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猫御朱印にネコ祭り。無類の猫好き和尚が暮らす「浄願寺」を訪ねてみた

福井県の「御誕生寺」をはじめ、山口県の「雲林寺」や京都府の「称念寺」など、全国には“猫寺”と呼び親しまれているお寺が数多く存在しています。

 

山門でお出迎えをする猫。

境内で日向ぼっこをする猫。

塀の上から周囲を監視する猫。

 

どうしてお寺と猫って、こんなにも相性が良いのでしょうか。ニャンとも不思議なものです。

地域に愛される浄土真宗の寺院

 

訪れたのは白山市美川にある「浄願寺」。なんの変哲もない町に溶け込んだ浄土真宗のお寺なのですが、じつは数年前から猫好きが集まるお寺として知られるようになったんです。

 

猫和尚の愛称で親しまれている住職の藤塚曼(まん)さん。3匹の猫と暮らす愛猫家でもある。

 

「浄願寺」に猫好きが集まるようになったのは今から7、8年ほど前。亡くなった猫を供養する「猫参りまつり」を開いたのがきっかけでした。

藤塚さん

私も妻も猫好きで、お寺の行事にかこつけて猫雑貨を販売するお店に出店を開いてもらっていたんです。

猫雑貨ですか。

藤塚さん

身につける物だったり、飾る物だったり色々ですね。それである年の2月22日に、亡くなった猫をお参りする会を開くことになって。猫好きの方たちが集まるようになったのはそれからなんです。

それが現在も続いている「生類憐れみのお彼岸法要」ですね。

藤塚さん

そうです。猫だけじゃなくて犬や他の動物も供養して欲しいという声が大きくなって、今は3月と9月の年2回、お彼岸の時期に開催しているんです。

過去の案内(クリックで拡大)

具体的にどんなことが行われるんですか?

藤塚さん

猫グッズを販売したり、陶芸のワークショップを開いたり、名前は堅苦しいですが会自体はわりと自由気ままです。

住職はその間なにをしているんですか?

藤塚さん

法要のおつとめと法話の時間は設けますが、それ以外の時間はずっと遊んでいますね。とにかく遊びたい。ちょっと日にちをズラしているのも、そうした理由からなんです。

と言いますと?

藤塚さん

今年の秋彼岸は9月26日までですが、実際のお彼岸の時期は私も法務などで忙しいので。ゆっくりと楽しむために30日の開催となっています。

御神籤ならぬ御仏籤。中には色猫によるアドバイスと猫の箸置きが入っている。

住職自身、猫との生活は長いんですか?

藤塚さん

私がこのお寺に婿入りしてからですから、もうかれこれ40数年になりますね。

えっ、出身はどちらなんですか?

藤塚さん

生まれは青森なんです。とはいっても実家は同じ浄土真宗のお寺で、やはり地域猫が住み着いていましたから、幼い頃から猫は身近な存在でした。

そうだったんですね。ちなみに猫のどんなところが好きですか?

藤塚さん

自堕落なところです。

いつも寝てますもんね。

藤塚さん

そうそう。猫って普段何を考えていると思いますか?

えっと、なんだろう…。

藤塚さん

“食べる”ことです。

ふむふむ。

藤塚さん

えさを見つけて食べる。そして、寝る。どれくらい寝るかというと「この先3日位の間にえさを見つけないと死ぬかも」というギリギリのラインまで寝ている。食うに困らなければそれでいいんです。

シンプルですね。

藤塚さん

本当はね、犬や猫みたいに自堕落な生活を送りたいけど、私たち人間はやっぱりなにかをしていたり、考えていないといけない運命。だからこうやって、暇をしないような遊びを考えているんです。

 

そして「浄願寺」のもうひとつの特徴が、住職がデザインした猫行者の挿絵が印象的な御朱印です。

独特の書体が目を引く猫御朱印

この絵って住職が描いたんですか?

藤塚さん

お恥ずかしながら。

すごく上手ですね!もともとそういった経験があったんですか?

藤塚さん

いえ、すべて成り行きなんですよ。猫祭りをするときに来客を歓迎する猫の絵を描いてみてはどうかと、言い出しっぺの私が描くことになって。

そうなんですか。

藤塚さん

最近は陶芸にもハマっていて、物を作るのが好きなのかもしれませんね。

猫御朱印もその頃から始めたんですか?

藤塚さん

そうですね。近所の奥様方に「御朱印ブームだから作ってみたら?」なんて言われてその気になっちゃって。篆刻(てんこく)を習っていたのでハンコも彫れたので。

篆刻ってなんですか?

藤塚さん

篆刻というのは、中国が起源の印づくりのことですね。

なんだかあまり見たことのない不思議な文字ですね。

藤塚さん

これは篆書といって秦の始皇帝の頃にできた書体なんですよ。

なんか所々にニャウって書いてありますけど…。

藤塚さん

これはね、ただのダジャレではなくて、手にした人がちゃんと文字を読んで、しっかりと意味を捉えているか確かめるためでもあるんですよ。

なるほど。

藤塚さん

毎日手を合わせていても意外と気付かなかったりしますからね。遊び心半分、本気半分といった塩梅です。

実際に御朱印を書いてもらった

 

まずは、住職自らが彫った篆刻を四隅に。土台となる蓮の花も押していきます。

 

 

つづいて住職がデザインした猫行者のイラストに着手。これまで何百、何千体と描いてきたためか、筆に迷いがありません。

 

 

「集中すれば20分、口も動かせば小一時間」と、おしゃべり好きの住職。法務などで留守にしている場合があるので、電話予約してから訪問することをおすすめします。

 

 

見事な篆書で書き上げられる御朱印。猫行者が手に持つ掛け軸には、好きな言葉を書いてもらうことができます。ちなみに筆者は「猫和年豊」という住職オリジナルの猫ワードをチョイス。「猫とイチャイチャできれば一年中いつも豊か」という意味らしいです。

 

 

そんな猫愛あふれる「浄願寺」ですが、あくまで”猫好き”が集まるお寺。訪れたとて必ずしも猫と出会えるわけではないのであしからず。

 


 

浄願寺

住所:石川県白山市美川南町170 [地図]
TEL:076-278-2910
FB:真宗大谷派淨願寺

 

撮影:林 賢一郎

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