保護猫の里親になるにはどうしたらいいの?「猫の輪」さんに聞いてみた。
こんにちは、ライターの吉岡です。
僕が「助六」と暮らすようになったのは3年前。保護猫の譲渡会に参加したのがきっかけでした。
飼い主のいない猫と里親になる人をつなぐ貴重な場。その譲渡会がコロナウイルスの感染拡大によって、開催できない状況が続いているそうです。
保護猫喫茶「黒猫」
猫の殺処分を減らす地域猫活動。
やってきたのは小松市にある保護猫喫茶「黒猫」。
ここでは地域猫活動とTNR活動を中心としたボランティア団体『猫の輪』のミーティングが、定期的に行われています。
TNRというのは
Trap(トラップ):捕獲する
Neuter(ニューター):不妊去勢手術をする
Return(リターン):猫を元の場所に戻す
の略で、これらを実施することで野良猫の繁殖を制限し、飼い主のいない猫に関する苦情や毎年1万匹近くの命が犠牲になっている殺処分を減らすのが最大の目的。
不妊去勢手術を施された猫は目印として耳先をVカットされるので、手術済みかどうかを一目で判断することができます。
代表のnamiさん
地域猫活動の一環として『猫の輪』では、飼い主のいない猫の里親募集も行っています。
コロナ禍で譲渡会が開催されにくくなった今、どうすれば保護猫を迎え入れることができるのか。代表のnamiさんをはじめとするスタッフの皆さんにお話をうかがいました。
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猫の輪のInstagramより
譲渡会が開催されないと、もらわれない猫が増えたりしないか心配です。
猫の輪
大丈夫ですよ!募集をかけた猫のほとんどが里親さんの元にお渡しできていますから。
それは良かったです。
猫の輪
私たちが活動を始めた10年前と比べると、保護猫に対する理解が深まっているように感じますね。
里親募集するのは、どんな猫たちが対象なんですか?
猫の輪
生まれて間もない子猫や怪我をした猫のように「外で生きていくのが難しい」と判断した場合は、捕獲後にリリースをせず里親募集をします。昨日保護したこの子たちも”しばらくしたら”募集をかけることになるんじゃないかな。
か、可愛い…。でも、どうしてすぐに募集をかけないんですか?
猫の輪
保護されるような環境にいた子猫は、今は元気でも明日どうなるか分からないのが現実。子猫を欲しいという人は多いけど、後々のことを考えると「即譲渡」するのは必ずしも正解ではないんです。
なるほど。ちなみに譲渡するまでは、誰が世話をするんですか?
猫の輪
猫の輪のスタッフもしくは預かりボランティアの方々です。
みなさん猫好きとはいえ、結構大変そうな気が…。
猫の輪
そうですね。とくに子猫は3時間おきの世話が必要なので、ある程度時間に余裕がないと難しいかもしれません。実際に預かりボランティアは専業主婦の方が圧倒的に多いんですよ。
支援物資や寄付金によってこれまで多くの猫の命が救われてきた。生まれたての子猫が離乳するまで7〜8缶(1万円相当)のミルクが必要なんだとか。
大人の野良猫は保護しないんですか?
猫の輪
私たちが目指すのは人間と地域猫の共存。住民の方たちが周りにいる地域猫を大切に見守って、共に暮らす形が理想なんです。
そうだったんですね。
猫の輪
なので「可哀想だから」という理由で野良猫を保護して、募集をかけることは絶対にしません。里親募集をするのは、あくまで地域猫活動をする中でご縁があった子になります。
野良猫を保護して回っていたら、時間もお金もかかりますもんね。
猫の輪
そうですね。ただ「保護をしたけど自分で飼うことができない」といった、気持ちのあるご相談を受けたときは、私たちのネットワークを利用して里親さんと猫をつなぐお手伝いをさせてもらうことはあります。
状況次第ということですね。
猫の輪
そうそう。あくまでボランティアなので「ペットを飼う余裕がなくなった」といった自己都合の要望までは、手に負えないんですよ。
保護猫の里親になるには?
里親募集で気になる猫がいたら、どうすればいいですか?
猫の輪
まずは記載されたアドレスに里親希望のメールを送ってください。それからアンケートに答えていただき、お見合いという流れになります。
アンケートですか?
猫の輪
家族構成や年齢、住まいなどの事前調査ですね。
年齢も関係あるんですか。
猫の輪
一人暮らしの高齢者がペットを飼う場合、様々な問題が起こる恐れがあります。できるだけ長く付き添ってくれる方にお渡ししたいというのが本音。飼い主の年齢だけでなく、いざというときの後見人がいるかを確認するのもそのためなんです。
飼育環境などの条件をクリアして、ようやくご対面となります。お見合いはどこで行われるんですか?
猫の輪
預かりボランティアの自宅か「黒猫」まで来ていただく形になります。
じつはウチの助六も『猫の輪』の卒業生なんですけど、お見合いのときに心配事を相談できて助かったんですよね。はじめての猫だったので。
猫の輪
そうだったんですね!
エサはどんなものがいいか、トイレはいくつ用意すればいいか。ネットにも情報はたくさんあるけど、実際に飼ってる方に話を聞けて良かったです。
猫の輪
そうですね。私たちもできる限り、猫たちが幸せに暮らせる方法を伝えられたらと思っています。
譲渡されたばかりの助六。まだちょっと警戒気味。
こちらは現在の助六。もはや警戒心ゼロである。
お見合いから譲渡までの流れを教えてください。
猫の輪
スタッフがご家庭までうかがって「猫を家族として迎えるための環境」であるかの最終確認を行います。里親条件を満たされた上で即日譲渡を希望する場合は、そのまま正式譲渡も可能です。
たしかに助六が来たときもそうでした。キャリーケースから出た瞬間、逃げ回って大変だったな〜。
猫の輪
預かりボランティアのもとで家猫修行を積んでいるとはいえ、猫は環境の変化に敏感な動物なんです。
「猫は人より家に懐く」とも言いますもんね。
猫の輪
そうそう、慣れるまで人間も辛抱が必要なんですよ。
逃げ回ったときの引っ掻きキズは、我が家の宝物。
猫を飼うときのリスクも考える。
コロナ禍でペット需要が増える一方で、飼育放棄などの新たな問題が浮上しています。そうならないためにも里親になる前に、どんなことを心がけておいた方がいいですか?
猫の輪
猫をペットではなく「家族」として迎え入れる気持ちがあるかどうか、じっくり考えてみてください。里親になったはいいけど、忙しくなったから猫が病気になったからと、簡単に手放す人もいます。もし、それが自分の子供だったら同じことをしますか?
しないですね。
猫の輪
病気になれば毎月の治療費が経済的な負担になるかもしれないし、コロナ禍で自分の生活環境が変化するかもしれない。それでも終生を共にする覚悟があるか。里親になる前に、自分と猫の将来のことをよく考えてあげてください。
こちらは昨年秋に保健所から引き取った白玉さん。
コロナ禍でも保護猫の里親になる方法があると聞いてひと安心。その反面、ペットブームの余波によるネグレクト(飼育放棄)が、現実に起こっていることに衝撃を受けました。
「その命を終えるまで、生涯飼い続けることができるか」
保護猫の里親になりたいと考えている方は、ぜひnamiさんの言葉を思い出してみてください。
猫の輪
石川県小松市問屋町18 黒猫
問い合わせ:nekonowahogoneko@yahoo.co.jp
里親希望:nekonowaevent@gmail.com
(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)
最近、猫の譲渡会を開催されていないそうで。
猫の輪
そうなんですよ。コロナ禍で人が集まる形での譲渡がしにくくなって。今はSNSで里親募集の告知をして、そこから縁のある方にお渡しすることがほとんどですね。