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全国を飛び回る気鋭の大工が生活雑貨店を開業?工事中の現場を覗いてみた

こんにちは、家づくり真っ最中のライター西川です。

 

ほとんどの人が、人生最大の買い物になるであろうマイホーム。そんな住まいづくりに欠かせないのが大工さんの存在です。筆者も新居をつくる中で大工さんにお世話になり、その細やかでスピーディーな仕事ぶりに感心してばかり。本当、職人さんってすごいなぁ~。

 

しかしながら、近年は後継者不足で若い大工さんがどんどん減ってきているという話も。様々な職業においてワークスタイルが多様化していく中で、大工さんのような職人仕事であっても、いろんな形があって然りなのかもしれません。

 

今回会いに行ってきたのは、本業の傍ら新しいことを始めようとしている27歳の大工さん。全国あちこちからの依頼を受けている中で2021年に金沢に拠点をつくり、現在暮らしにまつわるものを販売する「セイカツノミセ(※)」をオープンするために、水溜町の古民家を改装中とのこと。

 

大工さんがつくるというだけあって、なんだか今までにないお店になりそうな予感…。きっと、改装中の今こそその理由が分かるのでは!と、まだ完成前のその場所に潜入してきました。

 

※追記:ついに「セイカツノミセ」のオープンが7月7日(金)に決定しました。詳細はInstagramをご覧ください!

等身大の暮らしを見せて、売る

 

セイカツノミセをつくっているのは「合同会社生活工学研究所」という会社を立ち上げ、“暮らしの研究”をしている大木脩(おおきしゅう)さんと笠原詩緒莉(かさはらしおり)さん。大工を生業としながら設計や空間デザインなども行う大木さんと、そのサポートをしながらインテリアコーディネートを担当する笠原さんは、パートナーとして二人でこの場所に居住しながら店づくりを行っています。

 

土間玄関から続くダイニング兼打ち合わせスペースは壁を取っ払い広いワンルームに。ボードを塗装したら完成する予定

 

こんにちは!まだ改装中のところお邪魔します。新竪の裏通りにこんな場所があったんですね。外観はただの古い建物だったので気づかなかったです。かなり昔の建物ですよね?

大木さん

ここは築年数不詳の古民家なんです。昭和27年までは登記を遡れたのですが、それ以前のものがなくて。ただ、元々あった壁に昭和20年くらいの新聞記事が貼られていたので少なくとも80~100年くらいは経っているんじゃないかと思います。

改装はご自身で行っているとか。

大木さん

はい。今は8割がた出来上がっていて、あとは土壁と塗装くらい。塗装は塗装屋さんにお任せしようと思っているのですが、基本は自分で設計をして施工しています。今後も住みながらより快適な空間を目指してアップデートしていく予定です。

  

 

設計も施工もできると大工業としても重宝されるでしょうね!大木さんは大工さんとして全国から引き合いがあると伺いました。

大木さん

元々学生の頃から住んでいた関西が中心で、昨年は長野に一年間いました。出会った人づてにお仕事をいただくことが大半で、遠方からわざわざ「この案件は大木にまかせたい」と依頼をいただくのですが、やっぱりそういう案件は面白いものが多くてやりがいがあります。

なぜ、拠点を金沢に移したのですか?

大木さん

僕は元々富山の高岡出身で、金沢は割と身近な土地だったのと、自分たちが暮らす場所として都市と田舎の塩梅がちょうどいいなと思って。

2階の寝室やクローゼット。寝室の壁には断熱材を入れ、窓にカーテンをつけることでかなり温かくなったそう。ここから発酵土を塗って壁を仕上げていく

 

ここはご自宅でもあるんですよね?お店としてはどんな場所になるんでしょうか。

大木さん

今から出来上がる「セイカツノミセ」は、事務所・モデルルーム・自宅・店舗という4つの場所を兼ねています。生活工学研究所の拠点であって、僕たち二人の生活する場所であって、生活の道具を売る店なんです。

この建物の中で店舗にあたるのはどのスペースになるんですか?

大木さん

この場所が店舗のスペース、と決めているわけじゃないんです。

と言うと?

笠原さん

例えば玄関から見える棚がありますよね?あそこは食器棚でもあるんですがその中にいくつか商品を並べてみたり、2階にあるクローゼットの中に自分たちの私服と紛れて仕入れた洋服を掛けてみたり、そういった生活に入り込んだ店にしようと思っています。

商品棚にもなる予定の食器棚

 

え!じゃあ、コレは売り物だけど、コッチは私物です、みたいな感じになるんですか?

笠原さん

そうですね(笑)。建物全体を販売スペースにしてしまうと生活するのが大変そうなので、今月はキッチンで台所用品、来月はクローゼットで衣類関連など、限定した販売の仕方になると思います。

この中では、シマウマの置物が商品になる予定だとか

 

商品探し、わくわくしますね!そのモノを暮らしにどう取り入れるのかのイメージもつきやすそうです。どうしてこういう店舗をやろうと思ったんですか?

大木さん

古民家改修の案件を多くやっていると、古家具や古道具が出てくることってよくあるんです。今まではいいものだとしても場所がないからどうしても捨てることになってしまっていたので、元々はそういうものを活用したいというところから始まりました。

笠原さん

会社として建築だけでなく、インテリアにも注目したいと思ったことも理由のひとつです。大木が技術的にも建築という箱をつくれるようになったので、今度はその箱をどう活かして豊かな空間にするか、インテリアの方面から考えたいと思いました。

きれい好きだという大木さん。クローゼットはアパレルショップのように整頓されている

 

古家具や古道具がラインナップの中心になりそうですか?

大木さん

そういうものも多いですがそれだけではなく、今の等身大の自分たちが買える金額感の生活用品を仕入れて販売することも考えています。

笠原さん

あと、二人にとって憧れの作家さんの器とか。とにかく自分たちが暮らしに取り入れたいものを並べる予定です。

心地良い生活はどのようにつくられるのか

 

 

大木さんは“暮らしを研究”しているとおっしゃっていますが、それはどういった意味なんですか?

大木さん

今この家に住みながら、気温と湿度、水道光熱費のデータを常にとっているんです。ここの改装は伝統構法を多く使っているのですが、土壁を使うことによってどのくらいの快適性が生まれるのかとか、実際にデータとしてわからないので、自分たちで試しているような形です。

へえ~!

大木さん

現状エアコンはついていないんですが、建築の効果を測るものとして今後はそういった電化製品なんかもスマホと連動させて、いつ付けたのか分かるようにデータ化していきたいと思っています。

古くなっていた土壁を壊し、新たに竹と縄を格子状にした下地・竹小舞を大木さん自ら編んだそう

 

壁に塗るのは発酵土。藁を混ぜて発酵させ粘りを出すが、発酵度合いによって仕上がりの色が変化する

 

伝統的な構法の建築と、スマート家電を駆使したデータ収集ってなんだかギャップがありますね。

大木さん

僕の家づくりのやり方って、徹底的にお客さんにヒアリングをすることから始まるんです。どういう暮らしがしたいのか、今の暮らしにどういう悩みがあるのか、細かいことまでたくさん伺って。そうやって暮らしのカウンセリングをした後に、それを家でどう解決するのかを考えるんです。こうやってデータ化したものは、自信を持って提案できるしお客さんにも分かりやすいですよね。

こういう研究をしようと思ったきっかけは何だったんですか?

大木さん

元々学生時代にミニマリスト的な生活をして、シェアハウスや洗濯機共用の学生マンションなどいろんな場所に住んだんです。人の家に居候したりとか。そうやって暮らし方を模索していく中で建築に興味を持って、ひょんなことから手伝った大工さんの仕事を見て、自分もこういうものづくりがしたいと思いました。

ふむふむ。

大木さん

だからこの研究は、どういう暮らしが心地いいのか、とずっと自分が模索し続けていたことの延長なんです。もちろんお客さんに合った建築の提案ができるようになるし、仕事をする上でも良いことなんですが、どちらかというと自分が生きていく上での問いなのかなと思います。

船などをつくるFRPという素材で自作したバスタブ

 

構造上、予定外に変形した天井になったという寝室。しかし、結果的にそれが落ち着きと断熱性を生んだそう

 

自分の暮らしと仕事が密接につながっているんですね。じゃあ、今の暮らしがベストですか?

大木さん

ん~分からないですね。というのも、お客さんにヒアリングをして暮らしをつくっていくことって、自分の暮らしに取り入れるヒントを見つけている感覚なんですよ。自分一人だけではなく、他の人の価値観を取り入れて自分の暮らしをアップデートさせているというか。

仕事をすればするほど、これからお二人の生活もどんどん心地よくなっていくかもしれないですね!

大木さん

そうだといいなと思います。ここはその暮らしを見てもらえる場所なので、お店が出来上がったらぜひまた遊びに来てください。ちなみに実は構想として、この場所も10年したら出たいなと思っているんですよ。

そうなんですか?!

大木さん

はい。年齢や時代、収入など様々な要素で暮らしの快適性って変わっていくものだと思うので。

暮らしの研究はまだまだ終わらないということですね~。

大木さん

そうですね。自分もお客さんの暮らしもより快適なものにしていけたらなと思います。

 

「セイカツノミセ」のオープンはまだ未定とのこと。今後の進捗はインスタグラムで発信されるそうなので要チェックです。

 

多様化する社会の中で、自分最大のテリトリーである住居を如何に心地よくするか。多くの人が考えるこの問いに、家づくりという暮らしを紐解く方法で少しずつ答えを見出そうとする大木さん。そんな大木さんの新しい挑戦が金沢でもうすぐ見られることを嬉しく思います。

 

 

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セイカツノミセ ※現在オープン準備中

住所/石川県金沢市水溜町30

営業時間/未定

定休日/未定

駐車場/なし

Instagram:@seikatsunomise

公式HP:https://inst-led.co.jp/

 

※こちらの情報は取材時点のものです。

 

(撮影/林 賢一郎)

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