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パンはパンでも食べられないパンをつくるRicoPanさんの「おいしそう」なものづくりの世界

京都で生まれ、現在は金沢で活動をするRicoPanさん。革小物の服飾雑貨づくりに、ロゴやテキスタイルのデザイン、イラスト制作などその活動は多岐にわたります。活動名にもある通り、彼女の制作するものにはパンにまつわるものがたくさんあり、どれも口に入れてみたくなってしまうほどおいしそう。今回はそんなRicoPanさんのものづくりの世界を覗いてみましょう!

 

 

こんにちは、おいしいものも、おいしそうなものも大好きなライターの西川です。

 

今日はコレを作っている人を紹介します!

 

 

見るからにほわほわ、ふかふか、香ばしいニオイがふわっと・・・・・・

 

しなーい!!!

 

それもそのはず。なぜならばこの美味しそうなパンたち、実はこんな可愛いお洒落アイテムなのです。

 

パンの形を施したレザーバッグとパンのブローチ。

 

これらを作っているのは、金沢で作家活動を行うRicoPanさん。布と革に染色をしてバッグやブローチなどを制作しています。

 

 

私が初めて彼女の作品を見たのは、インスタグラムで流れてきた投稿から。それまで食べ物モチーフのアクセサリーは、子どもっぽくなりがちだと思っていたのですが、RicoPanさんが作る「パン」は、リアルとデフォルメのちょうど間くらいの絶妙なフォルムが魅力的で、素材がパンの質感を底上げしています。大人が身に付けたくなるような「パン」に、釘付けになりました。

 

今回はそんなRicoPanさんの創作活動についてお話しを聞いてみたいと思います。

追求するのはリアルさではなく「おいしそう」かどうか

とても素敵なパンの作品ばかりですが、現在の活動にたどり着くまでにどんな経緯があったんですか?

RicoPanさん

子どもの頃からものをつくることとパンがすごく好きだったんです。高校は美術工芸を学ぶ学校の染織科を卒業しました。大学から金沢に来て、卒業後は長野のパン屋さんで働いたんです。

ずっと染織をしていたのに、いきなりパン屋さん?

RicoPanさん

子どもの頃からの将来の夢が、「作品とパンの喫茶店」を開くことでした。長野のお店は山の上にあって、自分の理想を形にしたようなお店だったんです。

「作品とパンの喫茶店」、ですか。

RicoPanさん

少し前まではそれを叶えるために一直線でした。今思えば少し執着し過ぎていたのかもしれないですね。

パン屋さんでの経験を経て、改めて金沢でものづくりを本格的に始めるわけですね。

RicoPanさん

はい、ずっと作品作りを続けてきた中で、私は「食べ物としてのパン」よりも「パンという存在」が好きだったのかもしれないと思うようになりました。それからパンをモチーフにした服飾雑貨をつくるようになったんです。

バゲットのザラッとした質感や焼き目のグラデーションが圧巻。

このブローチやバッグはレザーで作られてるんですよね?

RicoPanさん

そうです。私の祖母はアメリカンレザークラフトがまだ日本に来たばかりの頃、カルチャースクールのようなところで習って、その後30年間講師を務めていました。その事実は以前から知っていましたが、家にある革製品を見ても「祖母が作っている」という感覚が自分の中では分からなくて、特に気にも留めていなかったんです。

ふむふむ。

RicoPanさん

私は染色を主体に活動していたので、それをレザーに応用してバッグを作ってみたいと思ったときに祖母のことを思い出し色々と聞いてみたところ、祖母が革の知識がとても豊富だということを知ったんです。

制作中の染色の様子。
レザーの穴あけの様子。

そこからレザー小物をよく作るようになったんですね。

RicoPanさん

パンの質感とレザーが特に相性が良いことにも気づきました。レザーが日に焼けて段々と味が出てくる性質も、パンが焼かれて美味しい味わいになることに似ていると思いませんか?

本当だ!まさかパンとレザーに「焼くと味わい深くなる」という共通点が。

RicoPanさん

そうなんです。あとバッグに関しては全体をモチーフそのものの形にしないように作っているんです。わざとパンの周りに無染色のナチュラルレザーを配置してその対比を狙っています。

え、このパンの革と周りの革って同じものなんですか?!

RicoPanさん

はい、元々の革は同じです。こうやって驚きを感じてもらいたいんですよね。でも、あまりリアルさにはこだわっていません。美味しそうかどうか、ということが私の作品には大事だと思っています。

パン以外のモチーフも作られているんですか?

RicoPanさん

はい。パンは自分が好きなものなので、こういうモチーフ物を始めるきっかけになりましたが、今後は「おいしそう」のように、素材に手を加えることで、何かを感じてもらえるような作品を目指して制作していきたいと思っているんです。

このバッグは磁石でアイテムが貼り付くようになっているんですね!オムライスプレートだ!

RicoPanさん

ブローチなどはコレクションしてくれている方もいるので、そうやって集めたりその中から自分で毎日選んだりするものも作ってみたいなと思って。まだ開発中なのですが、ぜひ楽しみにしていただきたいです。

ものづくりと出会う場所をつくりたい

今回撮影させていただいているこの「モノゲン堂」はRicoPanさんが運営しているお店なんですか?

RicoPanさん

私と、友人の染色作家・木本百合子さんの2人で運営をしています。基本的にお店に立つのは私ですが、イベントの企画や今後お店をどうしていこう、といったようなことは2人で考えているんです。

どんなお店なんですか?

RicoPanさん

「モノゲン堂」は、金・土・日だけオープンする小さなギャラリーショップです。コーヒーや自家製レモネードなどのドリンク提供もしています。2人とも作り手のつながりが多いので、地域を問わず様々な場所で活動している方の作品を販売したり、小さな展覧会やイベントをおこなったり。形を変えながら自由に営業しています。

取材当日開催していたのは、舘田美玖さんによる絵と音のドローイングの展示。

昨年開催した作家さんの布でうちわを作るのワークショップ。

どうしてお店を始めたんですか?

RicoPanさん

作り手のコミュニティの中にいると、ものづくりに触れる機会が少ない方との交流がとても少ないことに気づいたのがきっかけです。

なるほど。

RicoPanさん

私が祖母のレザークラフトの作品を見ても「これが誰かの手で作られている」という感覚がなかったように、こういった作品に触れる機会が少ない方はきっともっと、モノを見て作った人のことまで考える瞬間は少ないんじゃないかなと思って。

ドリンクが小窓から提供される様子がなんとも愛らしい。

そうかもしれないですね。

RicoPanさん

だから、ドリンクなども提供する気軽な場をつくることで「たまたま行った店に置いていたものが誰かの作品だった」という状況をつくりたかったんです。そうすれば、そこから作り手の存在を知ってもらうことができるんじゃないかと。

本物のパンはないけれど、なんだか図らずも将来の夢に近づいていますね!お店のロゴも素敵ですが、イラストやデザインのお仕事もされているとか。

RicoPanさん

はい、まだ駆け出しなんですけど。モノゲン堂のロゴは木本さんとの共作で、オープンの時に作ったチラシや焼き菓子に使っている巾着などは私が担当したものです。

モノゲン堂開店時に作った観音開きのチラシ。

ブラウニーには専用の巾着がついている。

多方面で活動されていらっしゃるんですね。これからもたくさん美味しそうなモノを生み出してください!

RicoPanさん

とにかく何かを作ることが昔から好きなんですよ。今後もいろいろと形は変わっていくと思いますが、何かしら自分の好きなものづくりを続けていくんだろうなと思います。

RicoPanさんの作る世界は、革や布の作品を中心に、ロゴやイラスト、そしてお店と、ベクトルは違えどそのどれもがほっこりとした雰囲気で、なんだかちょっぴりレトロ。それは、誰もが子どもの頃、大好きな食べ物を見て「うわぁ~おいしそう」と思った、あのじんわりと心に広がるワクワク感を思い出す温かさがありました。

 


 

モノゲン堂

住所:石川県金沢市森山2-24-14 [地図]
営業時間:13:00〜18:00
定休日:月曜〜木曜、その他不定休(Instagramにカレンダーあり)
駐車場:近隣にコインパーキングあり
RicoPanさんのHP:https://www.ricopancraft.com/

 

撮影:林 賢一郎

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