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【喫茶店の特等席】 脱力タイム。『道草カフェ・アルプ』に流れるゆるい時間

兼六園、しいのき迎賓館、21世紀美術館がある広坂の交差点から本多通りをずいっと歩いていくと一軒の喫茶店があります。

 

『道草カフェ・アルプ』

いい感じのジャズ喫茶と聞いていたため、大人な雰囲気のジャズが流れているんだろうと思い訪ねたところ、聞こえてきたのは沖縄民謡。

あれ?ジャズじゃないぞ??

ぷらっと立ち寄って音楽が楽しめる場所を。

 

「アルプ」の店名が五線譜に揺れる可愛い外観。道路に置かれた立て看板のランプが点灯していれば営業中の合図。

 

店を営んでいるのは細川さん。

現在の店の前身である『COFFEE ROOM アルプ』を長年営んでいた先代夫婦から店を受け継ぎ、2017年3月に『道草カフェ・アルプ』をオープン。 なんとそれ以前は、航空自衛隊の音楽隊として22年間沖縄に住んでいたそう。

 

細川:まだ沖縄を拠点にしていた頃です。たまたまこっちに来ていた時に先代の店に入ったんですね。おじいちゃんとおばあちゃんがいて、コーヒーを飲みながら「良いお店ですねー」なんて言っていたら「もう私達店をやる気がないの…」というテンションの低い話になりまして。「じゃあ、俺やりますよ」なんて話すうちにそのまま決まっちゃったんですよ。

 

嘘か真か話は進み、15分くらいで契約成立に至ったのだそう。

 

道草するようにふらっと足を運べて、そこから何か新しいことが生まれるような場所にしたいと「アルプ」という先代からの店名はそのままに新装『道草カフェ・アルプ』はオープン。人生の急展開を迎えた細川さんは、喫茶店のマスターになりました。

 

こちらが店主の細川さん。誰とでも気さくに話すお兄さん。

2〜3度通えばもう常連。そんな雰囲気。

 

「この話しましたっけ?」

このひと言が合図となって、細川さんの最近あった小話はスタートします。

これが結構面白い。

 

細川:先代は、いぶし銀のかっこいいおじいさんでね。毎週水曜になると店の前を通っていかれるんです。公民館で毎週コーラスをやっておられて。背筋ピシーッと歩かれるんですが、40何年やられた店の前を何事もなく素通りしていかれるんですよね。普通「おお!やっとるか」とかひと声あっても良さそうなもんですけど全くない。渋いでしょ。それもまたいいですよね。過去は振り帰らない姿勢。あんな風な年の取り方をしてみたいですよね。

 

この日、沖縄民謡がかかっていた理由は「最近はジャズイベントが多かったから」という理由。ゆるく沖縄民謡が流れる店内と細川さんの小話に、次第に心も緩みます。

怒ってないから、コーヒー一杯飲みに来てよ(笑)

 

…と、ここでマスターから突然、驚きのお願いが。

話を聞くと、取材したその週にひき逃げに合ったと言います。

 

細川:こちらはバイクに乗っていまして、ガンと当たってサーと逃げられたんですよ。確か車はジュークのグリーンでね。大きな怪我もなかったし警察には届けんとこっと思ったんですよ。ひいた方もビクビクしているかもしれないし、身に覚えのある方に伝えたい。怒ってないので、悪いなと思っていたら一杯コーヒーを飲みにきてくださいよ。ハッハッハ!これぜひ書いてね。

 

バイクをひいた覚えのあるどなたか、この記事を読まれましたら『道草カフェ・アルプ』まで。

 

胃袋がすっかり常夏!になるタコライスやハムチーズホットサンド、小倉バターホットサンドなど、小腹を満たす軽食が充実。

 

手にすっぽりと収まる小ぶりなコーヒーカップは、先代からのものをそのままに残し、老朽化が激しかった店内の椅子やテーブルは総とっかえ。ライブができるようピアノやマイクを設置して細川さんの喫茶店はスタート。

現在は週末を中心に、県内外で活躍中のミュージシャンによるイベントライブ「鱗JAZZ」を開催しています。

タコライスと『MOJO CAFE』の焼き菓子と。

 

カルチャーが混ざり合う喫茶店の特等席は、通りを見渡せる窓際。

レトロな雰囲気ただよう一席で、特製のタコライスをいただきます。

 

店主との会話を楽しむもよし、のんびり過ごすもよし。

 

タコライスは、玄米の上にチェダーチーズと自家製ピクルス、水菜、目玉焼き、タコスミートを乗せた細川オリジナル。

「沖縄のタコライスより全然美味しいと思いますよ」

沖縄歴の長い細川さん曰く、〈ツボを押さえた沖縄タコライスの正統派〉とのこと。

 

結構具だくさん! スープ付きで700円とお手頃。

 

また、金曜日のみ楽しめるアフタヌーンティーセットもあり。

毎週金曜日限定でアルプに『MOJO CAFE』がオープンし、善光寿好さんが作るタルトやパウンドケーキが味わえ、1種類のミニケーキと焼き菓子をセットにしたアフタヌーンティーを楽しむこともできます。

 

スコーンと紅茶のセットは800円。外はサクッと中はふわっと、甘み控えめなスコーンに特製のクリームを添えて。

 

『MOJO CAFE』善光さんと。「この話しましたっけ?」と話に花が咲く。

 

ちなみにカウンター席の一番隅っこは、アルプの隠れ特等席。

 

細川:Mr.オクレさんがたまたま来店されて座った席なんですよ。その隣に乳首ドリルの方が。どんな芸能人が来るよりも最高だったな〜。

 

一番奥がオクレ席。伝説の喜劇俳優がここでタバコをふかしたらしい。

 

カウンターや店内の壁、棚には、怪しげなお面やサイン、写真やおもちゃその他雑多なものが並んでいて、あれこれ見ているうちになんとなく時間はすぎていきます。

おそらく店主とここに集うご常連、ミュージシャンたちの交流によって少しずつ出来上がっていったであろう、混沌とした空間もまた心地良い。

 

様々な人との交流を生む『道草カフェ・アルプ』。

イベントライブ「鱗JAZZ」の開催スケジュールをチェックしたい方はフェイスブック「細川三郎jr.」で検索を。一度訪れると、アルプ沼にはまりますよ。

 

「鱗JAZZ」開催時の店内はこんな感じ。
(写真提供:道草カフェ・アルプ)

 

道草カフェ・アルプ

石川県金沢市茨木町68-5

TEL.076-221-3010

営業時間/18:00~翌3:00

定休日/無休

席数/カウンター7席、テーブル6席

駐車場/軽1台

※この情報は取材時のものです。

 

(取材・文/森内幸子、撮影/林 賢一郎)

 

◯石川県の古き良き喫茶店をフィーチャーするシリーズ企画【喫茶店の特等席】→そのほかの記事はこちら

 

 

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