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築90余年、装い新たに。金澤表参道の「ブティックミドリヤ」がグローサリーストアに変貌を遂げたらしい

金澤表参道(旧横安江町商店街)で、ひと際目を引く洋風の建物。緑色の枠がついたアーチ窓が印象的な「ブティックミドリヤ」をご存知でしょうか。金沢の婦人服業界で知らない人はいないこの店ですが、実は2023年5月にブティックを閉店し、グローサリーストアに生まれ変わったというのです。今回はその経緯を伺いに突撃してきました!

婦人服と言えば、なあの店が閉店を決めた理由

 

1960年代、仕立て中心だった日本の衣服が既製服へと変わっていく中で、その流れを汲み“婦人服ならミドリヤ”と言われるほど一世を風靡した「ブティックミドリヤ」。一時期は20以上もの店舗数を持ち、日本の女性たちへオシャレを通して美と潤いを提供し続けてきました。

 

金澤表参道の店舗には“ブティックミドリヤ”の看板が掲げられたままですが、現在店内にはたくさんの食品と少しの日用品が整列するように並び、シニア向けの日常着やカラオケ衣裳が並んでいたカラフルな店内からすっかり様変わりしています。

 

 

現在の店名は「Natural Grocery Store midoriya」。添加物の入っていない食品や調味料、無農薬野菜、ヴィーガン対応でグルテンフリーの焼き菓子などを扱う自然食品の店です。

 

今回お話しを聞くため、「ブティックミドリヤ」の初代・2代目店主、そして「Natural Grocery Store midoriya」を営む現店主に集まっていただきました。

 

左から「ブティックミドリヤ」初代店主の髙橋多満子さん、2代目店主の髙橋美佐子さん、「Natural Grocery Store midoriya」店主の髙橋朋子さん。

 

実は現在の店主・髙橋朋子さんは、初代店主の孫、そして2代目店主の四女にあたります。親子3代受け継いできた店舗は築90年余り。グローサリーストアは、開業当初ブティックの2階で小さく営んでいましたが、今年に入り1階に移転。それに伴いブティックを閉店し、店舗の古くなった部分を改装しました。

 

 

1階へ移転する際に作ったという店内奥のカフェスペースは席数を限定しゆったりと過ごせる。

 

初代から店を受け継ぎ、長年ブティックを続けてきた2代目・美佐子さんに、変わっていく店舗を見ながら何を思ったのかと問うと、返ってきたのは寂しさではなく意外にもきっぷの良い言葉でした。

 

「長年経理を担当していた父は、我が家の中で絶対的な存在でした。生前、2階に店を開くのも最初は首を縦に振らなかったんですけど、この子(朋子さん)の熱意に根負けしましてね。だからブティックを閉めてこの店を開くことについて、そこまで不安や反対はありませんでしたよ。時代は変わっていくものだし、意欲のある若い世代に受け継ぐことは我々の世代がしなきゃいけないことだとも思いますからね」

自身の経験と興味、そして世間の意識の高まり

3代の店主と、朋子さんの姉にあたる朽木裕佳里さん。並ぶと顔立ちや晴れやかな雰囲気がそっくりなのが分かる。

 

元々東京で働いていたという朋子さん。実家が自営業だったこともあり、その頃から既に外に働きに出るという働き方に違和感を感じていたといいます。いつかお店を出したい、でも何をしよう、と思っていたときに出合ったのが自然食品でした。

 

現在3児の母でもある朋子さんは、末っ子のアレルギー体質を通じて子どもや母乳をあげる自身の食の大切さを学んだと話します。そのタイミングでコロナ禍に入り、世間の健康意識の高まりに“これだ!”と感じたとか。

 

食品以外に植物由来の日用品も展開。

 

金沢市東山にある「髙木糀商店」の味噌や塩麹。

 

「店を出したいという想いはずっとあったのですが、飽き性なこともあって自分が長く続けられるものをずっと探していました。自然食品と出合って食生活の改善を図ってから、調味料一つ買うのに30分かけて取扱店に通っていたんです。近くにお店がなかったんですよ。で、ないなら自分が作っちゃえ!って。

 

お店には自分が食べて美味しかったもの、使って良かったものだけを置いています。無添加・無農薬だからといって全部が美味しいというわけでもないですし、そこは厳選を。今後は地元で作られている商品にも力を入れていきたいです」

 

 

この日のイートインスイーツは富山県南砺市産の無農薬いちじくをたっぷり使った「ヴィーガンスコーンプレート」650円。ボリューミーだが食べ終えても重たさを感じない。

 

仕入れた商品に加え、自家製の焼き菓子も販売。穏やかな甘みとソフトな食感のものが多く、年代問わずファンも多いそう。焼き菓子以外にイートイン限定のスイーツプレートも用意されています。旬の食材を使った生菓子に和紅茶やハーブティーを合わせ、店内でゆっくりとした時間が過ごすのもおすすめです。

 

スイーツの担当は主に店主の姉である裕佳里さん。パティスリーやホテルで働いていた経験を活かし、バターや生クリームではなくココナッツクリームや植物性ヨーグルトなどを使ったヴィーガンスイーツを作っています。

 

 

現在2階では朋子さんの旦那様が営むビンテージメガネショップ「GEG」も営業中。お洒落なシニアの奥様方が通い詰めていたブティックは、感度の高い若者が多く訪れる場所へと変貌を遂げていました。

 

時流を見極め、良いものや必要なものを提供することで、長く多くの人に愛されてきた「ブティックミドリヤ」。店の形は変わっても安心を感じられるのは、祖母や母の背中を見て育った朋子さんや裕佳里さんに、そういった「ミドリヤ」の精神が深く根付いているからなのかもしれません。これから長く愛される店になるであろう「Natural Grocery Store midoriya」、ぜひ一度訪れてみてください。

 

 


 

Natural Grocery Store midoriya(ナチュラルグローサリーストアミドリヤ)

住所:石川県金沢市安江町11-38 [地図]
営業時間:10:00〜17:00
定休日:火曜日(その他不定休あり)
駐車場:無し
Instagram:@midoriya.natural

 

撮影:林 賢一郎

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