新進気鋭のアーティストが描く、不思議なコラージュの世界。
雑誌の切り抜きや写真などを貼り合わせて、ひとつの作品を完成させる「コラージュ」。
古くはパブロ・ピカソに始まり、ラウル・ハウスマンやアンリ・マティスなど、さまざまな芸術家が虜となったこの表現方法は、現代アートの1ジャンルとしてその地位を確立しています。
日本では岡上淑子さんや、最近「情熱大陸」でも特集された河村康輔さんが有名ですよね。
パブロ・ピカソが制作した「籐椅子のある静物」。世界初のコラージュ作品とも言われている。(c) Musée Picasso
そんなコラージュですが、じつは今、白山麓の「とりごえ蕎麦 相滝」で開かれてる作品展が、ちょっとした話題になっているんです。
「相滝」の店主さんといえば、金沢21世紀美術館で展覧会を開くほどの蒐集家。物の美を見極める能力に長けている方だけあって、これは期待できそうです。
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作品展「RETURN FROM EARTH 〜宇宙を体験すると、前と同じ人間ではあり得ない〜」
「RETURN FROM EARTH 〜宇宙を体験すると、前と同じ人間ではあり得ない〜」は、水引作家の井波佳奈さんと、コラージュアーティストのMikiさんのコラボによる企画展。
コスモス(宇宙)をテーマにした8つの作品が、まるで太陽系のように秩序だって並べられています。
こちらは七尾市を拠点に活動するコラージュアーティストのMikiさん。海外留学中にポップアートの魅力に惹かれて創作活動を開始。趣味であるスケートボードやDJなどのサブカルチャーと伝統工芸を組み合わせたコラージュを制作し続けています。
今回、Mikiさん本人が作品について説明してくれたので、その模様をお伝えしていきます。
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宇宙を体験すると、前と同じ人間ではあり得ない
SUN
「Destruction&Regeneration」#音の可視化
Mikiさん
DJにとってターンテーブルやコントローラーは、音を創り出すために無くてはならない存在です。元ある音を破壊して、新たな音をつなぎ再生させ、フロアに響かせる。そんなところが宇宙空間における莫大な時間軸で行われている恒星や惑星の「破壊と再生」と同じであると感じています。
惑星H・惑星Iの地表サンプル
Mikiさん
我々が暮らす地球とは気圧、気候、天候もまったく違う、惑星の地表をイメージした作品です。僕が実際に使っていたスケートボードに、井波さんの水引を飾りつけています。
「I see Earth It’s so beautiful.」#space debris #宇宙ゴミ
Mikiさん
宇宙空間に漂っているゴミくずをレコードで表現しました。宇宙ゴミはかつで人類が宇宙に飛び立ったときに必要だった部品や破片が残されたもの。レコードも同様に、かつては音を楽しむための媒体でしたが、時代の流れとともに音楽の聴き方は変わり、近年はゴミ同然として扱われることもあります。見方を変えればゴミも宝物になるのではないでしょうか。
だれにでも分かりやすく、自分の想いを伝えたい。
ここからはMikiさんのインタビュー!自身のアートへの想いや、制作エピソードなどを語っていただきました。
よろしくお願いします。さっそくですが、なぜコラージュアーティストを目指そうと思ったんですか?
Mikiさん
じつは僕、本業は旅行代理店に勤める会社員なんです。
えっ、そうだったんですか。
Mikiさん
はい。それがコロナ禍の影響でお客さんが激減してしまって。僕自身も家で過ごす時間が増えたときに、なんとなく本棚にあった海外の雑誌を切り抜いて、スケッチブックに貼り付けてみたら、これが面白くて。
ふむふむ。
Mikiさん
コロナ禍で仕事に行けないし、友達とも遊べない。そんなモヤモヤした気持ちを発散できたというか。もともとアートに触れるのが好きだったのもあって、すぐにハマりました。
と、言いますと?
Mikiさん
海外留学中にニューヨークやキューバでウォールアートを見てまわったり、旅行会社に就職してからも在外支店を点々としながら、現地の美術館や博物館でアートに触れるのがライフワークになっていたんです。
そうだったんですね。子どもの頃から美術が得意だったんですか?
Mikiさん
そんなこともないんですけど、バルーンアートを仕事にする母の影響もあって、小さい頃からアートと触れ合う機会はありました。立体的な構図や配色のバランスなんかは、手伝っているときに自然と学んだものだと思います。
コラージュを世に出すようになったのはいつ頃からですか?
Mikiさん
最初からです。Instagramに創作の過程を投稿してみたら、ニューヨークで暮らしていたときに仲良くなった「パーク・デリ(※)」のオーナーがリプライしてくれて。それによって色んな人に見てもらえたのが大きいかもしれません。
※ ニューヨークのブルックリンにある、フラワー、ドライグッズ、スケートをコンセプトにしたセレクトショップ。感度の高いニューヨーカーから熱い支持を受けている。
Mikiさんの処女作となる「だから、どうした?」。じゃあ、もう一枚いきますよ。というメッセージに、今後の創作活動への意気込みが伝わる。
コラージュはどうやって作るんですか?
Mikiさん
はじめに全体的なテーマや作品を通して伝えたいことを思い浮かべて、制作する過程でストーリーを構築していくことが多いですね。自分の作品が世に出たときにそれが社会的な意味合いを持つには、しっかりとしたストーリーやメッセージが必要だと思うので。
たしかに時代的にも分かりやすさが求められている気がします。
Mikiさん
それからストックしてある雑誌や写真集の切り抜きを選んで、それを土台となる用紙に貼り付けていきます。このセレクトする作業が、結構時間かかるんですよ。
なにを切り取るかによって印象がガラッと変わりそうですね。
Mikiさん
そうですね。いろいろな環境下に置かれた自分の感情、疑問、ストレス、喜びなどが創作の動機となるので、そのときのイメージと合致するものが見つからないと、創作が進まないもどかしさがあります。
なるほど〜。
Mikiさん
それと、僕がコラージュを制作する上で大切にしていることが3つあって。ひとつは「近くから見ても遠くから見ても成立する作品であること」、もうひとつは「アートに興味のない人をはじめ、だれが見ても理解できる分かりやすい作品であること」、そして最後は「補色を組み合わせた色遣いでデザインすること」なんです。
Mikiさんのコラージュって、個性的だけど目に飛び込んできたものそのままというか。キャプションでしっかり説明しているので分かりやすいですよね。
Mikiさん
ありがとうございます。僕はアンディ・ウォーホルの「それまで一点物の高級品だったアートを、大量生産することで庶民の手に届きやすくする」といった姿勢がとても好きで。なるべく分かりやすく、だれもが身近に感じるポップアートを作りたいと思っているんです。
本日はありがとうございました。最後にMikiさんのこれからの抱負を聞かせてください。
Mikiさん
今回、井波さんとのコラボで、伝統工芸の素晴らしさや美しさを改めて感じることができました。これからはストリートカルチャーと石川の伝統文化を融合させたアートにも、どんどん挑戦していきたいです!
「RETURN FROM EARTH 〜宇宙を体験すると、前と同じ人間ではあり得ない〜」の展示は、9月30日(金)まで。コラージュアーティストのMikiさんと、水引作家の井波佳奈さんが表現する「不思議なコラージュの世界」を、ぜひご堪能ください。
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(取材・文/BONNO編集部、撮影/林 賢一郎)
Mikiさん
太陽はすべての生きモノにとって偉大な存在ですが、そんな太陽もひとつとは限りません。私にとっての太陽とは、無限のエネルギーでもあり「周りの人や物すべてである」というのがテーマ。今展示のメインとなる作品です。