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中医薬膳師・西原さんに習う「薬膳cafe紫燕」の薬膳初心者入門。

冬の定番といえば、熱々の鍋。免疫力が低下してくるこれからの時期に向けて、少しでも健康的な食事を心がけたいというあなたに、薬膳鍋はいかがでしょうか。

薬膳というと、健康に良いというイメージが強い一方で、独特な風味の食材を使っている、クセの強い料理が多い、という認識でいる方も多いかもしれません。また、漢方や医学が絡んでくるとなんだか小難しいような…。

言葉は知っていても、そもそも薬膳ってなに?家でも作れるの?など、気になることはたくさん。

というわけで、今回は薬膳教室も行っている「薬膳cafe紫燕」を知識ゼロの筆者が訪ねてみました。

 

落ち着いた趣ある佇まい

日常に寄り添う薬膳を

野町広小路の交差点から歩いてすぐのところにある寺町の入口。格子戸が印象的な扉に、達筆な店名が記された白い暖簾がはためきます。

暖簾をくぐると「参鶏湯」の文字が書かれた立て看板。そうかサムゲタンも薬膳か、と気づき自身のサムゲタン経験を思い返すと、先ほどまで身構えていた肩の力が少し抜けた気がしました。

 

物販スペースでは作家物の器も販売。

 

大事に住まわれた古民家を改装。部屋ごとに異なる壁の色もユニーク。

 

玄関先の趣ある物販コーナーを抜け、鮮やかな壁が印象的な店内へ進むと、店主の西原美帆さんがにこやかに出迎えてくれます。

西原さんは、お母さまの体調不良や自身の出産を機に薬膳に興味を持ち、通信教育で勉強した後、薬膳を学ぶ専門学校・本草薬膳学院に通って中医薬膳師の資格を取得。

その後、料理教室を皮切りに、薬膳コーディネーターとして活動されてきました。コーディネーター業の傍ら、野々市のセレクトショップで間借りカフェ営業を開始。後に実店舗として新竪町商店街に店を構え、2021年、現在の寺町に移転されました。

 

のめり込んだら一直線の西原さん。はつらつとした印象は薬膳のおかげ?

 

西原さん曰く、薬膳とは中国の伝統医学(中医学)の理論に基づいて作られた食事のこと。

これが薬膳、という決まった料理はなく、理論から逸れていなければ、和食や中華、フレンチ、イタリアンなど、あらゆる料理・あらゆる食材が薬膳料理になりえるといいます。

全ての食べ物には薬のような効果があり、食を整えることは身体を整えることにつながるということを表した「薬食同源」の理念が、薬膳の根本にあります。

また、健康を考えて作られる様々な食養生がある中で、薬膳は一人一人の体質や体調に合わせたオーダーメイドの食養生なのだとか。

 

物販コーナーにはコアな薬膳ファンも満足させる生薬が並ぶ。

 

例えば、便秘にはリンゴが良いと一般的に言われていますが、薬膳においては誰しもリンゴが良いというわけではないそうです。

リンゴは多くの水分を含み身体を冷やす効果があることから、ヒアリングをし、便秘の原因として冷えが原因だと分かれば、その人に合う食材はリンゴではないという判断になります。

逆に、身体の内側に熱がこもることによって起こる便秘だと判断されたら、リンゴは適切な食材だと言えるそうです。

このように聞いていると、医学に基づいていることがよくわかります。

病院へ行き、診察を受け、その人の症状に合った薬が処方される。それを食事に置き換えたものが薬膳なのかもしれません。

 

華茶(500円)は、中国の工芸茶にバラの花を追加して提供。冷え性緩和に良いとされるバラの香りがふわりと香ります。

 

薬膳において食材の組み合わせは特に大切にされています。

紫燕のHPでもレシピが紹介されていますが、食材を2つしか使わないような家庭でもすぐにマネできる料理も多く、正直「これも薬膳なの?」と驚かされます。

簡単な料理でもそれぞれ異なる食材の効能を理解し、掛け合わせることで薬膳として効果が期待できるものなのだとか。

 

鍋料理を続ける理由

食べ合わせを大事にする薬膳の考え方を思うと、効能の違う多くの食材をひとつに合わせて食べる鍋料理は薬膳に最適な調理法と言えます。

活動を始めてから様々な展開を見せてきた紫燕ですが、その中心にはいつも鍋がありました。暑い夏には冷たいメニューもあるものの、鍋料理がメニューから外れることはありません。

また、様々な食材を摂れるだけでなく、「冷えは大敵」という考え方に沿った身体を温める調理法としても有効とのこと。腎が冷えてしまうと身体全体の機能が衰えやすくなるため、温かい料理で腎を補うことは薬膳でも重要視されているそうです。

 

参鶏湯御膳(2800円)。御膳メニューの他、症状に合わせた本格的な薬膳コースも選べる。

 

今回いただいたのは「参鶏湯御膳」。一人鍋に入った骨付きの鶏肉がぐつぐつと炊かれ部屋中に良い香りが充満します。

記事冒頭に、薬膳は独特な風味の食材を使っているイメージ、と書きましたがこれは漢方薬の原料である「生薬」を薬膳で多く取り入れているため。紫燕の料理にも生薬がたくさん含まれていて、メニュー表にも主にどの生薬が使用されているのか、どんな効能があるのかが記載されています。

 

参鶏湯御膳に使用されている主な生薬は5つです。

 

・枸杞(クコの実)・・・疲れ目、滋養強壮、老化防止

・棗(ナツメ)・・・胃腸機能改善、精神安定

・蓮の実・・・胃腸機能改善、精神安定、アンチエイジング

・高麗人参・・・疲労回復、食欲改善、血行改善、冷え防止

・もち米・・・気力回復、冷え性や慢性疲労改善

 

 

取材当日のメニューは、ほうれん草と栗・ピスタチオの和え物(右前)、白きくらげと金時草の鰻ざく風(左前)、里芋とえごま 黒ごまの団子(左奥)海老と帆立の豆乳テリーヌ(中奥)、鱈の白子豆腐(右奥)。

 

メイン料理のほかに、小皿に入ったたっぷりの御膳メニューがついてきます。

その季節の特徴に合わせた身近な食材を使い組み合わせることにより、食養生に繋がるのだそうです。

 

この日のメニューにも黒ごまが使われているように、西原さん曰く寒くなるこの時期には身体を温める黒い食材がおすすめとのこと。

黒ごま、黒豆、黒きくらげ、海藻類、黒酢などは身体を温め、腎力アップにつながるそうです。海老や白子、鰻なども腎や肺の働きを高める効果があるとか。

また、帆立や松の実、白きくらげなどの白い食材も、乾燥が気になるこれからの時期に最適な食材だと言います。

 

蒸し野菜には枸杞と玉ねぎ麹のドレッシングが添えられています。

 

話しを聞いていると、スーパーで手に入る食材も多く、少し意識をするだけで我が家の食卓にも薬膳料理を並べられるのかも…と思いました。

 

そもそも、この店の暖簾をくぐる前は、薬膳は精進料理のようにカロリーが少ないものや菜食のようなものを想像していた筆者。

この御膳を食べ終えると、全く想像とは違ったのです。がっつり骨付きのお肉が入っていたり、酒の肴としても人気の白子が使われていたり。

薬膳は、食いしん坊な人間でも満足できる食養生だったのです。

 

紫燕では、物販コーナーも備えられており、生薬や薬膳料理におすすめの食材が販売されています。

中でも初心者におすすめなのが紫燕オリジナルの簡単なキット。参鶏湯や薬膳スープ、薬膳粥などがあり、少量の食材と一緒に煮込むだけで簡単に本格薬膳料理が自宅で楽しめます。

 

まずはここから、薬膳の世界に足を踏み入れてみては。

 

紫燕オリジナル参鶏湯キット(840円〜)

 

 

薬膳cafe紫燕

石川県金沢市寺町5丁目5-11-2

TEL. 090-2831-4312

営業時間/11:30~ ※ディナーは日曜のみ(完全予約制、時間不定)

定休日/土曜日 ※その他不定休

席数/20席(全室個室)

駐車場/提携コインパーキング有

 

※こちらの情報は取材時点のものです。

 

(取材・文/西川李央、撮影/林 賢一郎)

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