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【HAND】「手がかかるほど可愛い」幻の唐辛子を後世に伝える農家の想い

石川県白山市剣崎町。田園地帯に囲まれたこの地では、その昔から「剣崎なんば」という希少性の高い唐辛子が栽培されてきた。非常に辛い激辛でありながら後味がほのかに甘くコクがあり、近年では料理人をはじめ多くの食品関係者が注目している。そんな剣崎なんばを作る生産者の下村さんに話を聞いた。

 

剣崎なんば生産者
下村正耕(しもむら・せいこう)
1946年白山市生まれ。「剣先なんば保存愛好会」会長。農家の長男として生まれ育ち、幼少の頃から農業に慣れ親しむ。2006年に長らく勤めていた県庁を退職し、剣崎なんばの生産農家となった。

 

数ヶ月かけて育てた「なんば」をわら縄で編み込んでようやく完成。手がかかるほど可愛いもんやね。

戦後間もなく生産が途絶え、幻の唐辛子ともいわれた「剣崎なんば」。下村さんは市の伝統野菜にも指定されるこの唐辛子を後世に伝えるため、300株の剣崎なんばを栽培しながら町内の農家に種と苗を配布し続けている。

 

病気や気候の変化に弱く、ほかの野菜と比べて育てにくいとされる剣崎なんば。朝夕とまめな生育状況の確認を欠かせない下村さんは「野菜も人間も手のかかるほど可愛いものです」と目を細める。

 

唐辛子といえば、料理用やはたまた魔除けとして台所や軒先に吊るされる束。収穫した剣崎なんばをわら縄で編みこむのも下村さんの仕事だ。36本18段という伝統的なリースが完成するまで十数分。黙々と編み続けるその手の動きには一切の迷いがなく、まるで手品を見ているように面白い。これも手が覚えるほど積み重ねてきた努力の賜物なのである。

 

わら縄で編まれた美しい剣崎なんば。

 

仕事中の下村さん。地域一丸となって剣崎なんばの保存に取り組んでいる。

 

剣崎なんばの苗木は寒暖に弱く、水やりにも気を遣う。一日に何度も畑を見回ることも少なくないそうだ。

 

そんな剣崎なんばは、素材を引き立てる辛さと風味によって、さまざまな食品とのコラボも実現している。そのなかでも評判なのが、剣崎なんばをチョコレートに練りこんだ「ちょこっとなんば」。想像以上に辛く、そして想像以上にチョコと唐辛子が合うのだ。強めの酒なんかと一緒にちびちびとかじりたくなる、大人の味である。

 

2018年に誕生したばかりの「道の駅めぐみ白山」などで販売中。10個入り540円。

 

※こちらの記事は、2018年8月末発行の『BonNo』vol.85を再編集したものです。増税前の記事により、価格が変動していることがございます。

 

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