カレーの概念が変わるシーフードココナッツカレー|煩悩を断ぜずして咖喱を得るなり #04
みなさんカレーの定義ってなんだと思いますか?
辛ければカレーなのか、黄色ければカレーなのか。インドの食文化に詳しいフードライターのコリーン・テイラー・センは、著書「カレーの歴史」の中でこう答えています。
「スパイスを効かせた肉、魚、野菜などの煮込み料理に、ライスやパンなどの炭水化物を添えたもの。大きく捉えるなら、汁気のあるなしに関わらずスパイスで味付けしたすべての料理」
分かったような、分からないような…。だけども、私たちの中には「これはカレーだけど、これはカレーではない」といった線引きは確実にあります。口で説明するのは難しいんですけど…。
今回は、そんなカレーの定義を、独自の世界観で表現する『ゲッコ洞』を訪ねてみました。
昭和の民家を改装した店舗。
意外な料理から着想を得た独自の味。
金沢中警察署の裏手あたり。竪町ストリートの出口から歩いて3分ほどの場所に『ゲッコ洞』はあります。
「ゲッコ」と聞いてピンと来たら、なかなかの勘の持ち主。こちらは新天地にあったバー「GECKOS」のマスターが新たに構えたお店。昨年2月に移転してから最近はすっかりカレー屋のイメージが定着しましたが、落ち着いた雰囲気で酒が飲めるメキシカンバーの面影も残しています。
洞窟のような雰囲気にワクワク。
ゲッコ(GECKO)は英語でヤモリのこと。縁起の良い生き物としても知られる。
マスターのナオさんがカレーを提供し始めたのは昨年秋。カカオやナッツ、スパイスでつくるメキシコのソースから着想を得たモーレネグロカレーや、麻婆豆腐の要素をサンプリングした中華スパイスカレーなど、食べたことのない味だけど、記憶の底からなにかが掘り起こされるようなオリジナルな味とその美味しさの評判が、またたく間に口コミで広がっていきます。
昼間っからテキーラの誘惑がハンパない。
「世の中にあふれる様々なカレーのレシピを俯瞰で見ると、通底するセオリーが見えてきます。そのセオリーに自身の経験やアイデアを盛り込んで作っています」
そうナオさんも語るように、スタンダードがあるからこそ自由な発想ができる。型があるからこその型やぶり。カレーの奥深さってこういうところにあるんだと、納得させられてしまいました。
カレーのメニューは4種類。シーフードココナッツカレーは定番で、それ以外の3種類を週替わりで提供しています。ランチタイムだけでなく、営業中であればいつでも食べられるのもポイント。
シーフードココナッツカレー
シーフードココナッツカレー ドリンク付き1,100円。
今回、注文したのはこちら。ココナッツミルクベースのカレーに、アサリ、ホタテ、エビなどの具材がたっぷのシーフードココナッツカレー。サンプリング元はクラムチャウダーと言うように、スパイスに負けないくらい魚介のいい香りが漂っています。
乾燥ハーブのカスリメティ(甘い香りとほろ苦い風味が特徴のフェネグリークの葉)とココナッツソルトを散らして、さらに香りをプラス。アチャール的な玉ねぎの副菜と、ゆでたまごを添えて一皿の完成となります。
いくら形容しようとしても「今までに食べたことのない味」という表現がしっくりくる。辛さは控えめでマイルド。
カレーの概念が広がる一皿。
スパイスがピリッと舌先を刺激して、ハーブの心地よい風味が鼻に抜けていく。かと思えば、魚介の旨味が口の中に広がり、ココナッツのコクが余韻として残る。咀嚼するごとに色んな味が現れるので、ひと口ごとにクセになっていく。そんな印象のカレーでした。
ちなみにライスは食味と香りのバランスをとるために、長粒米と日本の米をナオさん独自の配合で炊いているそうです。これがまた旨いんだ!
サーモンのバター炒めもトッピング。味に別角度からのコクが生まれるのはもちろん、親しみやすい食材でカレーとの距離も一気に縮まる。
ラベンダービネガー、ガーリック醤油、ココナッツソルトなどの卓上調味料を使って、味変も楽しめる。
セットドリンクのハイビスカスティーは爽やかな酸味とフルーティーな甘みが特徴。食後をすっきりさせてくれる。フーゴ・デ・ハマイカといって、メキシコではわりとメジャーな飲み物なんだそう。
魚介とハーブ(スパイス)の滋味深さがクセになる『ゲッコ洞』のシーフードココナッツカレー。
カレーの概念が広がる一皿と出会えて、ちょっぴり感動です。
次来たときは、昼から一杯やるつもり。
ゲッコ洞
石川県金沢市茨木町24-5
営業時間/火〜木曜 11:00〜15:00、18:00〜21:00 金曜 11:00〜15:00、18:00〜24:00 土曜 11:00〜24:00 日曜 11:00〜19:00
定休日/月曜日
席数/カウンター6席、テーブル8席
駐車場/近隣にコインパーキングあり
※こちらの情報は取材時点のものです。
(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)