品数ランチ⑯|加賀市上野町「ひるよる食堂 オオハタ。」のYummy和定食
品数8品以上を縛りにした、よくばりランチを紹介する〈いしかわ品数ランチ〉。
今回は加賀市上野町にある『ひるよる食堂 オオハタ。』のYummy和定食を紹介します。
力強い手書き看板が目印
「こだわりがないことがこだわり」の現代版食堂
山代温泉から車で5分ほど。観光の中心街からは少し離れますが地元からは絶大な人気がある『ひるよる食堂 オオハタ。』。今年の7月で丸10年を迎えました。
店内は白い塗り壁と木のインテリアが印象的で、昼間はカフェのような温かみのある雰囲気。しかし、夜になると柔らかい明かりが灯る大人の空間へと一変します。
広い空間にカウンターとテーブル席を備える他、入り口から左側にも小さなスペースが。こぢんまりと落ち着きたい時や、友人同士でわいわいと食事を楽しみたい時などシーンに合わせて席を選択できるのも嬉しいポイントです。
加賀市のデザイン会社「創創点」が手がけた内装。店の所々に個性的な演出があるのもこの店らしさ
中でも目に留まるシャンデリアは、フォークやスプーン、ターナーなどがぶら下がっており、ライトの光を反射してキラリ
壁に古道具が飾られ、棚には細かな雑貨類。いい意味で雑多な感じが子ども心をくすぐられ、食事が運ばれてくるまでのワクワク感を誘います。オープン時に内装を手掛けた方のアイデアを採用したものや奥様の趣味のものなどが中心だとか。
飾り棚には岡本太郎作品のフィギュアから地元「丸八製茶場」のお茶缶まで
店を営むのは大畑光さん・宏美さんご夫妻。光さんは加賀の飲食複合施設「かぼちゃ村」に長年勤め、宏美さんはゴルフ場のレストランやビュッフェスタイルのカフェなどで調理を担当してきた、根っからの料理人夫婦です。
「巷では健康志向とか地産地消とかいろいろ言われるんですが、僕ら実はそういうこだわりが一切ないんですよ」と話すのは光さん。
自分たちのいいと思うものをいいと思う方法で提供するという一本筋はあるものの、なるべく範囲を狭めない、こだわりを持たない、ということが逆にこだわりだといいます。
看板にもちらりと“Yummy”の文字
店名に“ひるよる食堂”と銘打っているのもそのためです。
光さんの強いイタリアン志向や、宏美さんが持つ食へのトレンドの意識、和洋中入り混じった惣菜などの幅広い料理経験に、オープン当初高まっていたスペインバルの流行…。
全てを取り入れ、それを自分たちらしく表現するために最適だった言葉が「食堂」だったといいます。
食感と味のバランスが考えられた小皿いっぱい定食
Yummy和定食 1,200円
『オオハタ。』のランチは4種類。
パスタランチに、イベリコ豚を使ったトンテキランチ、厚切りのローストビーフが豪快に食べられるローストビーフランチ、そして今回ご紹介する「Yummy和定食」です。
オープン当初からあるメニューで、料理の構成から調理まで基本的に全て宏美さんが担当。
開業前には、こういった小鉢がたくさん入ったランチを出すことを想定して、京都の小皿ランチを食べに行きアイデアを膨らませていたといいます。
その甲斐あって、10年経った今でもお昼の一番人気。老若男女から愛されているメニューです。
それでは、さっそく品数を数えてみましょう。
本日の品数は、11品でした!
この日のメニューを詳しくご説明。
- ローストポーク ハニーマスタードソース
- 青菜ときのこのおひたし
- レンコンの明太マヨソース
- 人参と昆布の炊いたん
- 厚揚げとチンゲン菜のしょうがあん
- ゴボウとさつまあげの金平
- 長イモのみそチーズ焼き
- たまご焼き
- お野菜の天ぷら
- 雑穀ごはん
- なめことほうれん草の味噌汁
という内容でした。
盆にのった9品の小鉢は月に2回内容が変わります。
定番のもの以外は総入れ替えをするのですが、それは味や食感のバランスを崩さないため。シャキシャキにふわふわ、とろとろなど様々な舌触りが楽しめ、家庭で和食をつくる時にありがちな似たり寄ったりの味ではなく全て別の味わいになるように考えられていて、最後まで全く飽きずに食べ終えることができます。
宏美さんが「珍しく夫が作ってくれたんですよ」と笑うのは、この日のメインとも言えそうな大振りのローストポーク。しっとりとしていてほぐれが良く、程よく脂が残っています。酸味のあるハニーマスタードソースとの相性もばっちりでした。
この日のお盆の中でアクセントとなっていたのが、中央に鎮座する「厚揚げとチンゲン菜のしょうがあん」。かかっている餡には生姜の風味がしっかりと効いています。なんとなくその軽快な刺激が、他の料理やご飯の間にワンクッション入れたくなる効果があるような気がしました。
また、深めの小鉢で中身が見えないのも楽しく、中から大きい厚揚げが出てきたときはちょっとお得な気分に。餡の固さも絶妙で、最後まで水っぽくならないのが嬉しかったです。
和食屋さんの和定食にはあまり出てこないであろうチーズを使った「長イモのみそチーズ焼き」。ある意味この店らしさを表している一皿かもしれません。ほっくりとした嚙み応えでチーズとの相性も良いですが、味噌が入っているため他のメニューとのバランスもとれている一品でした。
自由な発想でバランスのとれた美味しい一食を提供する「オオハタ。」流の和定食。
料理の味はもちろん、小鉢の器も9皿全て違うものが使われていて、見た目も華やかです。
そう言うと、「ランチの後の洗い物が大変なんよ」とちょっぴり毒づく光さんの横でアハハと宏美さんが笑います。二人の掛け合いが心地よく、そのパワーがこの10年を作ってきたのだろうな、と感じました。
今でも年に一度くらい“うどんないんけ?”と言いながら入店する人もいると言いますが、10年経って少しずつ定着し始めた「オオハタ。」の現代版食堂。
これからも加賀の愛され食堂として幅広いファンが通うのだろうなと思います。
以上、遊び心に溢れていながらも、細かく考えられた9品小鉢が魅力の『ひるよる食堂 オオハタ。』のランチのご紹介でした。
ひるよる食堂 オオハタ。
石川県加賀市上野町カ121-1
TEL. 0761-76-3799
営業時間/11:30~13:30(L.O.)、18:00~20:30(L.O.)
定休日/水曜 ※その他不定休あり
席数/30席
駐車場/7台
※こちらの情報は取材時点のものです。
(取材・文/西川李央、撮影/林 賢一郎)