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【石川音盤探訪】レコードジャングルの中村政利さんがセレクトする「ガツンとくる」音楽

次世代に残したい名盤を求めて、北陸の小さなレコード店やディスクショップを巡る【石川音盤探訪】。第2回目は、金沢市におけるレコードショップのパイオニア。ジャングルのごとく豊富な在庫量と、年代とジャンルを問わない幅広いセレクトに定評のある金沢市袋町の『レコードジャングル』を訪れた。

 

1983年創業の老舗。ブラックミュージックを中心に10万枚以上の音盤を取り揃えている。

レコードを聴くために図書館をハシゴしていました

 

― 中村さんが音楽にハマったのいつ頃からですか?

 

中学のときはビートルズにどっぷり。高校時代はニューロックの影響を受けてバンドなんかも組んでいました。本格的に音楽を聴くようになったのは上京してから。新宿の「ディスクユニオン」に初めて入ったときに、レコードが1枚300円とかで売られているのにびっくりしちゃって。当時は新品レコードが1枚2,500円くらい。石川県の田舎から出てきた僕からすると、世の中に中古レコードが出回っていることがカルチャーショックで、それから中古盤や輸入盤のレコードを夢中で集めるようになりました。

 

― その当時はどんな音楽を聴いていたんですか?

 

大学時代はよく図書館をハシゴしていました。というのも、当時は住んでいた文京区のどの図書館もレコードを収蔵していて、だれでも無料で借りることができたんです。そんなこんなでレコードをたくさん聴いていくうちに、自分の本当に好きな音楽はブルースであることがはっきりと見えてきて、新聞社でアルバイトをするようになってからはバイト代をすべてブラックミュージックのレコード購入につぎ込みました。とくに吉祥寺の「芽瑠璃堂」では、ブラックミュージックに対する審美眼や感性を鍛えられましたね。もちろん失敗もたくさんしたけど、このときの経験はレコードショップの店主になった今も活かされています。

 

エキセントリックなオレンジ色の建物が目印。

 

ジャンおぢの愛称で親しまれている店主の中村政利さん。北陸音盤祭の創始者でもある。

 

― なぜ、レコードショップをやろうと思ったんですか?

 

都内の出版プロダクションに就職してすぐ、新しくタウン誌を立ち上げるということで福岡に派遣されました。ある日、街ネタを探すために福岡の街を歩いていると、英語で「Home of the Beat」と書かれた看板が目に飛び込んできて。直訳すると「ビートのふるさと」。響きがいいなぁと思って中に入ってみると、背の高いおじさんが自分のコレクションを手に取りながらレコードや音楽の魅力を語っている。それまで東京のレコードショップのあり方しか知らなかったから「自分が好きなものを並べて、音楽の伝道師のようなことをしながら、しかもそれを商売として成り立たせている」というのに衝撃を受けちゃって。天神3丁目の「ジュークレコード」との出会いは本当に大きかったですね。「自分に出版の仕事は向いてるのか」と悶々としていた時期でもあったので、それが余計に響いたりもして。それから一念発起して1983年に地元の金沢で『レコードジャングル 』を開業しました。

 

北陸の音楽情報が満載の階段通路。

 

ブルースやジャズなどの音楽書にも数多く関わっている。

 

― ずばりアナログレコードの魅力とは?

 

プラスティックの円盤に刻んだ溝を、針でこすったときの振動が音になる。信号のような得体の知れないものではなく、原始的なメソッドで音が鳴る仕組みだから安心感やぬくもりを感じるんじゃないのかな。デジタルは点の情報が集まって音楽になるけど、アナログは一本の線が外側からぐるぐると中心に向かっていて、そこに辿り着くまでの紆余曲折がひとつの音楽になる。ホコリや傷があればプチプチと音が鳴るし、新品の頃はエッジの立った音だったのが磨耗していくとそれが丸くなったりする。傷や汚れも含めてレコードは一点物という考え方ですよね。さまざまな紆余曲折がありながら、ひとつの音楽が作られていくというのは、人生にも似ている気がします。

 

― これからの予定を教えてください!

 

ブラックミュージックのエキセントリックな美しさに共感してくれる人を増やしたい。そんな思いもあって、今月からレコードコンサート「ジャングルナイト」を復活させることにしました。場所は金沢竪町にある「Kaname Bar」。好きな音楽をかけて、聴いたり、語ったり、踊ったり。月イチで開催するので、ぜひ遊びに来てください。

 

中村さんが選ぶ「ガツンとくる」音楽3選

オムニバス「500 Atlantic R&B / Soul Singles」

 

ブラックミュージックの名門レーベル「アトランティック・レコード」の創立70周年を記念して制作されたシリーズもの。1964年から72年まで計10作品が発表されています。監修はブルースやソウルを専門とする音楽評論家の鈴木啓志さん。発売当時のシングル盤の原音を忠実に再現するなど、彼のこだわりが存分に詰まっています。コメントも充実しているし、本当におもしろい。鈴木さんはこの作品を編集することで、自分が本当に好きな音楽を再確認しているような気がします。ジャングルナイトを復活させたのも、この作品を聞いて「自分ももっとシングル盤を聞かなきゃ」と思ったからなんです。1巻2枚組(約50曲収録)

 

ルディ・レイ・ムーア「Hully Gully Fever」

 

1970年代に、きわどい下ネタを連発するラッパー「ドールマイト」として人気を集めたルディ・レイ・ムーア。ラップ界のゴッドファーザーとも呼ばれ、現在もスヌープ・ドッグをはじめとする現役ラッパーたちから崇拝される彼ですが、じつは1940年代の終わりから50年代にかけては鳴かず飛ばずのブルースマンでした。この作品はその時代のベスト集。「俺は歌も歌えるんだぜ」的なとんがった感じが面白いです。ちなみに現在ネットフリックスでは、コメディアン時代の彼を題材にした映画「ルディ・レイ・ムーア」も公開されています。

 

ボビー・ロビンソン「I Need Your Loving」

 

音楽プロデューサーでありソングライターのボビー・ロビンソン。彼がニューヨークのハーレムで経営していたレコード店から発生したレーベル「Fire」は、のちにヒップホップの名門「シュガーヒル」へと発展したラップ音楽の元祖のようなもの。ニューヨークのブラックミュージックを象徴するレーベルのひとつです。そういった感じでレーベルの歴史を紐解くのもレコードの醍醐味。収録されているのはコールアンドレスポンスが特徴的な「I Need Your Loving」。このようなゴスペルと直結したR&Bがのちのソウルを生み出していくことになります。

 

以上、中村さんが選ぶ「がツンとくる」音楽でした。

 

レコードジャングル
石川県金沢市袋町2-13
TEL.076-264-3672
営業時間/11:00~20:00
定休日/月曜日(祝日と振替休日の場合は営業)
取り扱い/ブラックミュージック、民族音楽、レベルミュージック、先鋭的なアングラ音楽が充実。
駐車場/2〜4台(スタッフの利用状況に応じて)
※こちらの情報は取材時のものです。

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

 

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