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完全即興ギタリストのいしかわひろきさんに聞きたい10のこと

インターネットの急速な普及と共に音楽業界のグローバル化が進んでいく一方で、地元を根城にしながら活動を続けるローカルミュージシャンが増えています。クリックひとつで遠い国の音楽をリアルタイムで聴くことができる時代。音楽におけるローカルとグローバルとの境界線は一体どこにあるのでしょうか。

 

北陸地方を拠点に活動するミュージシャンに、普段の生活や音楽との向き合い方などをインタビューする「HOKURIKU MUSIC」。今回のゲストは、即興ギタリストとして富山を拠点に活動する、いしかわひろきさんです。

 

 

いしかわひろき
富山県内にてブラックミュージック、フリージャズを軸にした音楽活動をするギタリスト。浮遊感あふれる曲調や完全即興を取り入れた演奏スタイルが好評を得ている。自身の職歴を活かした「完全即興を仕事にする」「生活は、音楽そのものだ」などの著書も出版。兄には同じくギタリストとして活躍する石川征樹がいる。

仕事も音楽も、即興にこだわる。

(1)いつ頃からギターを弾き始めたんですか?

 

高2か高3の頃です。兄貴から借りたニルヴァーナのCDに影響を受けて、すぐにリサイクルショップで安いギターを買いました。たしか7,000円くらいだったかな。あのグシャグシャした破壊的なサウンドがとにかくカッコよくて、ひたすら真似していました。大学時代はジャズ研究会に所属していました。ジャズを勉強したり、セッションをしたり。とくにフリージャズやノイズミュージックにハマっていましたね。

 

(2)影響を受けたアーティストは?

 

ジョン・ゾーンとか阿部薫とか、1970年代に活躍したフリージャズのミュージシャンの作品はよく聴きました。でも、ひとりだけ挙げるとすればパット・メセニー。彼の音楽は映像的というか、聴いていると情景が頭の中に浮かんでくるんです。音楽に対する姿勢も非常にストイックで、ギタリストとしてだけでなくひとりの人間として尊敬しています。

 

インタビュー中のいしかわひろきさん。

 

(3)普段はどんな仕事をしていますか?

 

手に職をつけるためにホームヘルパーの資格を取ったのが5、6年前。それから自閉症や身体障害、認知症などを患う人たちを対象とする福祉施設で働いていました。現在は、独立に向けて準備をしているところ。「生きづらさを感じている人たちのための居場所支援(さいはて)」として、家や施設にこもりがちな方や若年性認知症の方たちに向けて、日頃のストレスを発散したり気持ちをリセットできるツアーを企画したいと考えています。そのために、介護福祉士と旅行業務取扱管理者の国家資格も取りました。

 

(4)仕事と音楽。関係するものはありますか?

 

完全即興で演奏するのが僕のスタイル。事前の打ち合わせも譜面もなく、真っさらなキャンバスに自分の感覚だけを信じて、絵を描くように演奏していきます。これは僕の仕事にも通じること。同じ障害をもつ人でも、環境の違いによってそれぞれ症状の表れ方や行動が変わってきます。なので、介護の仕事は常にゼロベースで、様々な事が起こりうる想定で臨機応変に動いていくことが求められる。即興演奏と全く同じ構造だと感じています。

 

完全即興がいしかわさんの演奏スタイル。

 

介護のリアルを綴った本も出版。

(5)音楽以外にライフワークになっていることはありますか?

 

自閉症や認知症の方たちを取り巻く現状を、ひとりでも多くの人に理解してもらうため、介護職のリアルな現状を綴った本を出版しています。僕自身、やる前と今では180度印象が変わりました。自分がなくなるくらい振り回されるけど、それが刺激的でやりがいに感じることもある。そんな日々の中で感じたことをイラスト付きやエッセイ風にまとめています。いくつかの本はAmazonのKindle版でも出品しているので、ぜひ読んでみてください。

 

(6)なぜ、北陸を拠点に活動しているんですか?

 

音楽だけで生計を立てようと思ったことは一度もなくて、介護の仕事をするまでは営業職や整体師、飲食店、農業など、色んな仕事を転々としました。たぶん10種類以上はやったんじゃないかな。仕事も音楽もとなると、住み慣れた地元の方が都合が良いし、フットワークも軽くなる。とくにこれから始める居場所支援の仕事は、自然に囲まれた富山だからこそできることなので、今のスタイルはしばらく変わらないと思います。

 

介護職のリアルを綴ったエッセイも出版。

 

(7)ライブ中はどんなことを意識していますか?

 

完全即興ということで、できるだけ自然の流れに任せた演奏を心がけています。ざっくり言えば、今しかできないものをやる。持ち時間、主催者の要望、会場の雰囲気といった現実が錯綜する中で、なかなか集中するのが難しいときもありますが(笑)。ロック、ジャズ、ブルースなど色々な音楽を経験していくうちに、パターンの繰り返しが窮屈に感じる時期もあったり。そういった縛りをなくして、自由にギターを弾きたいという思いが強いのかもしれません。

 

(8)プライベートはどんな過ごし方をしていますか?

 

基本的に音楽漬けですね。普段は完全即興ですが、じつはここ数年、日本の歌ものをよく聴くようになって。とくにCHARAさんやUAさんなど、独特の世界観を持ったミュージシャンに惹かれます。ただ聴くだけでなく、コード進行の研究をしたり、普段の演奏に活かせたらとも思ってます。あとはポダリング。目的地を決めずに、自転車で自由気ままに走って帰ってくるだけなんですが、これがなかなか快適で。車を手放そうか考えているところです。

 

数名のミュージシャンと共に作り上げた「everlasting」

 

(9)よく出没する場所、好きな場所はありますか?

 

富山の総曲輪にある「ほとり座」にはよく行きますね。映画を観たり、食事をしたり。何度かライブもしたことがあります。ライブする場所で比較的多いのは「Newport」とか「村門」かな。好きな場所は、うーん…街中かな。市街地から山の景色が見えるのが、富山の良いところだと思ってるので。

 

(10)最後にこれから予定を教えてください!

 

2月1日と3月8日に、高岡市にある「casa de la musica」というお店でライブをします。2月はピアニストの高雄飛さん、3月はギタリストの遠藤豪さん、ボーカルのたかのさおりさんと一緒に演奏をする予定です。(外部リンク:casa de la musica

 

いしかわひろきさんのライブ・リリース情報はオフィシャルサイトをチェック!

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

 

◯北陸を拠点に活動するミュージシャンにインタビューする【北陸ミュージック】

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