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そして俺はラーメン屋になった『麺や 福座』がたどり着いた渾身の一杯

チャーシューにメンマに青ネギと、トッピングはこれだけ。

シンプル極まりないこの一杯に箸を入れ、濃厚な豚骨鶏ガラスープから麺を引き出すと、えもいわれぬ香りが食欲をそそりゴクッと喉が鳴る。

 

珠玉の一杯が味わえる金沢屈指の人気ラーメン店『麺や 福座』。

カウンター席のみの小ぶりな店は、この一杯を楽しみにしたお客で連日閉店ギリギリまで席が埋まります。『麺や 福座』のラーメンは、なぜこれほどまで食べ手を虜にしているのか。

その謎を解き明かそうと、店主にあれやこれやと伺ってきました。

 

2009年2月にオープンして以来、雑誌、テレビに取り上げられる人気店。

店主がラーメン店を開くまで。

店主の福座さん…ではなく、福田三智男さんは福岡県出身の九州男児。

10代の頃は料理とは全く関係のない、建築関係の仕事に就こうと思っていたそうです。夏休みのアルバイトで左官屋の仕事を見た際に職人の仕事に惹かれ、手に職をつけようと決意。選んだのは、料理人の道でした。

 

一見強面だが情に厚い店主の福田さん。取材中にもいろんな人がいろんな相談にやってきていた。趣味は、車とギターとラジコン。

 

福田:もともとは日本料理をしていたんですよ。地元に4年くらいいたかな。どんどん料理の奥を追求して行くうちに、料理人ならやっぱり関西の方へ行かないとダメなんじゃないかと思ってね。周りから猛反対されて一度は引っ込めたんだけど、2年くらい経っても行きたいという気持ちが消えなかったんで、22歳の頃京都へ出たんですよ。

 

京都では自分の未熟さを痛感したという。10年後には、どこかの店を任される料理長になりたいと目標を立て、ひたすら料理の道を邁進。31歳で京都祇園の割烹料理店で料理長になり、40歳になるまで腕利きの料理人として活躍された。

 

30代後半、京都の懐石料理店でバリバリの料理長をしていた頃。

 

あの、すみません。福田さんの話が面白くて聞き入っちゃたんですが、ここまで全くラーメンの話が出てきてません。料理人として順風満帆な福田さんがなぜラーメン屋になったんでしょう。

 

福田:そうそう。店やホテルで料理長をしたりして、40歳の頃かな。将来自分の店を出したりすることを後回しにしてきたから、この先どうしようかなと思っていた頃に、同じ九州出身の大学の先生がいてね。私が一番最初に京都で料理長をしていた時から支持してくれていた人がふと「今ラーメンがあついぞ。ラーメンでもしてみたらどうや」という話をしたんですよ。今までそんなこと思いもしなかったけど、周りを見渡すとちょうどラーメンブームでね。料理には自信があったから、試行錯誤すればどうにかなるんじゃないかと思って始めたんだけど、甘かったね〜。

 

昼営業終わりの店内。昼営業後と夜営業後の掃除は欠かさない。そのため、店内も厨房の道具も全てピカピカ。今も料理人としての心を大切にしている。

こんなに奥深いと思わなかったラーメンの世界。

福田:先生が言うからラーメンに興味もあったし、自分がやってきた料理ってコースでひとり1万円〜2万円。そうすると食べる人もある一部の人たちなんですよね。かたやラーメンは国民食で、グルメの人から子供、お年寄りまでどなたでも食べるでしょ。どこまでできるかなと思ってラーメン屋を開いたんですよ。

 

店を出すなら京都の方が勝手がわかると、2003年京都にラーメン店「福三」をオープンし、2009年には金沢へと移転。食を通してみんなの福を願う気持ちを込めて「福」の字と、料理人時代に学んだ典座坊(てんぞぼう)の気概を忘れないよう「座」の字を合わせて「福座」と命名。出身地福岡の豚骨と京都で主流の鶏ガラスープを合わせた独自のラーメンを提供するようになりました。

 

福田:最初の頃っていうのは、まったくわからないままに始めたから、もう悲惨やったよ(笑)。ラーメンはね、スープだけが美味しくてもダメ。麺だけがすばらしく美味しくてもダメ。「スープと醤油タレと麺」この3本柱がバランス良くないと美味しいと感じられない。自分のラーメンが出来上がってきたと思えたのは3年くらい経ってから。そうしたら、どんどんのめりこんでいったね。

毎日おんなじことをして仕込む。

福田:私はラーメンを麺の料理だと思いながら作っているんです。懐石でも旬のものを使うように、ラーメンを麺料理と捉えたら、季節があっていいんじゃないかと思ってね。冬なら牡蠣。牡蠣を美味しく食べて欲しいなと考えたのが季節の牡蠣ラーメン。こんな一杯があっていいかなと思うものを紹介したい。

 

メニューにはつけ麺、煮干豚骨、豚そばなど数種類あり、旬の食材を使った季節限定ラーメンも人気。色々あるなか、初見ならぜひ味わってもらいたいのが「福座ラーメン」。福田さん曰くこれまで試行錯誤してきた血と汗の結晶というべき一杯。

 

取材中、奥さんの志津子さんが「私、豚骨ラーメンは好きじゃなかったの。でもこの人の作るスープは臭みがなくて綺麗だから、食べられるようになったのよ」と教えてくれた。奥さんも太鼓判を押すスープは、豚骨をメインに鶏ガラスープをブレンド。

 

濃厚な中にも嫌な臭みをなくすため、豚骨はボイル。アクを取ってから火にかけ、15時間以上煮込みます。そうすることで濃厚かつ、すっきりとコクのあるスープに仕上がるそう。

 

かしらやヤゲンナンコツなど20kg分を寸胴に入れ、営業中はずっと火にかけてスープをとる。

 

もう一つのスープの決め手は、醤油ダレ。

醤油はその土地ごとに馴染みのある味があると考え、なるべく地元のものを使おうと金沢の醤油と京都の醤油2種類を使った特製ダレを使用。

 

豚骨と鶏ガラの味を引き立てる醤油ダレ。

 

美味しいラーメンの3本柱、最後となる麺は、ラーメンによって合う麺の細さや食感を一つ一つ試し「福座ラーメン」にはこれと、中細麺を採用しています。

 

スープがよく絡むうえ、歯切れの良さもある。

 

同じ時間に同じ分量、おんなじことを。仕込みは毎日、手を抜くことなく行われています。

うまいものができるまでとことんやろうと試行錯誤するうちラーメン作りにのめり込み、そうして完成したのが「福座ラーメン」。

 

豚の腕肉を使った自家製チャーシュー。北陸で腕肉を使うラーメン店は少ないが、京都では割とスタンダードだとか。脂身が少なく、なおかつホロホロと崩れるほど柔らかい。

何度でも食べたくなる味。

福田さんが仕上げへと取りかかります。

 

茹で時間はきっちり管理。茹で上がりの麺は、喉ごし良くつるんとした食感に。

 

最後に麺をスープにくぐらせて、具材をトッピング。

 

福座ラーメン700円(税抜)。卓上にある赤い薬味、唐辛子味噌を入れると辛味が加わり、より複雑な味わいに。

 

福田:自分のラーメンが作れなかった頃は、なんかこうカッコ悪くて。日本料理をしている連中と会うのが嫌だったね。ラーメン屋だって胸をはって言えなかったけど、最近は全然。「俺ラーメン屋やで」って言えるからね。

 

店主の人生が溶け出したような、味の奥行きと温かみを感じる一杯。

思い出すだけでお腹が空いて、もう一回と食べたくなってくる。

 

おまけ

今回の取材で昔のアルバムを見せていただきました。

驚きの写真があったので、皆さんにも見ていただきたい。

 

 

これ福田さん作の高野豆腐細工といって、高野豆腐で彫ったものらしいです。こんなことができるラーメン屋はどこを探しても福座さんだけでしょう。すごすぎる…

 

 

麺や 福座

メンヤ フクゾ

石川県金沢市有松4-1-1

TEL.076-243-2930

営業時間/11:30~14:25(L.O.)、18:00〜20:55(L.O.)、日曜祝日は17:30〜19:55(L.O.)

定休日/月曜日(不定で火曜日定休もあり)

席数/カウンター10席

駐車場/共有駐車場あり

※この情報は取材時のものです。

 

(取材・文/森内幸子、撮影/林 賢一郎)

 

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