元セカ○ト店長が行く!金沢の異端リサイクルショップ「Select re MUGI」
こんにちは、良いものを安く買うことに命を懸けているライターの西川です。
実は筆者、20代の頃リサイクルショップの店長をしていた時期がありました。リサイクル業界にはヴィンテージ好きも多く、周りの影響もあって未だに古物巡りが大好き。アンティークショップやリサイクルショップ、ネットオークションにフリマなど幅広いフィールドに今も生息中です。
石川県に移り住む際、当時の知り合いがそんな私に「石川県にムギっていうおもしろい店があるから行った方がいいよ」と言ってきたため、移住していの一番に向かったのが『Select re MUGI(セレクトリサイクルムギ)』でした。
訪れる人も働く人も面白い。何が掘り出されるかわからない、ワクワクする店
MUGIに足を踏み入れた当時の私は、頭を殴られたような衝撃を受けました。
一見、倉庫型の古道具屋さんやアンティークショップのような佇まい。なのに、奥に進めば学生マンションにありそうな洗濯機や冷蔵庫、“お、ねだん以上。”なメーカーで購入されたであろう、なんとも垢抜けない家具類も並んでいます。
海外製の安価な家電の登場で、縮小傾向にあるという家電のリサイクル。しかし、3月には卒業する駆け込みの学生からの買取も多いとか。
元職場のリサイクルショップは、現在業界最大手と言われる会社に育ちましたが、筆者がアルバイトスタッフだった当初はまだ運営も小さく、店長の裁量で店づくりをしていたため、店舗ごとに雰囲気やラインナップがまるで違うチェーンストアでした。アルバイト時代の店長は古物好きで、ヴィンテージの服などを高価買取していましたが、なかなか集めることも難しく、試行錯誤している姿が印象に残っています。
MUGIを見て最初に思ったのは「あの店長はこういう店をやりたかったんだろうな」ということ。雑多で、なんでもありな、ワクワクするお店は、消費者目線で見ると掘り出し物の探し甲斐がありますが、店側としては買取センスや知識、ディスプレイ力など様々なことが問われます。だからこそやりがいがあるのです。
MUGIによって見出される「モノの価値」
こちらがMUGIの店主・イシハラミノルさん。岡山の大学を卒業後、大阪で就職するも、元々好きだった古道具や古家具を扱う仕事がしたいと退職。友人に紹介された岡山の個人リサイクルショップを見て「自分はこんなことがしたかったんだ」とその場でスタッフになることを志願したといいます。その店で古物のノウハウを学び、2011年に現在のMUGIを開業しました。
古着屋さんのディスプレイにありそうなトランクや、海賊の宝が入っていそうな古いケース。大手のリサイクルショップにはなかなか置いていないラインナップ。
なるほど。
ライバルって言っても、仲はいいんです。実はこの業界、横のつながりも結構あって、でかい案件になるといろんなリサイクルショップが総出で出張することもある。以前、テーマパークの閉園に伴って、いろんな店の人たちと見積もりを出しに行ったこともありましたよ。
え、それって商品の取り合いになったりしないんですか?
それぞれ得意分野が違うんですよ。うちみたいな家具や古道具が得意な店もあれば、厨房機器が得意なところもあるし。観覧車とかを買い取る業者もあるんですよ。うちじゃ観覧車は絶対にいらないから(笑)。
教育現場からの買取だろうか、子ども用のイスがたくさん並ぶ。どんな場所から買い取ってきたのかを想像するのも楽しい。
小物類のラインナップも多い。バリエーションも豊富で価格が安価なため、実際の用途とは異なる使い方にも挑戦しやすい。
さすがにこの大きな倉庫にも入らないですね(笑)。この建物は元々何だったんですか?
元は建具屋さんだったと聞いています。大きいと言っても、全然足りなくて。2階のワンフロアにも在庫があるし、別の場所にも倉庫を持っているんです。
倉庫在庫にもアンティークやヴィンテージのようなものがたくさんありますね。どうして古家具・古道具の店にしなかったんですか?
うーん、古道具屋さんとかアンティーク屋さんって、なんかかっこいいじゃないですか。それはダメなんですよ。少しダサいくらいがちょうどいいというか。「古道具」とか「アンティーク」とかの名前を掲げた時点で、遠慮してしまう層っていうのが絶対一定数いるので。
特別に入らせてもらった2階の倉庫はメンテナンス前の商品が所狭しと並ぶ。個性派過ぎる巨大な葉っぱの照明があったり、振り返ると鹿の剝製がこちらを見つめていたりと、まるでジャングル探検をしている気分。
ふむふむ。
リサイクルショップって買い取ったものをどうにかしなきゃいけないっていう戦いが生まれるんですよね。だから自分が本当にかっこいいと思ったものだけを置く店より、どうやってもダサくなるのかな、と。
独立する時に“リサイクル”というシステムは必ず取り入れたかったんですか?
そうですね。好みのものを集めるだけの店だと、自分の中で面白みが減っていくと思うんです。正直好みではないものや、在庫状況的に難しいなと思うものも買取の中にはありますよ。でもそれをどうにかして売っていくということが、この仕事の面白さなんだと思います。
山中で木地師をしていた人の納屋で見つかった漆器になる前の木片。「MUGIなら買うのでは」という同業者の声かけで取りに行くと、1tトラック一車分も買い取る羽目になったというエピソード付き。在庫はまだまだあるそう。
どうにかして売る、というと?
売る方法って、値段を安くつけるだけじゃない。うちでもたまにあるんですけど、道端に落ちているものを拾ってきて、特に売るつもりもなく店のディスプレイとして置いておく。そういったものに限って「これっていくらですか?」って聞かれるんです。モノの価値は、どう見せるのかも大きく関わってくるんですよ。
見せ方でいうと、MUGIのインスタグラムもユニークですよね。あそこでポストされた商品はすぐにSOLDになっているイメージです。
あれは基本的に妻がやっています。女性の目線ってどうしても自分にはわからないところがあるので助かっていますね。ただ、使い方のアイデアを書き記すのはいいけれど、使い方を限定した書き方にはしないでくれとお願いしています。それはお客さんが考えるべきことだと思うので。
一時期、北海道の民芸品である木彫りの熊がよく投稿されていましたよね。
この店を始めてすぐ、木彫り熊がどこの家庭からでも出てきて雑に扱われているってことに気づいて。でもこれ人が木の一つの塊から掘り出したって考えるとすごいなぁ、と集め出したんです。 集めていくと、良し悪しがわかるようになってきて。調べてみたら木彫り熊の四天王みたいな作家さんがつくったものがあったり、キュビズムの流れを汲んだものがあったりしてハマってしまったんです。数年前に本が発売されたことでブームになって、今はかなり高額で取引されていますよ。ついこの間まで不要なものとして扱われていたのに。モノの価値って不思議ですよね。
道端で拾ってきた木の破片も、ショーケースに入れて飾ると化石やアート作品のようにも見える。
店の一角にある木彫り熊コーナーは、コレクションとして集めたものではなく、あくまでも買取で“出会って”集めたもの。
大手リサイクルショップで働いていた当時、自分の仕事は不要になったものに価値を“付与”する仕事だと思っていた筆者。イシハラさんの話を聞いていると、MUGIは不要になったものの価値を“見出す”店なのだと感じました。
一度MUGIを訪れた誰かにとっての不用品は、イシハラさんの手によって全国の店舗や暮らしの場で今も活躍しています。ものを大事に使うことが叫ばれている現代。あなたの身の回りにあるものの、自分にとっての価値を、改めて考えることも大切かもしれません。
・・・ちなみに取材の後、私にとって価値がなくなったアレコレをついでに買い取ってもらいました。ウン千円の臨時収入!やった~!
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Select re MUGI(セレクトリサイクルムギ)
住所/石川県金沢市乙丸町甲149
TEL.076-205-7375
営業時間/11:00~19:00
定休日/木曜、金曜
駐車場/3台
公式HP/http://select-re-mugi.com/
Instagram:@re_mugi
※こちらの情報は取材時点のものです。
(撮影/林 賢一郎)
イシハラさんは石川のご出身ではないのですか?
はい、出身は兵庫です。独立する時に、日本全国いろんな地域を放浪して金沢での開業を決めました。岡山では、お世話になった店のライバルになってしまうからそれも申し訳ないし、それに地域が変わると買い取りに持ち込まれる品物も全然違うのでおもしろいんですよ。
金沢での開業の決め手は何だったんですか?
当時の金沢は、サラリーマン時代に出張で訪れた頃の印象と大きく変わっていて、町がこれから発展していく空気があったんです。こういう仕事は、いい感じのカフェやパン屋さんなど、洒落た店がある町の方が、需要があって、当時はそういう店が少しずつでき始めた頃だったんです。
店の什器として探される方が多いということですね。
それにライバル店のようなリサイクルショップが少なかったんですよね。
MUGIのライバル店ってどんなお店になるんですか?
競合になるとすれば、中小企業や個人経営のリサイクルショップ。いわゆる“謎のもの”まで買い取っちゃう「なんでもやったるで」系のお店ですね。そういう意味で言うと、セカンドストリートとか大手のリサイクルショップはライバルではありません。店舗数の多いチェーンストアは買取規則がかなりしっかりしていて、例えば家具や家電は買取可能な年数が決まっていたりするので。