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26年目の挑戦。『山ごぼう』が暮らしの道具とカフェに転身した理由。

新緑が美しいこの時期、山に足をのばすのは少しハードルが高いですが、山の幸を食べるのは街でもできますよね。

野々市にある『山ごぼう』は、そんな気分のときに行きたくなる筆者定番のお店でした。

創業当時からのメニューである釜めしが評判となり、数年前に釜めし専門店となっていたのですが、なにやら今年の6月より大きく業態変更すると聞き、早速うかがってきました。

 

 

建物の趣ある佇まいは変わっていないようですが…

あれ、看板が新しくなっているようです。

 

 

くらしの道具に、服とカフェ?

以前までのお店のイメージではあまり想像できません…。

さっそく中に入ってみましょう。

暮らしを豊かにする素敵なものと、ひと息つける美味しいもの

 

 

扉を開けると、現れたのはたくさんの雑貨やお洋服。

現在、お店の中心として切り盛りされている西山 恵さんが、にこやかに出迎えてくれました。

 

恵さんは『釜めし 山ごぼう』のオーナーご夫妻の娘さん。

美容学校を卒業後、東京のアパレル会社で販売やマーケティングを学び、5年ほど前に家業を手伝うため石川に戻ってこられました。

こんにちは。だいぶお店の雰囲気が変わりましたね。

恵さん

そうなんです。6月から「暮らしの道具とカフェ」としてリニューアルして、お店の半分以上を物販コーナーにしました。前のお店のときから、お客様からのご要望で器の販売もしていたのですが、加えてお洋服やバッグ、アクセサリーなどのファッション小物や生活雑貨が増えたと思います。

ずっと和食のお店として営業されてきて今年で26年目。どうしてこのタイミングで業態を変えることになったんですか?

恵さん

料理を担当していた父が高齢になり、引退することになりまして。でも、どう教えてもらっても私や母に同じ味は出せなくて、それならいっそのこと好きなモノに囲まれたお店にしたいな、ということになったんです。もちろん、釜めしの味を惜しんでくださるお客様もたくさんいらっしゃったのですが、今はこの形のお店も楽しんでくださっています。商品をみながら、カフェでひと息ついておしゃべりをしたり、朝ごはんを食べて帰られた後にもう一度商品を見に来られたりする方も少なくありません。

古い臼を使ったテーブルやイスで個性あふれる空間。

 

すべてを物販にせずに、カフェを併設したのはどうしてですか?

恵さん

元々、飲食店として気に入ってくださっていたお客様が多かったのはもちろんですが、心が豊かになるものを選んで置いている物販と同じく、心が豊かになる時間を提供したかったんです。お買い物だけでももちろん大丈夫ですが、少し座ってゆっくりして、この店にいるひと時を楽しんでいただきたいと思って。

出来たての艶やかなわらび餅(715円)とアイスコーヒー(495円 ※食事や甘味を注文すると50円引き)。

 

カフェメニューでは、わらび餅が人気だとか。

恵さん

そうなんです。注文を受けてから練っているので時間はかかってしまいますが、やっぱり作り立ては格別ですよ。元々ファンの多いメニューで、以前は席数の関係でカフェとしてのご利用はできなかったんです。これからはそういったご注文もしていただけるようになりました。

 

注文を受けたら女将さんが厨房で素早く練り、氷水でじっくりと冷やしてくれる。

 

朝ごはんも始められたんですね。

恵さん

朝ごはんはするつもりがなかったんですが、やはり釜めしをお求めのお客様も多いので、それならとリニューアルオープンの直前に思いつきました。ごはんセットには、父が山で採ってきた山菜料理の小鉢がつくことも。この小鉢だけは、今でも父が作っているんですよ。パン派の方には、トーストセットもご用意しています。

 

しあわせ朝ごはん「ごはんセット」(1,000円)。数量限定で提供まで30分程かかるため事前連絡がおすすめ。

 

お米がつやつやで贅沢な朝ごはんですね!引退されたお父様の味を少しでもいただけるというのも、従来ファンとして嬉しいです。

恵さん

父は本当に山が好きで、毎日必ず山の空気を吸わないとダメなんですって。そこで食材を採ってくるので、小鉢料理は父の趣味のようなもの。せっかくなので皆さんにも味わっていただきたくて。 お時間がかかるので、事前にご連絡をいただくか、店内をじっくり見ていただきながらお待ちいただければと思います。

家族だからこその、アイデンティティが息づくセレクト

物販コーナーの商品セレクトは恵さんがされているそうですが、自然素材の商品が多いように思います。

恵さん

意識的ではないですが、山好きな父のもとで育っているので、自然のものが好きなんだと思います。植物の皮や木材を使ったもの、山奥で制作活動をされている作家さんのものもあるんです。母は元美容師で、その頃は今よりも派手な格好をしていたそうなのですが、今は父や私と似たものを好みますし、父の好みは家族全員に大きく影響していると思います。

 

山ぶどうの木の皮を使ったカゴバッグ(30,000円〜)。青森県の国産山ぶどう皮は「山ぶどう100年、母娘三代」といわれるくらい丈夫で「日本のエルメス」と呼ばれているそう。

 

奈良県の蚊帳を使った洋服(3,800円〜)。洗うほど柔らかくふわふわになるコットン素材。

 

どの商品も、お店のしつらえに馴染んでいますよね。セレクトされるときに大切にされていることはありますか?

恵さん

すべて自分が使って良いと思ったものを置くことにしています。 『山ごぼう』オリジナルのアクセサリーも木工作家さんに作っていただき、使いながら何度も作り直して納得できるものになりました。

 

作家さんとコラボしたオリジナル商品は、今後も増やしていく予定だとか。

 

オリジナル商品もあるんですか。以前から、アート関係の方に親しまれているお店だと思っていたのですが、そういったつながりも今後活かせそうですね。

恵さん

昔から、作家さんやアーティストのお客様は多くいらっしゃっていました。コロナ前は半分がそういった県外のお客様だったかもしれません。ありがたいことに親しくさせていただいている方も多くて、お店に飾るメニューを書いてもらうことも。今後、そういったつながりから新しい作家さんや素敵なブランドを知る機会もあるかもしれないですね。県内では取り扱いが少ない商品も多いので、これからもこの店らしいラインアップにしていけたらと思います。

 

県内外で活躍する、遊墨民KAZUこと森秀一さんが書いたメニュー。

 

今後は、どのような商品が増えていく予定ですか?

恵さん

古物も大好きなので、骨董を取り扱いたいと思っています。 あとは、洋服やギフト系のアイテムをもう少し増やしたいですね。今は手ぬぐいやちょっとしたベビーアイテムなども置いているのですが、気軽なプレゼントに購入される方も多いので、なるべくお客様のご要望にはお答えしたいと思っています。

 

30年以上前から代官山に店舗を構える『かまわぬ』の手ぬぐい。

 

「作家さんやブランドの魅力を少しでも伝えたい」とタグやブランドの説明はなるべく手書きで書くと話す恵さん。商品について質問をすると、わざわざ本を開いてまで丁寧に教えてくれます。

良いものや好きなものを伝えたいという想いは、引退されたお父様が作る山を愛した料理と似ている部分があるのかもしれないですね。

 

『山ごぼう』の26年目の挑戦。

カフェとしてもセレクトショップとしても、今後の展開が楽しみなお店です。

 

 

くらしの道具とカフェ 山ごぼう

石川県野々市市横宮町14-46

TEL. 076-246-5105

営業時間/8:00~19:00(カフェL.O.18:30)

定休日/月曜、火曜

席数/9席(同時入店4組まで)

駐車場/13台

※こちらの情報は取材時点のものです。

 

 

(取材・文/西川李央、撮影/林 賢一郎)

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