ウイスキーとスパイスカレーの幸せな関係|煩悩を断ぜずして咖喱を得るなり #23
カレーに合うお酒といえばビールに赤ワイン、最近はジントニックとのペアリングを奨めるお店も増えました。そして意外と好相性なのがウイスキー。とくにハイボールは香りとコクを兼ね備えた爽快感で、スパイシーな味わいを引き立ててくれます。よく考えるとウイスキーはカレーの隠し味にも使われるし、本場インドはウイスキー消費量世界一としても有名。好相性なのは必然なのかもしれません。
今回はそんなウイスキーとスパイスカレーのペアリングを愉しんできました。
本とウイスキーをテーマにしたカフェバー
訪れたのは近江町市場のほど近く、金沢市袋町にある『袋町 Owls Hoot』。本とウイスキーをコンセプトにしたカフェバーです。店名のアウルズフートは”ふくろうの鳴き声”という意味。ふくろうといえば幸運を呼ぶ鳥で、袋町の地名にちなんだ「ふくろう通り」の入り口に位置することから名付けられたのだとか。
ウイスキープロフェッショナルの資格を持つ店主の中塚さんは、ウイスキーの歴史や背景、製法、飲み方などに精通する人物。その一方で「カフェのような敷居の低さでウイスキーを愉しむきっかけになれば」と、ウイスキー初心者に対する配慮も欠かしません。酒好きでもウイスキーには疎い筆者。オーセンティックバーに挑戦する前のチュートリアルはここでお願いしたいと思います。
お店ではスコッチ(スコットランドで製造されるウイスキー)のシングルモルトを中心に、ジャパニーズウイスキーなどを各種取り揃え。好みを伝えればおすすめの銘柄や飲み方を教えてくれるそうです。
ランチタイムに始めたキーマカレーが一躍人気となり、今やカレーの店として認識している人もいるほど。隠し味にウイスキーを加えたコク深い味わいで、なかには蕎麦でいう「だいぬき」のような感覚で米抜きキーマを頼む人もいるのだとか。もちろんウイスキーのアテとして。
中塚さんがおすすめするのは、キーマカレーと週替わりスパイスカレーをあいがけにした「2種盛りカレープレート」。しかしながら本日はキーマカレーが品切れということで、週替わりの創作スパイスカレーを注文してみることにします。
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スパイスカレーに合うウイスキーって?
牛スジのスパイスカレー 1,000円
毎週メインの食材を変え、それに合わせてスパイスを調合して作るという週替わりスパイスカレー。今週のカレーのベースとなるのは飴色になるまでじっくり炒めた玉ネギ。コリアンダー、クミン、ターメリックなどの基礎的なスパイスのほかに、スタータースパイスとしてクローブとマスタードシードを使用します。しっかりとテンパリングされたスパイスは香り高く、仕上げに散らされたカスリメティも爽快。ウイスキーと同じく、カレーも香りが大事なのです。
牛スジの濃厚な旨味がスパイスとの相乗効果でより旨く感じる、いわゆる米が欲しくなる味。いや、酒でもいいか。カスリメティが効いているとはいえ、かなりのハードパンチャーです。
ここで副菜の出番。
右からニンジンとクランベリーのラペ、春キャベツとカリフラワーのサブジ、マッシュポテト、紫大根のアチャール、ナスのアチャール。これらの副菜が持つ、酸味、辛味、甘味などの様々な味わいが味蕾をリセットして、またカレーを口に運びたくなる。すなわち無限ループの完成。
このカレーに合うのはどんなウイスキーなのか。さっそく中塚さんにお願いしてみると…。
「こっくりした味わいのカレーには、清涼感のある喉越しの良いタイプのハイボールが定石。ですが、あえてピートの効いたどっしり飲み応えのあるウイスキーを提案したいと思います。普段の僕ならハイボールにはしない銘柄ですが、カレーと合わせることでこのウイスキーならではのコクが相乗効果となってカレーの美味さが増します」
そういって中塚さんが差し出したのは、ラガヴーリン16年のハイボール。たしかにいつも飲んでいるハイボールとは違ったコク深い味わい。さすがのセレクトです。
日本で本格的なウイスキー作りが始まってから今年で100年。そんな節目の年に、最高のペアリングを享受できるなんて。ふくろう様、ありがとうございました。
袋町 Owls Hoot(アウルズフート)
石川県金沢市袋町4-25 ムサシサンビル1F
TEL/076-254-6238
営業時間/12:00〜23:00(L.O.)
定休日/日曜日(不定休あり)
席数/カウンター6席、テーブル4席
駐車場/近隣にコインパーキングあり
撮影:林賢一郎