ」を訪ねて感じたのは、料理を通して広がる親子の愛や、親心のようなオーナーの心意気がつくり出すスタッフへの愛。

山の上町に伝わる親子の愛情伝説は、この店で形を変えて受け継がれているのかもしれません。

 

以上、昭和レトロな空間で、この店ならではのおふくろの味を楽しめる『お食事barつばめ』のランチのご紹介でした。

 

今年の品数ランチはこれにて食べ納め!来年もお楽しみに~

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お食事barつばめ

石川県金沢市山の上町11-1

TEL. 076-209-6161

営業時間/11:30〜17:00、18:00〜22:00(ランチの提供は14:30まで)

定休日/月曜日、木曜日

席数/18席

駐車場/軽3台、普通車5台

※小坂神社横と上野硝子店裏の2カ所。店舗前の道路は行き止まりのため車は入れません。詳細はInstagramにてご確認ください。

 

※こちらの情報は取材時点のものです。

 

(取材・文/西川李央、撮影/林 賢一郎)

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