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【石川音盤探訪】③『Estacio Records』の川畑聡さんがセレクトする「クロスオーバー」な音楽

次世代に残したい名盤を求めて、北陸の小さなレコード店やディスクショップを巡る【石川音盤探訪】。第3回目は、金沢市鱗町の『エスタシオレコーズ』を訪ねてみました。

 

金沢本多通り沿いにある『エスタシオレコーズ』

 

ネットも店舗も外国人のお客さんがよく来ます

 

― 川畑さんがレコードを聴くようになったのはいつ頃ですか?

 

赤ん坊の頃から毎日聴いていました。というのも、うちの家は子供を寝かしつけるときに日本の昔話を収録したレコードをかける習慣があったみたいで。母親が物語が終わるたびにレコードを裏返す光景は今でも記憶に残っています。

 

実際に自分で針を落として聴くようになったのは小学生の低学年。高校生のいとこの家に遊びにいったら7インチのレコードをくれて、それを父親のプレイヤーで毎日のように聴いていました。タイトルは忘れちゃったけどディスコ系だったかな。当時は1970年代後半のディスコブーム全盛期。ジンギスカンとかABBAの曲とかをよく口ずさんでいました。

 

― 学生時代はどんな音楽を聴いていたんですか?

 

小学生のときはビートルズが好きでした。合唱コンクールで隣のクラスが歌ったイエスタデイがあまりにもカッコ良すぎて。すぐに母親にヤマチク(金沢発の老舗レコード店。2009年に閉店)に連れて行ってもらって、ビートルズベスト20というアルバムを買ってもらいました。

 

中学生になると音楽好きの友達も増えて、情報交換をするうちに聴く音楽の幅も広がっていきました。ロック、パンク、ロカビリー、オーストラリアに留学したときはクラブミュージックにもハマりました。いろんな音楽を聴くにつれて、古典的なものよりはその時代とマッチした音楽が好きになっていました。

 

店主の川畑聡さん。

 

― なぜ、レコードショップをやろうと思ったんですか?

 

30過ぎまで東京でDJや楽曲制作の仕事をしていたんですが、10代の頃から「自分はいつかレコードショップを開くんだ」と漠然と考えていました。今、お店でレコードをディスプレイしている台なんかは20歳のときに買ったもので、つねに野望は持っていたんです(笑)

 

実際に動いたのは2005年。当時はラジオの制作にも携わっていたんですが、それがもう激務につぐ激務で…。そろそろレコード屋でもやりながら自分のペースで暮らしたいと思うようになって、とりあえずウェブショップから始めたんです。

 

― 中学の同級生も金沢でレコード屋を開いているんですよね?

 

ビーチパーティーの稲垣くんと、エグザイルレコードの村田くんは兼六中学の同級生。レコードショップが10軒にも満たない金沢の街で、同級生3人がそれぞれお店をもっているなんて奇跡的ですよね。これからも刺激を受けながら切磋琢磨していきたいです。

 

ワールドミュージックの品揃えが豊富。

 

30年近く前に購入したレコードの飾り棚。

 

― 2015年に地元金沢で『エスタシオレコーズ』をオープンしました。

 

日本語オンリーのウェブショップにも関わらず、海外からの注文が多かったり、日本のお客さんも首都圏の方がほとんどで、これならどこでやっても一緒なんじゃないかと思ったんです。そうなったときに「自分自身がもっとゆっくり音楽を聴けるのはどこだろう?」と考えてみると、必然的に地元に戻るという選択になったんです。時間の流れるスピードもゆるやかに感じる。こっちで暮らしているとレコードにゆっくり針を落として、音楽を聴こうという気持ちの余裕が生まれるんです。僕にとってはいい選択だったと思います。

 

― レコードショップの店主として心がけていることは?

 

エスタシオはスペイン語で「駅」という意味。さまざまな国のレコードや音楽、人が行き交うプラットホームとして、情報交換や文化交流ができる店にしたいと思っています。

 

レコードだけでなくCDの取り扱いも幅広い。

 

視聴用のターンテーブルも用意。

 

― ずばりアナログレコードの魅力とは?

 

アナログレコードにはデジタルにはないふたつの力があると思います。まずは人を動かす力。たとえば、ある日本人のレコードをレコメンドしたとき、それが欲しいためにわざわざベルギーから何十時間もかけて、僕のお店まで足を運んでくれた人がいました。ストリームではありえないことですし、CDでもここまでする人はいないと思います。

 

もうひとつは人と人をつなぐ力です。ある日、営業中に「君が売ってるこのレコードを、俺が作ったラテンレコードのジャケット集4冊と交換してくれ」と外国人のお客さんが物々交換を要求してきました。最初は驚きましたが、それによって彼という存在と作品を知ることができました。DJ時代にはレコードをきっかけに仕事をもらうこともあったり、レコードが人と人をつなぐ力は計り知れないものがあると思います。

 

「つねに新しいものを取り入れて刺激を受けていたいので、好きなジャンルは作らないようにしている」という川畑さん。とはいえジャズとヒップホップ、ジャズとロック、ジャズと民族音楽など、ジャズとなにかが融合したクロスオーバー系のジャズが、なんだかんだ胸に刺さるとのこと。今回はそんな個人的趣向も踏まえて、2019年にもっとも売れたレコードを紹介してくれました。

 

川畑さんが選ぶ「クロスオーバー」な音楽3選

THINA/SEBA KAAPSTAD

 

ドイツ人2名、南アフリカ出身者、スワジ人で編成される多国籍なカルテット「セバ・カープスタッド」。音楽的にはネオソウルに分類されるのかな。この「THINA」は2019年の5月にリリースされたんですが、本当によく売れました。新世代ジャズにヒップホップやアフリカのエッセンスが加わったサウンドが心地が良くて、何度でもリピートできます。一曲目の途中に「令和〜」と繰り返される空耳フレーズがあるところにも、巡り合わせのようなものを感じてしまいます(笑)

 

キャット/鈴木弘

 

毎年4月の第3土曜日に「レコードストアデイ」という祭典が世界中で開催されるのですが、その限定商品として再発されたのがこの作品。モダン・ジャズからフリー・ジャズまで幅広くこなす、トローンボーン奏者の鈴木弘氏が手がける歴史的名盤です。とくに外国人の方に人気で、びっくりするくらい問い合わせがありました。ファンキーでジャジーでロックなグルーヴ感がたまりません!

 

SPACY/山下達郎etc…

 

最近はシティポップがよく売れます。人気どころは山下達郎さん。海外にも日本のシティポップに詳しい人は多くて、こっちが勉強させられることもあります。腕利きのミュージシャンがバックアップしているだけあって音がしっかりしているし、海外のAORに日本のエッセンスが加わったような、ふわっと力の抜けたサウンドもウケているんだと思います。

 

以上、川畑さんが選ぶクロスオーバーな音楽でした。

 

◯次世代に残したい名盤を求めて、北陸の小さなレコード店やディスクショップを巡る【石川音盤探訪】バックナンバーはこちら

 

ESTACIO RECORDS
エスタシオレコーズ
石川県金沢市鱗町59-1
TEL.076-299-7515
営業時間/13:00~19:00
定休日/無休
取り扱い/オールジャンル(ワールドミュージックが充実)
駐車場/近隣にコインパーキングあり
※こちらの情報は取材時のものです。

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/吉田章仁)

 

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