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元海上自衛隊シェフが腕を振るう海軍カレー|煩悩を断ぜずして咖喱を得るなり #22

カレーといえば金曜日。

 

もともとは海上自衛隊でルーティン化されていた「毎週金曜日にカレーを食べる」という風習が一般家庭にも普及したそうですが、根っからのカレー好きにとって嬉しきことこの上なし。なんてったって毎週カレーを食べる権利が与えられているわけですからね。

 

ちなみによく言われる「長い航海で狂った曜日感覚を取り戻すため」という説ですが、どうやらこれは謝った情報だそう。海上自衛隊で毎週金曜日にカレーを食べるようになったのは週休2日制が導入されて以降で、それまではとくに曜日関係なく食べられていたそうです。

 

ところでみなさんは、ここ石川県に元海上自衛隊のシェフが作る「海軍カレー」が食べられる店があるのはご存知でしたでしょうか。

旬の魚料理と日本酒の品揃えが自慢

 

やってきたのは金沢市彦三町の裏路地にひっそりと佇む『釣亭伝助』。およそ外見からはカレーを提供するようなお店には思えませんが、そのギャップがまたカレー好きの冒険心をくすぐります。

 

お店の看板となるのは、店主自らが市場で厳選した旬の魚料理。地元の旬菜をふんだんに使った料理は、食通をも唸らせる味と評判です。

 

 

経営するのは奥能登出身の濱﨑興樹さん。高校卒業後に海上自衛隊に入隊し、配属された横須賀基地で5年にわたり艦艇のシェフとして腕をふるってきました。海上自衛隊を退職後は、県内外の日本料理店や割烹で研鑽を積む日々。そして、2020年に『釣亭伝助』をオープンします。

 

自衛隊OBから贈られたという部隊識別帽がズラリと並ぶ。

 

「自衛隊に入隊した当初はそれほど料理に興味はなかったのですが、広島から赴任してきたシェフに料理の楽しさを教わったことで、いつか自分の店を持ちたいと思うようになったんです。海外への航海で様々な国の食材を扱う中で、日本の食材の素晴らしさも再認識しました」と濱﨑さん。

 

艦艇や部隊で作られる食事は「艦めし」と呼ばれるなど、自衛隊の中でも料理が特に美味しいと言われている海上自衛隊。濱﨑さんが作る海軍カレーは一体どんな味なのか、期待が膨らみます。

 

地元の銘酒「谷泉」を中心に、唎酒師でもある店主が全国各地の日本酒をセレクト。入手困難な希少酒も多く、マニア垂涎の品揃えとなっている。

 

 

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海軍カレー、ヨーソロー!

海軍カレー 1,600円

 

こちらが釣亭伝助式「海軍カレー」。カレーに加えて、小鉢2つ、揚げ物、サラダ、温泉たまご、らっきょうがセットになっています。実際に艦艇で食べられている物と同じく、銀プレートに盛られているのでリアリティがありますね。

 

本日の小鉢は、能登沖で水揚げされたメジマグロの刺身、そしてホタルイカとウルイの酢味噌和え。カレーの副菜としては豪華すぎる内容からも、濱﨑さんの素材に対するこだわりを感じます。

 

 

揚げ物はサワラのフライ。これがまた外はカリッと、中はふっくらと、感動すら覚える美味しさでした。

 

 

どろっとしたとろみが特徴的な海軍カレーですが、これがまた濃厚でクセになる味わい。基本的なレシピは海上自衛官時代に習ったものを継承しつつ、使用する素材は地産地消を心がけているそうです。ちなみにどろっとしているのは、揺れる艦内でルーがこぼれないように、あえてとろみを付けているからなのだとか。

 

具材となる肉は、全体的な旨味のバランスを考えて、能登産の牛と豚を7対3の割合で使用。濱﨑さんが所属していた海上自衛隊では素揚げしたジャガイモを具材にしていたそうですが、カレーの味がぼやけないようにジャガイモは入れず、よりシンプルに仕上げています。

 

 

一日かけて仕込んだルウを、さらに一晩寝かせてようやく完成。野菜と肉でとったブイヨンの旨味、じっくり炒めた玉ねぎのコク、そして数十種類をブレンドしたスパイスの風味が、三位一体となって口の中に広がります。絶妙な硬さに炊き上げたお米との相性も抜群で、あっというまに完食してしまいました。

 

「やっぱり肝になるのはスパイス。炒めすぎると苦味が出るし、しっかり炒めないと香りが出ない。スパイスに火を入れているときが一番気を遣いますね」と濱﨑さん。

 

そんな海軍カレーですが、プレートランチは事前の予約制。夜は〆のカレーとして(カレーのみの飲食は不可)いつでも食べられるそうです!

 

 

釣亭伝助(つりていでんすけ)
住所/石川県金沢市彦三町2-1-10真和ビルB103
電話/076-256-1092
営業時間/11:30〜14:00(L.O.14:30)、18:00〜22:30(L.O.22:00)
定休日/水曜日
座席数/カウンター6席、テーブル10席
駐車場/近隣にコインパーキングあり
※こちらの情報は取材時点のものです。

 

 

(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)

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