【まとめ】書を求め、街に出よう。北陸古本屋巡り・後編
目次
活字離れや本屋の減少が加速する一方で、本の魅力に取り憑かれた人たちが営むミニマムサイズの古本屋が増えている。たまには時間を忘れて、ワクワクドキドキな本の世界へ旅をしてみませんか?
人と人をつなぐ古本カフェ『こまつ町家文庫』[小松市]
昭和の古い町並みが残る小松市龍助町。その一角にある築80年の町家を改装した『こまつ町家文庫』では、ゆったりとしたカフェタイムを楽しみながら、書棚に収められた約5,000冊の本を自由に読むことができる。
そして、もうひとつ。ちょっと変わっているのが、これらの本と自宅の本棚に眠った本とを交換できること。
「町家を舞台に古本を交換し合って、石川県民みんなで本をシェアしようという試み。持ち込んで頂いた本をポイント化して、貯まったポイントに応じて好きな本を選べる仕組みです」と代表の金田さん。小説からビジネス書までジャンルも幅広い。
江戸時代よりイ草の生産が盛んだった小松市。築80年にのぼるこの建物も元は畳屋だったそう。
ジャンル別に並んだ蔵書。交換の際に次の人に向けてメッセージを添えれば特典も。
地域住民の交流の場としてイベントなども積極的に開催する『こまつ町家文庫』。さらには地元産の食材を使用したジャムの販売など、その取り組みは多岐にわたる。また、町家カフェとして素材にこだわったランチメニューを提供する。
小松市に息づく町家文化に、新たな息吹を呼び込んだ町家カフェ。様々な時代を経てきた古本の力を借りながら、これからもきっと新しい時代を紡いでいくに違いない。
鯉が滝を登ると龍になるという伝説を元に描かれた襖絵。藤本絢子さんの作品。
無添加の自家製ジャムをたっぷり塗った厚切りトースト。コーヒーと一緒にどうぞ。
こまつ町家文庫
石川県小松市龍助町102
TEL.0761-27-1205
営業時間/11:00~18:00
定休日/日曜、月曜、火曜日
席数/テーブル2席、座敷20席 ※全席禁煙
駐車場/なし
※この情報は取材時のものです。
純文学と猫本に囲まれたブックカフェ『NYANCAFE-BOOKS』[金沢市]
金沢の住宅街にひっそりと佇む『NYANCAFE-BOOKS』。純文学やノンフィクションを中心に、旅行、生活、演劇など、セレクトされた本は個性的なものばかりだ。お店を経営するのは愛猫家のリンダさん。壁一面の本棚に敷き詰められた約2,000冊の蔵書の中には、写真集や純文学など猫にまつわる400冊以上の本も含まれている。
形態はブックカフェ。ゆったりとした空気が流れるリビングでは、美味しいコーヒーを味わうことができる。店主が手作りする本格スイーツも人気。コーヒーは奥能登の人気焙煎所〈二三味珈琲〉の豆を使用している。
自宅の一階を改装した空間。古本の販売や買取をするほか、昭和レトロなドーナツ盤も販売する。
いたるところに飾られた猫グッズにほっこり。
古本と珈琲 NYANCAFE-BOOKS
ニャンカフェブックス
石川県金沢市石引2-23-1
TEL.076-221-3644
営業時間/10:30~19:00
定休日/月曜、火曜、不定休
席数/テーブル6席 ※全席禁煙
駐車場/2台
※この情報は取材時のものです。
絵本など子供向けの古本が4,000冊『KIZUKI BOOKS』[小松市]
絵本を中心に「親と子で学べる古本」を販売する小松市の『KIZUKI BOOKS』。中古農機具店「PIS」に併設した店内には、店主の廣瀬さん夫婦がセレクトした、農業や食、健康に関する本から子供向けの本まで約4,000冊の本が並ぶ。
なお、本の買取はもちろんトラクターやコンバイン、田植え機などの農機具の買取も行っているそうなので、倉庫に眠っている農機具があれば問い合わせてみよう。
広々としたスペースを活かし、ゆったりと並べられた古本。子供連れでも気兼ねなく手に取ることができるとお母さんの人気も高い。
絵本を中心に農業や食にまつわる古書が充実。
KIZUKI BOOKS
キヅキブックス
石川県小松市糸町3-10
TEL.0761-46-6650
営業時間/10:00~19:00(土日は12:00〜)
定休日/月曜日
駐車場/4台
※この情報は取材時のものです。
本好きによる本好きのための私設図書館『山鬼文庫』[金沢市]
築百年余りの町家に約2万冊の蔵書が収められた『山鬼文庫』。こちらは古書店ではなく私設図書館となるが、本好きならぜひとも訪れたい場所だ。
タブレット端末で気軽に本が読めるこの時代に、館長の森仁史さんが私設図書館を開いたのは「自宅に本の置き場がなかった」という簡単な理由。せっかくなら公開して本好きの溜まり場にして、ゆくゆくは様々な人種が交流する文化サロンのようになればと、私設図書館という形にしたそうだ。本の閲覧はワンドリンク制。インターネットやコピー機などPC環境も整っており、図書館としての機能も十分に果たす。
元々は料亭として使われた古い建物。浅野川のほとりにある静かな場所。
アートや芸術に関する本が所狭しと並べられている。
蔵書は美術関連を中心に、森さんの趣味である音楽や漫画にまつわるものも多い。なかには戦前の貴重な雑誌などマニア垂涎の代物も隠れている。
「紙の本の魅力はデザインや紙の質感、インクの匂いなど、五感を刺激するところ。今の時代だからこそしっかりと実物を手にして読書を楽しんで欲しいですね」と森さん。紙がの本が恋しくなったら、ぜひとも訪れてみて欲しい。
館長の森さん。美術史研究家として、これまでに数多くの著書を執筆している。
2階はアートギャラリーとして活用されている。
山鬼文庫
サンキブンコ
石川県金沢市桜町5-27
TEL.076-254-6596
開館時間/10:00~17:00
休館日/火曜~木曜日
駐車場/4台
※この情報は取材時のものです。
※こちらの記事は、2016年9月末発行の『BonNo』vol.62、2017年11月末発行の『BonNo』vol.76を再編集したものです。