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【石川酒蔵探訪】杜氏に聞く、今飲んで欲しい日本酒。吉田酒造店編

僕の周りには「最近になって日本酒の美味しさが分かるようになった」という人が結構いる。

かくいう自分もその一人で、歳をとったからなのか、日本酒業界の努力の賜物なのか。理由は分からないけど、酒飲みとしてのステータスが上がった気がしてうれしかったりもする。今では旅をすれば地酒を買い求め、父の日には全国の銘酒をネットで取り寄せる。そこでふと思った。

 

あれ?石川県って酒どころじゃないっけ?

 

というわけで、県内に35ある酒蔵の歴史や酒造り、おすすめの酒などを紹介する連載企画【石川酒蔵探訪】がスタート。良質な水、米と麹、人の技。三拍子が揃った石川の地酒の真髄を探っていく。

 

白山市安吉町にある『吉田酒造店』

地元の田と水、農を守る酒造り。

今回、訪ねたのは白山市安吉町にある『吉田酒造店』。「初めて聞いたかも」という人も〈手取川〉と聞けばピンとくるはず。2016年に〈金沢21世紀美術館シアター21〉で、同蔵が舞台となったドキュメンタリー映画が上映されたのは記憶に新しい。

 

商品の軸となるのは〈手取川〉と〈吉田蔵〉。石川の地酒の代表格でもあるこのふたつの銘柄には、どんな違いがあるのだろう。7代目の吉田泰之さんに話を聞いてみた。

 

「代々受け継がれてきた酒造りの技と最高品質の酒米によって作られるのが手取川。蔵の伝統を守りながら、だれもが安心して飲める親しみやすい味を目指しています。一方で、蔵の周りで育った酒米と金沢酵母で作られるのが吉田蔵。能登杜氏が得意とする山廃仕込みを採用するなど、地元の素材や技術に特化した真の地酒を目指しています」

 

なるほど。手取川は伝統の酒であり、吉田蔵は革新の酒。というわけか。

 

7代目の吉田泰之さん。杜氏として酒造りにも携わっている。

 

全体の和を大切にする「和醸良酒」の精神によって、良い酒は生まれる。

 

『吉田酒造店』のある安吉町はその昔、いくつもの酒蔵が腕を競い合う酒造りの村だったそう。手取川扇状地の中央に位置する肥沃な大地。そうした地の利を生かした取り組みにも力を入れている。

 

「五百万石や石川門といった地元ならではの酒米を、地元の農家さんと連携しながら作っています。酒米チームを結成して、田植えや稲刈りにも参加したり。地元の田んぼや水を守り、農業を支える。それが地酒本来の姿だと考えています」

 

北陸の地で伝えられてきた金沢酵母。

 

仕込み水として、白山百年水と呼ばれる手取川の伏流水を使用。

 

ラインナップは30以上。スパークリングや古酒なども。

 

これだけ並べてもらったのなら、実際に飲んでみるのが礼儀というもの。数あるラインナップの中で、吉田さんイチオシの「今、飲んで欲しい日本酒」を教えてもらおう。

 

杜氏の吉田泰之さんがおすすめする日本酒と缶つま

u yoshidagura(山廃純米無濾過原酒)

ワインのようなおしゃれなラベルが目を引く〈u yoshidagura〉は、自然界に存在する乳酸菌の力を借りて造られた純米酒。酒米は石川門、酵母は金沢酵母、製法は山廃仕込みと、すべて地元の原料と技で造られている。そう、これこそが吉田さんの目指す〈地酒本来の姿〉。地産地消が見事に実現された日本酒となっている。

 

ちなみにアルファベットの〈u〉は、漢字の〈優〉を表しているそうで。酵母以外は無添加のナチュラルで優しい味わいに仕上げられている。

 

u yoshidagura 720ml 1,250円(税抜)

 

「10〜15度くらいの冷やがおすすめ。白ワイン用のグラスを使うと、より繊細な香りと味わい、そして心地よい酸味が楽しめます」と吉田さん。口に含むと広がる、柑橘系の香り。ワインのような爽やかな飲み口で、これなら日本酒ビギナーにも遠慮なしに勧められる。45〜50度の燗酒にも合うそうだ。

 

そろそろ酒のつまみが欲しくなってきた。一体どんな料理が合うんだろう。

 

「イタリアンとかフレンチが良いかもしれません。酸味がある料理だとさらに良し。刺身よりはカルパッチョ。オリーブオイルを使った料理やフルーツ系にも合いそうですね」

 

そんな意見を参考に、最近流行りの缶つまを探してみた。

 

国産真いわしのハーブマリネ486円。

 

酸味のあるフレンチということで、明治屋の〈おいしい缶詰〉シリーズから、国産真いわしのハーブマリネをチョイス。白バルサミコ酢にレモンとハーブの風味を加えた爽やかな味わい。実際にペアリングしてみると、日本酒とマリネの酸味が調和して、より完成度が高まった気がする。最近の缶詰のクオリティは本当に高い!

 

試しに白ワインとも比べてみると〈u yoshidagura〉の方が、口当たりや喉ごしに優しさを感じる結果に。このえぐみのなさも日本酒の良いところ。

 

余ったソースはドレッシングにしても美味しい。

 

伝統と革新が融合した『吉田酒造店』の酒造り。2020年は、創業から150年を迎える節目の年。これからどんなお酒がリリースされるか楽しみだ。

 

 

(株)吉田酒造店
石川県白山市安吉町41
TEL.076-276-3311
※こちらの情報は取材時のものです。

 

(取材・文/吉岡大輔、撮影/林 賢一郎)

 

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